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若草祭には誰が出る?!【5】

「大体、てめぇは人目を気にしなさすぎなんだよ、たわけが!」 「人目があろうがなかろうが愛しい人に抑えきれない、この胸にはちきれんばかりに溢れた想いを伝えるのが僕の愛です。  赤裸々スケベで何が悪いというのか!  これもそれもあれもすべては和成きゅんへの愛あればこそなのですよ!」 「台詞が無駄になげぇし、うざい!  テメーに巻き込まれて毎回、恥をかかされる俺や和成の身になりやがれっつってんだよ、このデコッパゲ!」  口論をする和彦と馨を見て、おろおろと教壇の上をチョーク片手に行ったり来たりを繰り返していた西野が、教壇から足を踏み外して転げ落ち、顔面からどっと床に倒れこんだ。  翼と礼二が着席している目の前で転び、額と鼻をしたたかに打ちつけて、西野はその痛みで泣いて、涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げる。  なんとか立ち上がろうとしたが、足元がふらついて、和彦と馨が口論している場所にまでよろよろと勢いのままに足が向き。  とっさに眼前にある白衣を掴んで、ひっくり返り転倒してしまう。  和彦の上着を強く掴んだまま派手に転んだせいで彼が中に着込んでいた黒シャツのボタンは弾けとび白衣はビリビリと破れ裂けて引き摺り下ろされ、脱げ落ちて和彦は上半身が剥き出しの状態になってしまった。  いきなりわけもわからないまま、上半身を裸にされて和彦は唖然とした表情で固まっていたが、しばらくしてハッと我に返り羞恥で頬を紅潮させ、わなわなと肩を震わせていた。  目の前で和彦が服を脱がされ半裸になるまでの一部始終を見ていた馨が、鼻を押さえて見たままの素直な感想を口にした。 「ぶっ! 和彦さんの乳首、うっすら桜色! すっごい綺麗なピンク色してる!」  馨が半裸状態の和彦を指差してそう茶化すのを聞いて、和彦は半分涙目になりつつ、慌ててぼろきれと化した白衣を拾い、胸を覆い隠した。  和成の裸を見て、彼のそこが桜色であることは知っていたが、やはり親子なだけあって和彦もまた身体全体の色素が薄くて、肌が白く、体毛もほとんど生えていないに等しいようだった。  G組のクラスにいる生徒全員に半裸状態を見られるという状況に狼狽した挙句、馨にコンプレックスを茶化されて、和彦は本格的に泣き出してしまった。 「うわあぁんっ! 見るな! ばかばかぁっ!」  羞恥と怒りのあまり子供返りしてしまった保健医を見て、G組の生徒達は呆気に取られぽかーんと口を半開きにして固まっていた。  翼もそれを気の毒そうに、見つつ、破れた中着の黒シャツを掴んだままで。床に突っ伏して倒れたままでいる西野に手を貸そうと席を立った。  G組の担任は本当にこの人で大丈夫なのだろうか?と翼は先行きに、ますます不安を感じていた。 「西野先生、大丈夫ですか?」  西野は自身の眼前に差し出された翼の手を取ると再び顔を上げた。 「ううっ! らいじょうぶれひゅ……ひゅいまひぇん……」  二回も額と鼻先を打ちつけたせいか額には大きなたんこぶが出来、鼻先は真っ赤に擦り切れていた。  涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔は情けなくて教師の威厳もなにもあったものではなかった。  その場で、西野のふらつく足がもつれないように腰に手をやり支えて介助してやる。  翼に補助されてなんとか立ち上がった西野を礼二の席の前にある担任用のデスクへと連れて行き椅子を引き出してそこへ座らせる。 「二回も額を打ってますから、安静にしていてください」 「ううっ……美空君……本当にすいません……」  西野はぐしゃぐしゃになった顔を胸元のポケットから取り出したハンカチで拭い鼻を噛んだ。  自分が今日もまたしでかしてしまった事にすっかり意気消沈して落ち込んでいるのが表情に出ている。  (しっかりしようと決意した次の日にこんな大失敗をやらかしてしまうなんて……)  そんなことを考えると情けなくて拭いたばかりの頬がまた滴る大量の涙で濡れた。  和彦にも大変な迷惑をかけてしまった……あとで物凄い怒られるだろうと考えると余計に涙が溢れてとまらなかった。  実際、和彦は迷惑どころか恥までかかされているのだが、今の西野にはそこまで深く考える余裕がなかった。  