35 / 152
それぞれの過去〜馨&和成編〜【8】
君は迷惑がるかもしれないけれど、僕は君の事が好きだから、愛しいから、傍らにいさせて欲しいんだ。
いつの間にか大粒の雪が降り始めていた。
平べったくて反り返ったその雪の粒はまるで天使の羽のようにひらひらと舞い降りてくる。
二人のこれからを祝福するかのように。
□
まだ初々しかったあの頃を不意に思い出した。
いままで和成と付き合ってきていろいろあったけれど、彼の事を知れば知るほどに好きになっていく自分に気がついていた。
その想いはまるで雪のようにどんどん降り積もり際限がないように思えた。
想いは言葉にして伝えなければ、相手には伝わらないと彼女に教えられた。
馨はその自分の想いを和成に好きだと何回も何百回も言葉にして彼に伝えてきた。
けれど、和成に好きだと言ってもらえたことは未だなかった。
彼は、正直、自分の事をどう思っているのだろう?
目の前で涙を拭いて首を緩く振る和成を見て胸が痛んだ。
彼の気持ちを考えずに無理強いしてしまったことを後悔して馨の表情はいつもの笑顔ではなく悲しげだった。
和成は自分の気持ちを言葉にして伝えることが極端に苦手で、自分が言ったことで相手に嫌われるんじゃないかという不安をいつも抱いていた。
「和成君、本当にごめん、もうしないから……」
馨が悲しげな表情のままでそう言って和成から再度、離れようとした。
和成は自分から、離れていく馨を見て、愛想つかされて、嫌われたんだと思って震えながら、既にぐしゃぐしゃのシャツを握り締めた。
拭ったばかりなのに涙が溢れ出して視界が歪んでいく。
自分はいらないものだから、結局、最後はこうなるんだと思うと、寂しくて、悲しい。
馨の事が好きだと自覚してすぐに捨てられるなんて、本当に自分は馬鹿だと思った。
馨は心配そうに和成を見て、震える彼を落ち着かせるように彼の頭を幼子にするように撫でていた。
銀色の柔らかな癖のある猫っ毛を梳く手つきは優しかった。
和成は涙で滲んでよく見えない彼を見上げる。
悲しげな顔をしている馨を見ると辛い。
自分がそんな顔をさせているのだと思うと余計に。
和成は何かを言おうとして、でもどうやって自分の気持ちを言葉にしたらいいのか解らなくて、開きかけた口を閉ざす。
こんなんじゃ、愛想尽かされて捨てられても何もいえやしない。
自分が悪いのだから仕方ないと諦めるのは簡単だ。
馨に出会うまではずっと一人でいたから、孤独には慣れていたはずだ。
けど今は馨が側にいるのが当たり前過ぎて、彼に依存しきっているのは自分の方だ。
たった今、彼に捨てられたら、もう立ち直れないかもしれない。
馨にいつもしてもらうばかりでいつのまにかそれが当たり前になっていて、それに甘えていたのは自分の方だ。
「す……す……」
好きとたった二言の言葉が口にしようとすると、喉がしまって出来なくて声がでない。
馨に嫌われたくないのにうまく言葉にして伝えられないもどかしさで余計に辛くなってくる。
和成が伝えようとしている言葉が何かは馨にはちゃんと伝わっている。
すきと言おうとしているけれど不器用でなかなかその二言が言えない和成が余計に愛しい。
なかなか上手く口に出来ない和成の”好き”はきっと自分の好きの100倍の想いがこもっているに違いない。
馨はそんな和成を見て柔らかい笑みを浮かべる。
「す……」
なんとかして馨に自分の気持ちを伝えようと必死になっている和成を馨は自分の胸へと引き寄せて無言でぎゅっと抱きしめた。
馨の鼓動がトクントクンと微かに和成の耳に伝わる。
馨の腕の中はあたたかくて、安心する。
和成は馨の腕の中で目を閉じて気を落ち着かせる。
いまなら言えそうな気がする……
そう思って顔を上げて馨の澄んだ青い瞳を見つめる。
空色の瞳の中に自分の姿が映っているのが見えるほどに顔を近づけて、すきという言葉を馨の口の中にそっと吹き込んだ。
『す、き……』
和成が馨にそっと触れるだけのキスをして唇と舌を動かした。
好きの動きをする、ほんのすこし冷たい唇の感触に馨は目を見開いていた。
和成の方からキスをしてくるとは予想だにしていなかった。
和成からしてもらった始めての口付けに、胸の内からこみ上げてくるものがあった。
和成にとっては自分からキスをするという行為がとても勇気のいることだったに違いない。
すきという言葉が和成の唇から直接伝わってくる。
和成のことを好きなのは自分ばかりで、両想いではないと思っていた。
自分に惚れさせてみせると意気込んではみたものの、和成にどう思われているかがよく解らないままで、独りよがりのままで彼に迷惑をかけているんじゃないかという不安も多少あった。
けれど、それも、和成からのキスひとつですっかりなくなった。
彼は、好きでもない相手とキスをするような子じゃないからだ。
和成からのキス一つで、幸せすぎてもう死んでもいいとさえ思う。
それほどに和成のことが好きだということだ。
馨は和成のキスに応えて薄く開いた彼の口の中へと舌を差し入れた。
