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それぞれの過去〜龍之介×虎次郎編〜【4】

 虎次郎の裸を見るのは小学校の時に修学旅行で、一緒に露天風呂に入った時以来だが、こうしてじっくりと彼の裸体を鑑賞する日が来るとは思っていなかった。 「虎次郎、なあ、これ、触ってもいいか?」  龍之介は一応、虎次郎に聞いてからそれに触れようとした。 「…んっ……うん」  涙ぐんで恥らいながらも虎次郎が頷いたのを確認してから、それの先端をなぞるように人差し指で押すようにして触れてみる。  先走りの液を掬い取るように、人差し指で先端の割れ目をなぞり、付着した先走りの液を指先に遊ばせる。  しばらく指先でつつくように触れて、相手の反応を伺い、虎次郎が陰部に触れられるのに慣れてきた頃合を見計らって、手の平全体でやんわりと握り込んだ。  揉むようにして感触を確かめてみると弾力があり、完全に固く張り詰めて隆起して、手の平の中で脈打っているのがわかる。 「んん、はう、りゅーちゃん……」 「コジローのちんこ、えっちな汁たらして、すごいビクビク脈打ってるぞ!」  龍之介が恥ずかしげもなく虎次郎の性器に触れてみた感想を口にする。 「りゅーちゃぁ…あう……はずか…ぃよ」  涙目で龍之介を見上げて恥ずかしがる虎次郎の可愛さに煽られて、龍之介もだんだんとその気になってきていた。  女の子にしか興味がなかったはずなのに、心臓がドキドキして息が上がってくる。  真澄相手にはこんな気持ちにはならなかった。  龍之介は基本的に小さくてかわいいものが好きなのだ。  小さくてかわいくてそれでいて守ってやりたくなるような、龍之介の正義の味方としての保護欲を満足させてくれるような。  それが当てはまらなくなった真澄は除外されてしまった訳だが、虎次郎は龍之介よりも小柄で、泣き虫で、気になる存在なのだ。 「はぁ…んんっ…りゅーちゃんだけ…服着たままでず…るいよぉ…っ」  虎次郎が恨めしげに自分だけ脱がずに服を着たままでいる龍之介を見た。  自分ばかりが脱がされて恥ずかしい格好をさせられているのがいたたまれなくなって目元に滲む涙を手で拭いながらしゃくりあげる。 「あ、俺も脱いだほうがいいのか!」 「ひっく、んん、うん……」  龍之介は虎次郎に言われて初めて自分はまだ服を着込んだままだということに気がついた。  しゃくりあげながら、虎次郎が頷き、それを見て龍之介はズボンと下着に纏めて手をかけてごそごそと脱ぎ始めた。  どのみちこのままだとパンツの中が湿って気持ち悪くなるだろうし、前が突っ張って苦しかったから丁度いいとばかりに手早く脱いでから再び虎次郎と向き合った。     下着ごとズボンを引き下ろすと同時に勢いよく飛び出してきた龍之介のそれを見て虎次郎が頬を赤く染める。  窮屈な布の中で押さえつけられていた龍之介のそれは固くなり、そそり立って、脈打ち熱い雫を先端から溢れさせている。 「とりあえずズボンとパンツだけ、脱いだけどこれでいいか?!」  龍之介にそう言われてドキドキする胸を押さえるように両手を胸の前に置いて虎次郎は頷いた。  自分が龍之介にとってそういう気持ちを呼び起こすような存在になりうるという証拠のような気がしてほんの少しだけ嬉しく思う。  男同士でこういうことをするのがどういうことなのか、虎次郎ははっきりとは理解できていなかったが、自分の方が受け入れる側として見られているということだけはなんとなくわかっていた。  女の子のように扱われることにもあまり抵抗はなく、龍之介にお姫様だっこされた時も純粋にほんの少しの気恥ずかしさと、それ以上に彼に優しくされて気遣われるのが嬉しかった。  虎次郎がそんなことを考えている間に龍之介は自分が真澄にいつもされていたことを思い出して、この後どうすればいいのかを考えていた。  真澄はいつも龍之介の陰茎を扱いて一回射精させてから、それを後ろに塗り込めて潤滑油がわりにして滑りを良くして解してから挿入していた。  