西野を、座らせて、落ち着かせてから翼は礼二が着席している隣へと戻り、自分の席に腰掛けた。  自分と礼二はどのみち女装コンテストに出場させられることが既に決まっているのだ。  あとのことはもう流れに任せようと翼は考えていた。    和彦が子供返りして本気で泣き出してしまったのをどうにかしようとクラスは相変わらず騒がしく混沌としていた。 「和彦さん! 乳首がピンク色なのを恥じる必要はありません! だって、きれいじゃないですか!」  馨は和彦を慰めようと、さらに追い討ちをかける様な事を真顔で言って彼の羞恥心をさらに煽っていた。  思ったことを素直にそのまま口にしているだけだが、本人に悪気がまったくないだけに性質が悪いとしか言い様がない。 「うわあああぁぁっ! これ以上もうなにもしゃべんな、ばかばかあぁぁっ!」  和彦がその場でうずくまり、胸を白衣だったぼろきれで隠して、首を激しく左右に振って馨がこれ以上なにか言おうとするのを必死で大泣きして止めようとしていた。 「寧ろ胸張っていいと思いますよ、いや、やましい気持ちで言ってるとかじゃないんですけど……」  と言いつつ、馨はやや前かがみになっており、説得力がなかった。      やましい気持ちはないといいつつ馨の脳内はいかがわしい妄想だらけだった。  馨が密かに憧れの対象としてみていた和彦の白い裸体を眼前で見てしまっただけに留まるところを知らずに妄想の内容はどんどんエスカレートしてゆくばかりだ。  あの白い胸板を手の平で包み込んで揉みしだき、固く勃ち上がってきた淡い桜色をした乳首を摘んだり弾いたりして弄り倒して、いやらしく腫れたそこを癒すように舐めまわして、吸いついたり、甘噛みしたりして存分に味わって可愛がりたい。  胸を存分に弄り満足したあとは、和彦を四つんばいにさせて和彦の尻肉の感触を確かめながらわしづかんだままの状態でバックで挿入して激しく貫き肉筒の中を掻き回して欲望のままにガンガン攻め立ててひいひい言わせてやりたい。  普段、口が悪く、ぶっきらぼうな和彦が涙を流して喘ぐ姿を想像するとそれだけでもう馨にとっては十分すぎるくらいにズリネタになるのだが、妄想はそれだけには留まらずに、さっきしていたナース服を着せるという話がうまい具合に混ざり、バックから貫かれて喘いでいる和彦はナース服を着た姿でガーターベルトもしっかりと装備させられたコスプレ姿だった。  和彦は馨にされるがままに揺さぶられ、まるで発情期の雌猫がするような獣の体位でバックから激しく貫かれ、中の媚肉をかき回され、頬を紅潮させて、だらしなく開きっぱなしの口端から唾液が伝い落ちる。  たがが外れたように普段のふてぶてしい和彦の態度やドスの利いた低い声からは想像もつかないような、快楽に濡れた甘い声で喘ぐ。 『ああ、んっ、奥に、奥にあたるぅ……くは、んんっ!』  激しくバックで貫かれながらも、自分でいいところに当たるように調整して突き上げるタイミングにあわせていやらしく腰を振る動きが馨をさらにあおり射精を促した。  肉棒に絡みつき締め付けてくる肉壁の動きにすぐにでも出してしまいそうになるが、それをどうにかしてやり過ごして堪えつつ懸命に和彦の腰つきに負けないように体内に納めた肉茎をぐしゅぐしゅと出入りさせる。 『ひ、ああっ!あぁ…ああぁっ、いくぅ……! いっちゃうぅぅぅっ!』  和彦が先に限界を迎え、射精する動きにあわせて肉筒の中の壁がぎゅっと締まり、精液を搾り取ろうとするかのように蠢いた。  という具合に脳内でめくるめく官能の世界を繰り広げ、妄想に耽っていたが、ふいに本物の和彦の声に現実へと引き戻された。 「……股間押さえながら言うな変態」  和彦は涙を拭いながらそう言うと手を差し出した。     妄想がエスカレートして、完全に固くなり張り詰めた前を無意識に押さえているのに気がついた馨はハッと我に返り、和彦が差し出した手と彼の顔を交互に見た。 「えっ、な、なんですか? 僕のちんこを手コキして抜いてくれるんですか?!」  勘違いした馨がそう言うのを聞いて和彦は大声で叫びそれを否定した。 「誰がするか! 余計なこと言ってる間に上着貸せ!」  馨はそう言われてやっと気付いて差し出された手に自分が脱いだ上着を渡した。  馨に借りた上着をごそごそと着込んで和彦は立ち上がると教壇に上がって元いた場所へと戻り、コホンと咳を一つした。  こうしているうちにも自分をこんな目に合わせた西野に対する怒りが沸々としているのだが、彼を叱責するのは後回しにして、とりあえずこのクラスの意見を纏めて、さっさとG組から退散するべきだと和彦は我に返り、服の袖で涙を拭い、ため息をつくと教卓に手をついた。 