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それぞれの過去〜馨&和成編〜【2】

    馨はどこにいようと、誰が見ていようとまったく気にしない性質で衆人環視の中であろうと手を繋ごうとしてきたり、抱きついたりしてくるので、羞恥心が人一倍強く、人目を気にする和成は、学校などの公の場では素直になれず、馨から逃げ回り、若草学園に来てからは、父親が働いている保健室に身を隠した。  その分、二人きりの時は幾分か、馨にべたべたされるのも受け入れるつもりではいた。  が、いざ、実際に同じ寮室でルームメイトになり同棲するということになってみれば、これから二人で同じ部屋で過ごして暮らしていくんだと実感が沸いてきて、途端になぜだか気恥ずかしくなったのだ。  馨は特に気にしてる風も変化もなく、意識しまくっているのは和成の方だった。  和成は自分ではまだ気付いては居ないが、かなり馨にべた惚れ状態なのだ。  二人きりで居間で過ごしている間も、馨がノートパソコンでネットサーフィンをしているうつむき加減のその表情やタイピングしている指先の動きをチラチラと見やったりして落ち着かなかった。  服装には無頓着の和成は、全く興味の無いファッション雑誌を読むフリをしながら、ずっと馨の身振り手振り全てに神経を集中させて、一方的に意識しまくっていた。  保健室で馨に絡まれた時の初夜を迎える覚悟を云々等の台詞を思い出して、だんだんと顔が熱くなるのを感じた。  同棲し始めた初日の夜だから、やっぱりそういうのを馨は期待しているのだろうか?と考えると余計に恥ずかしくなってしまう。  そんな、葛藤があって今、成り行きに任せてこんな状況になっているのだが、最後の一線を越えるまでの覚悟は和成にはまだなくて、受け入れるつもりでいた気持ちは急激にしぼんでしまった。  男同士でアレをするという行為自体はどうやるのかは中学時代に、馨から聞いて一応知ってはいた。  男女間でもたまにするらしいけれど、やっぱり本来は出すところに入れるという行為が、一体どんなものかと思って、未知の体験をするという、恐怖感いうのもある。  やっぱり慣れないうちは痛いのだろうか?とか苦しくなるのかとか考え出すと不安で怖くてなかなか踏ん切りがつかない。  こんなんじゃ馨にそのうち愛想つかされて、嫌われるんじゃ無いかと思うし、臆病な自分が嫌になるけど、どうしようもない。  そんなことを考えてしまい肩を震わせて、泣き出した和成をあやすように、馨は彼のさらさらとしていて、柔らかくて癖のある銀髪を梳くように撫でる。 「はは、ごめん、和成君があんまり可愛いからちょっと暴走しちゃったみたいだね」  本格的に泣き出した和成を見て調子に乗って、やりすぎたと反省した馨は苦笑しながら、そう言って、身を離そうとした。  が、和成は慌ててその手を掴んで引き止めた。    いきなり後ろに入れられるのも怖いから嫌だけど、こんな中途半端に煽られたまま放置されるのも嫌だ。  結局は別々にでもトイレに篭るなり、カーテンに隠れるなりして自慰をして抜いて、欲をどうにかしなければならないのである。 「ああ! 僕の事なら気にしないで大丈夫。和成君に見られながらオナニーして抜くとかでも十分イけるから」  引き取められた馨は何を勘違いしたのかそう言い出した。  違う! あんまり羞恥心がないお前はそれでいいかもしれないが、中途半端に煽られたままで、ほったらかしにされた俺はどうなるんだ……!  和成は心の中でそう叫びつつ、背後にいる馨を振り返り、涙目のままで見遣ると首を緩く振った。 「こんな状態にされてほったらかされるのも嫌だ……」  和成はやっとの思いでそう言うと、馨は納得したような顔をして微笑を浮かべながら頷いた。 「そっか、そっか! 気が付かなくてごめんねーー! じゃあさ、さっきみたいなスマタで挿入は無しで続きやってもいいかい?」  馨が幾分か嬉しそうにそう言うのを見て、和成は涙ぐんだままで、頬を紅に染めて、恥ずかしそうにコクリと頷いた。 「あーー、もう、やっぱりいちいち反応が可愛過ぎるなぁ、和成きゅんは!」  そう言って和成を背後からぎゅーーっと抱きしめて、彼の柔らかくていい匂いのする髪に顔を埋めて首筋にキスを落とす。  そのまま、徐々に唇と舌を這わせたまま、上へと滑らせて行き、和成の桜色の薄い唇に口付けた。 「ん……和成くん、ちょっと口開けて?」  くっつけた唇をちょっとだけ離して、顔を近付けたまま至近距離で囁くように、馨にそうお願いされて、和成はそっと閉ざしていた唇を開いて、舌を出した。  キスは中学生の時に人気のない場所で、取り付かれたように毎日していた時期があって、それ程嫌ではなくなった。  最初は男同士だとか、舌を絡めあったり、お互いの唾液を啜り合うという事に少なからず抵抗があった。  