その段階を省いて、いきなり突っ込まれる時は、龍之介が何かしらやらかして真澄を怒らせた時だ。  前戯を省いていきなり挿入された時の耐え難い苦痛を思い出して、そんな思いはぜったいにさせたくないと思い、龍之介は真澄のモノに比べるとあまりにも可愛らしい虎次郎のそれを包む手を上下に動かして、先端をそっと口に含んだ。  先走りの液が溢れているとはいえ、まだ湿り気が不十分だと感じた龍之介は虎次郎の肉茎に口淫を施すことにした。  毎日のように尻の穴ばかりを女の手首ほどもある凶器で掘られていたら、体力がいくつあっても足りないし、直腸の腫れが悪化するばかりだと危機感を感じた龍之介は、どうしても無理な時は口淫をしてその場をしのいでいた。  そのせいで口でするのは既に抵抗はなく慣れていた。  真澄以外の男のペニスを咥えることは初めてだが、彼のものに比べるとあまりに小さいそれは簡単に口の中にすっぽり納まってしまいやりやすかった。       龍之介が口に咥えて、奉仕し始めたのを見て、虎次郎が腰を跳ね上げて、驚愕の色を含む声をあげて上半身を起こそうとした。 「ふゃああぁっ!」  龍之介は虎次郎が驚いているのを見て、咥えていたそれからいったん口を離して、彼の様子を伺い見る。 「コジロー、どうしたんだ?!」  なにがどうしたのかわからないというような顔で、そう言う龍之介を見上げて虎次郎が首を左右に振りたくった。 「ううっ、あうぅ…そんなところに口つけたらだめだよぉ……」  目尻に涙をいっぱいに浮かべながら、そう言う虎次郎を見て、龍之介は不思議そうな顔をして首を傾げる。 「なんでだめなんだ?」 「だって…その、汚いよ……」  虎次郎が消え入りそうな声で、しゃくりあげながらそう言うのを聞いて、龍之介は首を左右に振ってそれを否定した。 「別にそんなこと気にしなくてもいいぞ。だって俺は虎次郎のなら別に汚いとは思わないし」  龍之介にそう言われて、虎次郎は茹蛸のように真っ赤になって破裂しそうな胸を押さえる。 「それってどういう……」 「好きってことだ!」  そう胸を張って、さも当然のように答えた。  龍之介は、虎次郎に向かってVサインをしながら、歯を見せて満面の笑みを浮かべる。  少年らしい屈託のない、無邪気な笑顔が眩しい。 「こういうのは、好きな相手のなら全然平気なもんなんだ」  虎次郎はその台詞を聞いて、感激のあまり、本格的に泣いてしまった。  そんなこと言ってもらえるなんて、思っても見なかった。  どうしようもなく、嬉しくて、好きな気持ちがより膨れ上がっていくのがわかった。  押さえきれないほどに、膨れ上がった自分の気持ちを、伝えようと、虎次郎は上半身を起こして、龍之介に抱きついた。 「ううっ、ひっく、うわあぁんっ! りゅーちゃん、僕も、好き、大好きだよぉ!」  そう叫びながら抱きついてきた、虎次郎に苦笑して、龍之介は彼を落ち着かせようと、彼の背中をぽんと叩いて、空いている方の手で、頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜるように撫でた。      そう好きでもない相手のものでも咥えられるのだから、虎次郎へ口で奉仕することに対する躊躇いも嫌悪感もない。  ましてや虎次郎は自分よりも小さくて可愛らしく、保護欲をそそる存在で、好きな相手だ。  自分の腕の中で泣きじゃくる小さく、愛しいその存在をぎゅっと抱き返して額に口付ける。  幼い頃の真澄にもした行動だが、龍之介のこの行為には自分が守ってあげたい者への誓いの意味も無意識に含んでいた。 「っ、ひっく、りゅーちゃん……」  額にキスされて、背中を摩られて大分、落ち着いてきた虎次郎の頬に空いている方の手を添えて彼の涙を拭ってやる。 「虎次郎は俺のこと汚いって思うか?」  龍之介に彼にしては珍しく真顔でそう言うのを聞いて虎次郎は首を左右に振りたくって否定した。 「そんなこと全然思ってないよ。 うん……りゅーちゃんが言ってくれたことわかった気がする」 「だろ? 虎次郎も俺のこと好きだって言ってくれただろ? 