「とりあえずだ……馨は出場を辞退するということでいいんだな?」  馨に上着を借りて着込んで、なんとか平静を取り戻した和彦にそう聞かれて馨は頷いた。 「ええまあ、で、かわりに推薦したい人がいるんですけどいいすか!」 「誰だ? もうなんでもいいからはやくしてくれ……」  とにかく一刻も早くこのクラスから退散したい和彦は疲れ切った顔で馨に先を言うように促した。 「僕は、佐藤君を推薦します!」  馨が言い出した意外な一言にクラスがざわざわとどよめいて、まさか自分の名前が挙げられるとは夢にも思っていなかった佐藤が席を立った。 「畝田君、悪い冗談はやめてください」 「いや、冗談じゃなくて本気ですって! 礼二君を推薦して翼君にも頼んで出てもらうことになったけど君自身は何もしないっていうのはどうかと僕は思うので君も人任せにするだけじゃなくて参加すべきだと思います」 「…………」  馨が言うもっともな台詞に佐藤は心の中で舌打ちしていた。  やはりへらへらしているようでこの男はあなどれない。  今もまだ前かがみで情けない姿勢でいる彼だがああ見えて、なかなかの食わせ物だ。  馨はへらへらと笑いつつしてやったりという顔をしていた。 (ふふん、まさか僕がこうくるとは思ってなかっただろうけどどうでるつもりだい佐藤君?)  様子見するにはまず相手の尻尾を掴まなくてはならないと考えた馨は、佐藤にも女装コンテストに参加させるという形で礼二と接触させ、彼がなにかボロを出すことを期待していた。        佐藤が出場者になるということは少なくとも自分達が出なければならないという事態は避けられるという理由で特に反対する生徒もいなかったのだが、鈴木が一人頭を抱えて唸っていた。  二人の母親同士が元々同級生で仲が良く、同じ団地暮らしで家が向かい合わせの隣同士と言うこともあり、夕飯で作ったおかずを交換しあったり、買いすぎた食材を分け合ったりするくらいには仲がいい。  そんな理由で、鈴木と佐藤は幼稚園の頃からの腐れ縁で小、中、高と同じ学校へと通い気心の知れた仲である。  長い付き合いだがいつも近くで彼を見てきた鈴木には、佐藤はいつも礼儀正しくて、大人しく、人前に立つ事があまり得意ではないような印象がある。 「……なら、僕を推薦した畝田君はどうなんですか?」  鈴木の心配をよそに佐藤は眉一つ動かさずに馨にそう切り返した。 「推薦するだけしておいて何もしないのはどうかと思いますけど?」  佐藤に淡々とそう返されて馨はそうきたかと思いつつ、へらへらとした態度は崩さずに前かがみの状態のままそれに答える。 「僕は出場者からは外れるけど、女装はするつもりだよ。 僕の趣味だしね」  女装コンテストに出場しないのに女装だけはするという馨の台詞に佐藤は訳が分からないというような顔をしてため息を着いた。 「はあ……どういう事かもう少し、分かりやすく簡潔に説明して下さいませんか?」  佐藤にそう言われて、馨は頷いて自分がどうするつもりかを説明した。 「多分、司会者枠はまだ決まっていないと思うんだ。 だから僕は一年代表の司会進行役でもやらせてもらおうかな~ともちろん盛り上げるために女装もするし全力を尽くします! 僕ってこういう役大得意だからさ! 和彦さん、司会者枠は誰がするかとか決まってるんですか!」  馨に話を振られて和彦は首を振って、面倒臭そうに答えた。 「まだだ。やりたきゃ好きにしろよ……」  そう疲れ切った声で言いながら司会者枠の項目に新たに追加してチョークで黒板に馨の名前を書き込んだ。  ついでに女装コンテスト出場者枠に推薦された佐藤の名前を追加して前に書いた馨の名前を消しておいた。  一年代表、司会者  畝田 馨  女装コンテスト出場者  牛山 礼二  美空 翼  佐藤 博文  黒板に書き足された名前を確認して馨は満面の笑みを浮かべて佐藤がいる方を振り返ると親指を立てた。 「どう? これで文句ないっしょ!? 大丈夫! 僕メイク担当もするから、そういうの超得意だし任せて!」  佐藤が断れないよう完全に逃げ道をなくして、有無を言わさずにそうするしかないという状況を作ってからへらへらと相手の返答を待つ。  ここで断ればクラス全体の生徒からの印象も悪くなるだろうし断るに断れない状況だ。

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