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それぞれの過去〜龍之介×虎次郎編〜【3】
龍之介にキスをしても拒絶されなかったことに、ほっとして虎次郎は深く息を吐き出した。
壁に背を預けて、もたれかかった状態で立っている龍之介の胸にぴたりと耳をくっつけて彼の心音を聞く。
どくどくと早鐘を打つように脈打つ心音を聞いて安堵した。
ドキドキしているのは自分だけだと思っていたがそうではないらしい。
なにも意識していない相手とならばきっと抱き合っても心音が大きくなり高まることも、息を荒げることもないだろう。
龍之介は自分の腕の中に身を預けて、体を密着させてくる虎次郎の体温に胸が高鳴り、なぜか興奮していた。
あちらこちらに跳ねたひよこの産毛のように柔らかな金髪からふわりと果実系のシャンプーの甘い香りが漂っていた。
ほのかに香る甘い匂いは多分、桃かなにかの成分が含まれるシャンプーを使っているのだろう。
辛党で甘いものが苦手な龍之介だが、桃や苺の甘い香り自体はそれほど嫌いじゃない。
龍之介はよくわからない昂ぶりの赴くままに虎次郎を抱き返して彼の背中をごそごそとまさぐった。
「りゅ、りゅーちゃん」
虎次郎のほんのすこし戸惑いを含んだ上ずった掠れた声を聞いて、心臓が跳ねた。
(やっぱり、虎次郎もこういうときはこんな声を出すんだな……)
甘さを含んだ上ずった声をもっと聞きたくなって、背中に回している手で服をめくりあげて中に手を差し入れて直接、虎次郎の肌に触れてみた。
すべすべとしてさわり心地のいい背中を差し入れた手の平で確かめるように撫でた。
虎次郎は戸惑いつつも龍之介にされるがままになっており身を預けたままでいた。
龍之介の手の平に直接撫でられている部分が熱くなったような感じがして、さらに頬を赤らめた。
真澄がきてからというもの、ずっと龍之介にこうやって触れてもらう機会がほとんどなかった。
触れてもらえなかった一年間の寂しさを埋めるように体と心が龍之介を求めているのがわかる。
龍之介に肩に腕を回されて並んで歩いたり、頭を少し乱暴にぐしゃぐしゃと髪をかき回すように撫でられるのが好きだった。
なにか辛いことや怖いことや悲しいことがあって泣いているといつも無言で抱き寄せて背中を撫でてくれた。
その時の龍之介の手の平から伝わる熱。
すごくあたたかくて安心したのを憶えている。
真冬でもいつも温かな彼の手の平の熱が今、自分の素肌に直接触れている。
寒くて、辛くて、寂しかった気持ちを吸い取ってくれるようなその手の平から伝わる熱が凍えていた心まで溶かしてくれたような気がした。
うっとりと瞼を閉じて、頬を薄紅色に染めて、浅く息を吐いて、身を預けてくる虎次郎の様子に興奮して、龍之介は自分の下肢に熱が集まり、ズボンの前がだんだんと張り詰めてきつくなっていくのを感じた。
付き合いの長い幼なじみがこんな風に頬を赤らめて悩ましげな表情をするところなど初めて見たような気がする。
真澄相手にはいつもされる側だが龍之介も男である以上、抱く側にだって興味があるのだ。
というよりも女の子相手にいつかはこういうこともするだろうと思っていた。
それが今はなぜか同性の幼なじみである虎次郎相手にしている不思議。
なんだか変な感じだった。
でも、虎次郎にキスされても抱き付かれても、嫌悪感がまったくないどころか、今の自分は興奮している。
それは事実だから、否定しようがないのである。
龍之介の良くも悪くも自分の気持ちに嘘のつけない性格はこんな時にはあまりよくない方向へと突っ走り暴走してしまう事が多い。
かわいいものはかわいいし、かっこいいものはかっこいいのだ。
龍之介の思考はシンプルでとてもわかりやすい。
したいという気持ちの赴くままに、虎次郎の素肌をまさぐり、上着を捲り上げて上半身を露にして、剥き出しにした白い胸を見る。
虎次郎の薄い胸板にある小さな桜色の突起が外気に急に晒されて芯を持ち固く尖り始めている。
「あっ…りゅーちゃん……」
恥ずかしそうに服の袖で半分隠れている両手を口元にあてて、龍之介を見上げる虎次郎の可愛らしい仕草に胸が高鳴った。
固くなり芯を持ち始めたまだ柔らかさの残る両方の乳首を人差し指と親指できゅっと摘んで、いつも真澄にされている時のことを思い出しながら、くりくりと押し潰すように捏ね回すと甘さを含んだ声が零れた。
「ふぁ、ん、ぅっ…は、ぅ…りゅーちゃぁ……」
涙目になって胸に与えられる刺激に耐えるような虎次郎のかわいらしい喘ぎ声を聞いて、龍之介は咥内に溢れる唾をゴクリと飲み下した。
自分が与える愛撫に感じて甘い声をあげる相手を見て、すごく興奮する。
ある意味男であればそういう気持ちになるのが自然だろうと龍之介は自分が相手を感じさせている側だという事実にある意味酔いしれて、