好きってこういうことも全部含めて相手になにかしてやりたいとか、守ってやりたいとかそういう気持ちになるものなんだ」 「うん……」 「けど言葉だけじゃそれが伝えられないときや伝えにくいこともある。 だから行為で示すのも好きってことなんだ。 キスしたり、こうやって抱きしめたり、えっちしたり」  珍しく、饒舌にものを言う龍之介がなんだか大人びて見えて、虎次郎は初めて見る彼の新しい一面に胸がドキドキしてより好きになるのを止められなかった。  考え無しに本能や保護欲だけで動いているように見えて、その行動には龍之介なりの考えがあってのことだったらしい。  龍之介に首筋へと口付けられて、胸の先で自己主張し続けている桜色の粒を指先で弾くようにこね回されて甘い声が零れた。 「あ、んんっ…ふぁ……」 「それに、俺は虎次郎のこと好きじゃなかったらこんなことしないぞっ」 「は、ふぅ……あっ、うんんっ」  龍之介に言われた言葉に喘ぎながら虎次郎は頷いて愛撫に身を任せる。  人差し指でひとしきり乳首を弾いたり、摘んだりして愛撫したあとで、赤く腫れたそれを癒すように口に含んだ。 「ひゃ、んんっ!」  口に含んだそれをいとおしむように舌先で触れて、転がして、ちゅうちゅうと音を立てて吸いたてた。 「ああんっ!  はぁんんっ…りゅーちゃぁ…っ!」  自分の胸に吸い付いている龍之介の頭を抱きこんで、快感に耐え切れずに、媚びる様な甘さを含んだ声がひっきりなしに唇から零れて、恥ずかしさから感度が増してどんどん煽られていく。       無心に虎次郎の乳首を吸いながら、たまに歯で挟んで甘噛みしたり、歯に咥えたまま先端を舌先でちろちろとつつくように舐めて、ひとしきりその行為に没頭して満足してから口を離した。  赤く腫れて、勃起したまま戻らなくなったその桜色の突起と、それを嘗め回していた龍之介の舌の先端に、唾液が糸を引いて橋を作っていた。  唾液で滑り、てらてらと濡れ、艶を帯びたそこをぬるぬると指先で弾いた。 「ひゃ、ん、んっ」 「コジローは右と左どっちの乳首が感じるんだ?」  そう言いながらついさっきまで、口に含んでいたため唾液でぬめった右側の乳首を、親指と人差し指で絞り上げながら聞いた。 「ひあ、あ、あっ、あっ…んんっ!」  自分は左側の乳首の方が感じやすいのだが、虎次郎はどっちだろうとなんとなく気になって聞いてみたのだが、相手の羞恥を煽るだけだということに龍之介は鈍くて気づかない。 「ふぅ…あっ、あ、ふにゅぅ…わからな…ぃ、ょぉ」  虎次郎がゆるゆると首を振りながら、やっとのことで龍之介の疑問に答えてくれた。  摘まれている方の乳首を搾乳する時のように、きゅっきゅと絞られると、体が勝手に震えて、下肢に熱が集まるのを感じる。  乳首ばかり執拗に弄られて、虎次郎の足の間にそそりたつものも、ぴくんぴくんと反応をして大量の蜜を溢れさせていた。  腫れた乳首が熱を持ち、じんじんとした痛みが直接、快感へと繋がっているようだった。  龍之介に執拗に弄られたせいか、虎次郎はすっかり右側の乳首が敏感になり感じやすくなっていた。 「はぁ、あっ、ああん! りゅーちゃんが弄ってる方がじんじんするよぉ!」 「俺が弄ってる、右側の乳首のが感じやすくなっちゃったのか?」  自分が施す愛撫によって、虎次郎の体がそれに合わせて作り変えられてゆく。  自分の与える快楽で相手が開発されて、自分好みの体へとどんどん変化してゆくのが嬉しくて、龍之介は口元が緩むのを抑え切れなかった。  こういうのがまさに男の喜びというやつか!とニヤニヤが表情に滲み出ている。 「ひゃぅっ! やぁっ、あっあっ! 嫌いにならな、ぃで……」  龍之介がニヤニヤと口端を緩ませて、笑みを浮かべているのを見て、虎次郎は自分があんまりだらしない声で喘いで、大げさに反応を返しているのに呆れて、おかしくて笑っているのだと勘違いして龍之介にしがみ付きながら目尻に涙を浮かべてそう懇願した。

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