滴るほどに溢れ出た、ぬめりを帯びた蜜がぐちゅぐちゅ卑猥な水音を立て部屋中にやけに大きく響いているように聞こえて、和成の羞恥を煽り続けて余計に感度が鋭くなっていく。 「はあ……和成君、もっと足閉じて？」 「んんっ！　あ……う、んっ！」 　足をもっと閉じて締め付けをきつくするように言われて和成は頷いて、感じすぎて、全身の力が抜けてきて無意識に、開いていた足をまた閉じる。 　馨の陰茎を足の間に挟んで、ぎゅっと締め付ける。 　再び閉じられた足の間をずるずると馨の熱く滾りきった肉の塊が行き来する。 　十分すぎるくらいにぬめりを帯びた閉じた太股の感触が擬似的に挿入しているような感覚を呼び起こし、心地が良かった。 　突き上げるたびに、感じすぎてつい足の間から力が抜けて開き気味になる足を何回も慌てて閉じて馨が気持ちよくなれるように、頑張って健気に答えようとしてくれる彼が何よりも愛おしくてたまらなくなる。 　和成を背後から抱きしめながら、首筋に顔を埋めて、腰を揺らす馨の動きに合わせて、ゆるゆると彼の腰も無意識に動いていた。 「はあ……んんっ！　あぁんっ！　かおるぅ！」 「ん……はあ、はあ、すっごい気持ちいいよ、和成君」 「は、あ……んんっ……うん……よかっ、た……」 　和成が、涙でぐしゃぐしゃのまま笑みを浮かべて、そう言うのを聞いて馨は、不覚にも目頭が熱くなるのを感じた。 　普段、傍から見ていて、大人しくて、無愛想で、物静かな彼が、自分のためにここまでしてくれているという事実だけで、もう胸がいっぱいで、どうしようもないくらいの多幸感に満たされる。 「あふ、はあ……んっ……ふぁ、んんっ！」 　恥ずかしいのを堪えて、自分にだけこんな無防備な姿を曝してくれる恋人に煽られて、馨の性感も高められて、徐々に限界が近くなってきた。 　　　 　このままスマタだけで終わらせるのもいいが、実際に受け入れるときの痛みや違和感がないように、後ろへと挿入される感覚や行為にも少しずつでも、慣れていけるようにと考えて馨は右手を和成の尻の狭間へと滑らせて後孔に触れた。 　白い双丘の狭間で息づいている窄まりに右手の指の腹で押すようにして擦ると和成の体がビクリと跳ねた。 「や……そこ、さわっちゃ……んんっ！」 　固く閉じて窄まった蕾の皺を伸ばすように、中指と親指で押し開いて、ちらりと覗いた桜色の粘膜を、人差し指の腹で撫でるようにしてその部分にそっと触れる。 「ひっ！　あ……やだ、やだ、ダメぇ！」 「ごめん、指入れるだけだから、もうちょっと我慢してくれる？」 　後孔に初めて他人に触れられた和成は、首を弱々しく振って、真っ赤になった頬を涙で濡らして、羞恥に歯を食いしばる。 　自分でも見たこともないような場所に触れられて、先端から蜜が噴き出して床にぱたぱたとこぼれ落ちた。 　恥ずかしい行為を強要されればされるほどに、性感が高まっていく。 「痛く無いように少しづつ拡張していったほうがいいと思うんだけど……」 　馨がそう言いながら和成の足の間に滴る大量の粘液を掬い取って、窄まりに塗りつけて湿らせる。 　大量の蜜を塗りつけられてぬめったピンクの窄まりにそっと人差し指を差し込んでいく。 「ひああっ！　やあ、ゆび、いれちゃぁ……」 　差し込まれた指を受け入れた熱い粘膜がぎゅっと指を締め付ける感触を確かめるように、ぐるりと中で動かすと、和成の腰が大げさに跳ねた。 「やああぁっ！　ゆび……ごかしちゃ、あ、めえぇっ！」 　初めて異物を受け入れた違和感と圧迫感で苦しくて、そして何よりも自分でもよく知らないような恥部に指を突っ込まれるという行為自体が恥ずかし過ぎて気が変になりそうだった。 　根本まで秘所に差し入れた人差し指をゆっくりと出し入れする動きに合わせて馨が和成の足の間に突き入れた肉棒をずるずると行き来させる。 　ナカに入れた指を動かしながら、和成の前立腺を探り当てて中指の腹で押すようにして擦り上げる。 「きゃ、ああっ！」 　前立腺に初めて触れられた和成は女の子の悲鳴の様な声を上げながら、先端から蜜を噴き出してガクガクと足が震え、ビクリと大きく腰が跳ね上がった。 　　 　内側からくる初めての感覚に和成は身悶えて、無意識にその刺激から逃れようと抵抗し始める。 「うっ……あぁうっ！　ひいあぁっ！」 　手足をばたつかせて、逃れようともがき始めた和成を見て、馨は差し入れていた指を、慌てて引き抜いた。 「ごめん、もしかして、痛かった？」 　馨に心配げな顔でそう聞かれて和成は、首を弱々しく左右に振った。 　痛みはなく、多少の異物感と違和感があっただけだ。 　