和成の頬に手を宛てて深く口付ける。
「ふぁ……んん……」
馨の舌を受け入れて、懸命に応えようとぎこちなく絡め返してくる舌から震えが伝わってきた。
こうしてキスをして相手に応えようとするだけでも和成にとってはとても勇気がいることだったに違いない。
それでもいつも頑張って応えようとしてくれる。
こうやってキスをすること、抱きしめること手を繋ぐこと。
それを馨にだけ許してくれる。
和成にとってはそれが精一杯の好きという気持ちの表れだったに違いない。
そんな簡単な事に今の今まで気がつけなかった自分はどうしようもない馬鹿だと馨は思い苦笑した。
唇を吸い合って、舌を絡め合い、互いの唾液を交換しあうような激しい口付けにも和成は懸命に応えようとしてくれる。
和成は馨の口から流し込まれた唾液を健気に飲み下して、絡みついてくる舌に自らの舌を絡め返す。
「あ……ん、んん」
長く激しい口付けをし終えて満足した馨が唇を離すと、絡めあっていた互いの舌先に唾液が糸を引いた。
「はぁ……はぁ……」
酸素を取り込もうと和成が息を荒げ、白い胸を上下させて、真っ赤な顔をしていた。
長いキスで敏感な咥内を掻き回されて、快楽に蕩けて、とろんと半開きの目で馨を見上げる。
その表情に煽られてまた彼を抱きたい衝動に駆られそうになるがぐっと堪えた。
無理強いはしないって誓ったばかりじゃないかと心の中で自身を戒める。
「…………」
そんな馨の気持ちが解っているのかいないのか和成は甘えるように馨の胸へと顔を埋めて耳を宛てて彼の心音を聞いて静かに息を吐く。
和成の熱い吐息が胸にかかり、どうにも自身を抑え切れるかどうか不安になってくる。
「か、和成君……」
和成は名を呼ばれて顔をあげると馨の腕の中で密着した状態のまま彼を見返した。
「続き……」
和成が掠れた声で小さくそう呟いて、馨を見上げる。
彼が何を言おうとしているか察した馨はゴクリと咥内に溜まった唾を嚥下した。
「さっきの、続き……しても、いいの?」
馨にそう聞き返されて、和成は真っ赤な顔で恥ずかしそうにコクリと静かに頷いた。
馨に自分の気持ちを伝えられた事でやっと少しだけ、胸のつかえが取れて、和成は彼がしたい事を受け入れられるだけの心の余裕が出来た。
恥ずかしいのは変わらないけれど、さっきよりかは恐怖感も薄れたような気がした。
恥ずかしげに頷いた和成を見て、欲情を抑えきれなくなった馨がそのまま和成の腰を両手で掴んで抱え上げる。
「ひゃっ……!」
いきなり抱えあげられて、目を白黒させて真っ赤な顔で驚いている和成を床に下ろすと、またよつんばいにさせて、さっきと同じ体勢にさせた。
「さっきの続きからだから、この体勢じゃないと!」
興奮気味にそう言って和成の白くて形の良い尻のすべすべとした感触を確かめるように両手で掴んで撫で上げた。
双丘を両手で掴んで左右に押し開き、濃いピンク色をした粘膜を外気に曝す。
押し開かれた蕾が、恥ずかしげにきゅっとすぼまって、ひくひくと息づいている。
「ひ、ああっ! ううっ!」
馨に秘所を視姦される羞恥に、和成は顔を真っ赤にして目じりに涙を浮かべながら、全身を小刻みに震わせた。
馨のしたいようにさせてあげようと必死に恥ずかしさに耐える。
足の間に滴る大量の蜜を掬い取って和成の蕾の皺を伸ばすように指先で揉みこんで塗りつけていく。
「はぁはぁ……和成君のお尻の穴すごい綺麗な色してる」
馨が興奮気味に荒く息を吐きながら、恥ずかしげもなくそう言うのを聞いて、和成は羞恥に耳まで赤くなる。
「ううっ! 馨のそういうとこ、嫌いだ……」
馨は羞恥心が薄いのか平気で隠語を口にしたりするので、和成は彼のそういう明け透けにものを言うところが苦手だった。
「いや、ごめん、でもほんとに綺麗な濃いピンク色して……」
「だ……から、そういうこと、言うな、馬鹿ぁっ!」
和成に震える声でそう注意されて馨は、頷いて「あはは、ごめん、もう絶対言わないから」と言って再度笑いながら謝った。
「んんっ、は……馨は、本当に、変態だ……」
「うひひ、変態という名の紳士ですから」
馨は相変わらず、ふざけた物言いをしてへらへらと笑う。
その間も愛撫の手は止めずに和成の秘所を指の腹で押すようにして、摩りながら、掬い取った蜜を擦り付ける。
「和成君、そろそろ指、入れるよ?」
「は……ううっ! だ、から、いちいち、そ……ぃう、こと、聞くな、あうっ!」
和成が快感に震える掠れた声でそう言って大量の蜜を性器の先端から噴出した。
和成は人一倍羞恥心が強く、恥ずかしい言葉や格好にされるといつも以上に感度が鋭敏になり感じやすくなる。
羞恥に震えながらも、感じてしまい、大量の蜜を溢れさせる和成のやらしい姿を見て、無意識に喉がなった。
和成君は相変わらずエロ可愛すぎる!
馨はそう思いながら、口の中に溜まった唾をゴクリと飲み下す。
指の腹で擦られ続け、腫れぼったくなり、柔らかくなってきた頃合を見計らって、ひくついている蕾に人差し指をぐっと根元までゆっくりと差し入れた。
ともだちにシェアしよう!