「俺って超男らしいじゃん!」
と思いながら熱くなっていた。
相手も男であるということはこの際どうでもいいと良くも悪くも前向きすぎる考えで、虎次郎の上半身をくまなくまさぐり、どこが感じやすいのか探る行為に没頭していった。
首筋や肩や鎖骨を撫でられ、胸板の形を確かめるように、女の子相手にするときのように熱を持つ手の平に覆われて、回すように揉まれたり、耳元にかかる龍之介の吐息にも虎次郎は敏感に反応を返す。
好きな人に触れられる場所全てが悦びに打ち震えているのを感じる。
「んん、は、ぁ…ふ…う」
「コジロー、大丈夫か?」
虎次郎は耳元で龍之介にそう囁かれて、恥ずかしさと快感を耐えるためにぎゅっと閉じていた瞼を開く。
龍之介に愛撫されて感じすぎて腰から力が抜けて足元がふらついていた。
脱力した体を預け、しなだれかかってくる虎次郎の腰に手を宛てて、龍之介はかがむと彼の両足の膝裏にも手を差し入れてそっと抱き上げた。
いきなり抱えあげられたかと思ったら、姫抱きにされて落っこちてしまわないかぐらぐらする上半身を支えようと龍之介の首に慌ててしがみ付いた。
「ちょい、場所移動しようか。 とりあえずすぐ目の前にあるソファーまで運んでやるからそのまま、じっとしてろよ!」
龍之介にそういわれて虎次郎は頷いて、瞼をきつくぎゅっと閉じた。
龍之介よりかは小柄とはいえそうたいして彼と体重が変わらない虎次郎を抱えあげたせいか、すぐ傍にあるソファーに運ぶのですら、少しだけ足元がふらついた。
毎日筋力トレーニングのためにダンベルを使って鍛えたり、腕立て伏せを欠かさずに続けてきた龍之介だったが、真澄と再会してからは受験勉強に集中するために修行をいっさい禁止されていたせいか大分衰えているのを感じた。
小柄な虎次郎を少し抱き上げるだけでふらつく自分の足に気合をいれて、すぐ近くのソファーまで彼を運び、そっと横たわらせる。
ソファーへと仰向けに寝かされた虎次郎は不安からか口元に手を宛てて、もう片方の手で、服の裾を掴んでいた。
閉じていた瞼をそっと開いて自分に覆いかぶさってくる龍之介を涙で潤んだ目で見上げる。
目元が赤くなり頬を薄紅色に染めて、見上げてくる虎次郎を安心させるように金の髪を梳いて撫でてやる。
縛られている後ろ髪の草色のリボンを解いて、手櫛で梳いてやると柔らかい髪がソファーにさらさらと散らばり広がった。
髪を解いている虎次郎をあまりよく見たことがなかったせいかいやに新鮮な気持ちになってまた胸が高鳴ってドキドキした。
髪を下ろすと元々女顔である虎次郎が余計に少女のように見える。
龍之介は興奮に荒くなる呼吸を抑えきれずに虎次郎のズボンのホックに手をかけた。
「コジロー。下の服も脱がせてもいいか?」
そう聞かれて虎次郎は恥ずかしそうに小さくコクリと頷いた。
それを確認してから、龍之介は虎次郎のベルトはしていないブルーのハーフパンツのホックを外して右足から抜いて脱がせると左足に引っかかっているそれを膝したくらいまで引き摺り下ろした。
横たわる相手の服を完全に脱がせるのが面倒なのでそのまま半脱ぎ状態で断念した。
ズボンを下ろすと白いブリーフがむき出しになり、男物の下着を着けているという事実を目の当たりにして、やっぱり、女の子みたいに見えても男なんだと再確認して少しだけ興奮が冷めた。
ブリーフに手をかけて片足だけ脱がせると足に引っ掛けたままにして下半身を露出された虎次郎を見た。
透明な雫を伝わせてそそり立つそれは自分のものとそうかわりない大きさで先端が淡い桜色をしているのも同じだった。
しかしそれ以上に幼く見えた虎次郎はぜったいにまだ剥けていないと思っていた龍之介は少し驚いたような顔をした。
虎次郎は龍之介がそんな顔をする理由がわからずに不安げな目で彼を見上げていた。
「コジローはぜったいまだ剥けてないと思ってたのに…!」
龍之介は自分の方がたぶん虎次郎より大人に近い体をしていると少しだけ優越感に浸っていたのにそうじゃなかったとわかって少しだけ男としてのプライドが傷ついた。
下半身を露出させられるのだけでも恥ずかしいのに、と虎次郎は顔を真っ赤にして涙目になっていた。
龍之介の思っていることをすぐに口に出してしまう性格は、こういう時は特に羞恥心が強い相手を無意識に煽ってしまうようだ。
「でも、俺のちんこのがほんの少しだけでかいかもっ…!」
虎次郎の性器を物珍しげに見ながらそう得意げに言う龍之介に悪気はまったくない。
こういう時にさえムードもへったくれもない物言いをするのが龍之介らしいと虎次郎はほんの少しだけ笑みを浮かべた。
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