体内にあるしこりを刺激されると内側から熱に犯されるような得体の知れない妙な感覚がして怖かった。 「ふぇうぅっ……ぅっ、く……」 　黒シャツを握り締めて、本格的に泣き始めた和成を見て、馨は今更ながら、罪悪感に胸を締め付けられた。 　なんだかんだで最後はいつも自分の我が儘を受け入れてくれる、和成の優しさについ甘えてしまい、いつも調子に乗りすぎて、悪乗りしすぎてから、やりすぎた事を後悔する。 　馨は自分自身の学習能力の無さ加減に呆れ、ため息をついた。 　学習能力がないという台詞は、龍之介が真澄によく言われていることだが、自分も学習能力が著しく低いのかもしれないと思って改めて反省する。 「和成君、ごめん、辛いんだったら、もう、しないから……」 　馨がため息を吐いてからそう言うのを聞いて和成は、彼に嫌われてしまったんじゃないかと途端に不安になる。 　いつも逃げてばかりいる情け無い自分に愛想を付かして呆れ果てて、いい加減、見放されてしまったのだろうか？ 　和成はそんなことを考えてしまい、余計に悲しくて、辛くなった。 　陰気で暗くて、人の輪の中に自分から入っていく勇気もない自分は馨とは釣り合っていないような気がしてくる。 　馨は誰とでもすぐに仲良くなれるし、明るい性格で誰からも好かれるのに、なんで自分なんかを好きになったのかまったく解らない。 　一目惚れしたというのは表面的な容姿だけの事で馨は自分じゃなくてもいいのかもしれない。 　いつもそんな風にネガティブな事ばかりをつい考えてしまう。 　馨と付き合い出してしばらくして、気が付けばいつも馨の事を目で追いかけて、意識しているのは自分の方だった。 　なんでもない相手なら何をしていようが誰といようが得に気にならないはずなのに…… 　和成はそこまで考えて、涙でぐしゃぐしゃになった顔を握り締めたままのすっかり皺だらけの黒シャツで拭った。 　　　 　自分でも気が付かないうちに馨の存在は和成の胸の中でだんだんと膨らんで大きくなってゆき、無意識に彼のことを目で追いかけて、自分が彼にどんな風に思われているのか、彼の目にはどんな風に映り、見えているのか気になるようになっていった。 　馨と付き合い出す前は自分が他人から見てどういう風に見えているかなど考えた事はなく、何に対しても無関心だった。 　片思いをしていた少女にも自分から話し掛けた事もないまま、気付けば彼女はいつの間にか遠い所に引っ越してしまっていた。 　彼女に対して自分から何かをしようとは思わなかった。 　ただ、遠くから眺めていられるだけでもよかった。 　けれど、彼女が引っ越して和成の前から姿を消し、それすらも突然の別れにより叶わなくなり、会えなくなる事があるのだという当たり前の事に気づくのが遅すぎた。 　そんな自分の浅はかさ加減に落ち込んだりもした。 　そんな事もあって室内に引きこもりがちな和成の手を引いて外へと強引に連れ出したのは成り行きとはいえ当時から付き合っていた馨だった。 　最初の内は煩わしいと思っていたはずなのに、いつの間にか彼が自分の傍へと来てくれるのを心待ちにしている自分に気がついた。 　彼が声を掛けてくれるのを待ちわびるようになった自分に最初は戸惑っていた。 　馨の事が気になりだしても自分から彼に声を掛けることはほとんどなく常に受け身でいた。 　彼が自分を好いてくれて傍らで笑っていてくれるということが当たり前のようになっていた。 　人前にいる時は恥ずかしくてべたべたとまとわり付いてくる馨をわざとぞんざいに扱ったり逃げ回ったりしていた。 　馨の事を意識しだしてから周りの人間に自分達の関係がどんな風に見えているのかがだんだんと気になるようになっていった。 　まさか自分がこんな風に誰かのことで頭をいっぱいにする日が来るなんて夢にも思ってはいなかった。 　考えていたよりもずっと馨に依存しているのは自分の方だった。 　馨の事がいつのまにかこんなにも好きになっていたのだとこんな状態になってからやっと気がついた和成は熱に犯され真っ赤になった顔を両手で覆い隠すようにして瞼を伏せる。 　（俺は馨の事が……）　　　 　そんな風に考えてから余計に恥ずかしくなって顔が上げられない。 　馨の顔を恥ずかしくてまともに見られない。 　嫌われたくないのに、返事すら満足にできやしない。 　そんな和成を見て馨は心配そうな顔をしていた。 「あー……なんていうか、本当、毎回、和成君の優しさに付け込むような真似してごめんっ！」 　馨は反省して弱りきった表情で自分の額の前に両手を合わせて和成に謝っていた。 　和成は馨がそう言って謝るのを聞いて伏せていた顔を上げて首を緩く左右に振った。