けれど、少しずつ慣れて、今では大分平気で受け入れられるようになり、余裕が出来て、馨の舌にたまに答えたりする事も出来るようになってきた。     薄く開いた唇から馨の舌が侵入してきて、和成の口内の至る所を確かめるように舐めて、掻き回して、器用に動き回る。  互いに唇を吸い合い、唾液を啜り合う水音が部屋中に響いて、冷めはじめていた熱がまた徐々に煽られてゆく。  ひとしきり舌先を絡め合った後で、馨は和成のぎこちなさが残るながらも、健気に差し出された舌を、歯でなぞるように甘噛みして、唇に挟んでちゅうちゅうと音を立てながら、吸い上げる。  差し出した舌をきつくを吸い上げられて、感じてしまった和成の体から力が抜けていく。 「んん……ふぁ、んはぁ……」  キスの合間に甘さを含んだ吐息が漏れて、飲み下しきれなかった唾液が溢れて口端を伝う。 「んん……」  存分に口付けをして満足したのか馨の唇と舌先が離れていく。  二人の唇が離れる時に唾液が名残惜し気に糸を引いて橋を作る。 「はぁ……和成君、シャツ脱がせてもいい?」  馨が押し上げられてぐしゃぐしゃになった黒シャツの裾を伸ばしながらそう聞いてきた。 「あ……自分で、脱げる……」  和成は馨に元どうりに伸ばして貰い、太股が隠れるくらいの長さに戻った黒シャツのボタンに手をかけて一つ一つ外していく。  ボタンを全て外し終えると袖も引き抜いた。  ゆるゆると脱いだ黒シャツが床へとハラリと舞い落ちる。  生まれたままの姿になった和成は、縋る物がなくて心細いのか、涙目で顔を真っ赤に染めて、居心地悪そうにもじもじと足を動かしたり、手を胸に置いたりしていた。  そんな恥じらう和成の姿に馨は不覚にも鼻血が出そうになった。  ただでさえ、普段大人しくて、クールで無愛想な彼が自分だけに、こんな姿を見せてくれる、というだけでも、かなりそそられるものがあるのだ。  所謂、ギャップ萌えというやつだ。  普段の和成からは想像もつかない、その可愛さに、馨はこの子が僕の恋人になってくれて本当によかった!と、今更ながら幸せを噛み締めていた。      感激の余り馨が背後から勢い良く和成に抱きついたせいで、さっきのキスで脱力していた和成はそのまま前倒しになり、慌てて膝を付いた。  予期せずに尻だけ高く掲げた状態で、よつんばいになる格好になった和成の上に覆いかぶさるように馨も倒れこんできた。 「うっ! ごめん。和成君大丈夫?」  馨が心配げに和成に覆いかぶさったままの状態で彼の首筋に顔を埋めたままで聞いて来た。  和成は自分が予期せず取らされている恥ずかしい格好に、半泣き状態で耳まで顔を真っ赤にして、床に落ちていた自分の黒シャツをぎゅっと握り締めて、羞恥に耐えていた。 「やっ! いいから、はやく退け……」  和成は一刻も早くこの恥ずかしすぎる状態から、開放されたくてもぞもぞと体を動かした。  逃れようと無意識にしたそれが事態をより悪化させてしまう。  和成の丁度尻の狭間に馨の屹立した陰茎があたっていたせいで、ぐりぐりと刺激されたそれが質量を増して大きく固くなっていく。  自身の足の間にある性器を押し上げるように、当たっている馨の肉棒の感触に、感じてしまったのか和成の先端から先走りが溢れて床にぱたぱたと落ちて小さな水溜りを作っていた。  濡れた先端から次々とあふれ出る雫が床を濡らしていくその様を見て、馨は我慢が出来なくなり、和成の閉じられた足の間に自身の肉棒を差し込んで、つい腰を動かしてしまう。  恥ずかしい格好でより感度が鋭くなった和成は、ぶるぶるとそれに反応して無意識に甘さを含んだ声で喘ぐ。 「ひあ……んん、ふあっ、ああんっ!」 「和成君、ごめん、我慢できない、このままやらせて?」  馨がゆるゆると腰を動かして和成のびしょ濡れの性器を擦りながら彼の耳元で囁いた。 「はあ、はあ……う、んん。ごめん、和成君、我慢して?」 「ふあぁっ! らめえぇっ!」  こんな、まるで発情期の獣みたいな体制でいるだけでも恥ずかしいのに、このままの状態で馨がイクまで耐えなければならないなど羞恥心が人一倍強い、和成にとってはかなり厳しいことなのだ。 「ひ、ああっ! ああん、かおるぅっ!」  自分の足の間を突き上げている馨の名前を健気に呼びながら羞恥に耐えている和成に馨はたまらなくなって、つい腰の動きを早めてしまう。 「んんっ! ああっ! ふああっ!」 「はあ……和成君。ごめん、結局無理強い、しちゃって、本当に、ごめん!」  謝りながら腰を動かす馨に和成は、恥ずかしさを堪えて頷いた。 「あ……もう、馨が、これで、気持よく、なれるなら、んんっ! 我慢する……」  和成が顔を真っ赤に染めて、涙を零しながらも、そう言うのを見て、馨は愛おしさでたまらなくなり彼を抱きしめながら腰の動きを、さらに早めていった。

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