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見る者見られる者そして繋がり【10】
――けど好きな相手とする行為であればそれは快感を得るためだけではなく、言葉で想いを伝えるだけでは満足できなかった時にもっと深く相手と繋がりたい、愛している愛されているという実感を直接的に得たいと思うがゆえに身体を重ねるのだ。
そういった意味では同じ男同士でする行為だとしても、虎次郎とする行為と真澄とする行為では龍之介にとっての意味が違ってくるものだ。
虎次郎と自分は両想いでお互いに気持ちを確認しあい求め合った末に結ばれたのだ。
この学園へと入学する事になり虎次郎と離れ離れになったのだってそもそもは真澄が勝手に龍之介の母親に取り入って強引に進路を変えさせたせいだ。
入学できそうな学校がなければ、就職してもよかったんだ。
それなら休みの日に虎次郎に会えるし、少なくとも離れ離れになることはなかった。
真澄の思いどうりにいいようにされ続けているのに甘んじていれば、虎次郎に再び会うことはできないかもしれない。
木崎先生と握手しようとした時も真澄に邪魔をされたし、このままではまともな人付き合いすらすることができない。
だから強くなって納得させるしか今のところ真澄の束縛から解放されるための術が思いつかない。
だが、龍之介はそう考えながらも、真澄に押し倒されて、こうして今この場所で、茜色に染まる空を見上げながら快楽を得るためだけの空しい行為を受け入れている。
虎次郎と身体を重ねたときのような胸が締め付けられるようなせつなさも、ときめきもなにも感じない。
ただ快楽を得られるだけ……空しい行為だ。
それで真澄が満足するのなら今はまだそれでもいいかと、龍之介は彼の背に腕を回して瞼を閉じた。
真澄は龍之介の胸をまさぐりながら首筋に舌を這わせ、きつく吸いたてて彼が自分のものであるという印を刻み付けてから唇を離す。
手をついて龍之介の上に覆いかぶさり彼を見下ろしている真澄の表情は能面のように無感情だ。
無感情を装っているだけで真澄の内面は苛立ちや焦り、負の感情が混沌として渦巻いていた。
自分の思い通りにならない相手への苛立ちをぶつけるように真澄は荒々しい手つきで龍之介の下衣へと手を掛けて下着ごと掴んで引き摺り下ろす。
シャツの前もボタンをひとつひとつ外す余裕もなく、力任せにぶちぶちと左右に引き裂いて血色のいい少年らしい裸身を露にする。
乱暴に服を引き裂かれて脱がされ、全裸にされた龍之介は驚いたような顔をして目を白黒させていた。
屋外でしかも誰に見られるかも分からないような場所で全裸にされるのは、さすがに羞恥心が薄い龍之介でも抵抗がある。
「な……真澄……お前、どういう……」
龍之介がそういい終わらないうちに真澄は彼を起き上がらせて自分の足元へと跪かせて、顎を掴んで固定した。
「君はいつも先に根をあげてばかりだから、こっちのほうの修行もしなくてはね」
そう言いながら薄ら笑いを浮かべる真澄の言葉を聞きながら龍之介は恐々と顔色を伺うようにこちらを見上げている。
「大体君は尻に突っ込まれるたびに毎回ひいひい言って泣き叫んで、鼻水と涎をたらしながら抵抗した挙句、いつも先に気をやって失神している癖に、僕より強くなれるだなんて本気で思っているのか?」
真澄に言われた台詞に龍之介が顔を真っ赤にして屈辱と羞恥にわなわなと肩を震わせた。
毎回、真澄に情けない姿を曝して、いいようにされている自分を思い出して眦に涙が滲んだ。
「そ、それは真澄が……!」
「僕が悪いとでも?」
龍之介が反論しようとした言葉を冷たい声色でさえぎりそう言う真澄の目にはちらちらと狂気の炎がちらついている。
龍之介は虎次郎にも翼にも他の誰にも渡さない。
自分以外の誰かのものになるなんて絶対に許さない。
「どうすればいいんだ、なにをどうすれば真澄は満足するんだ? 大体俺じゃなくても真澄ならいくらでも俺なんかよりいい相手が見つけられるだろ! なんで俺なんかにそんなに執着する必要がある? 昔した約束を破ったのは確かに俺が悪かったし、今は反省してる……だからこうやって……」
「僕にされるがままになっているって言うのかい? 僕をはねつける強さがあれば君は抵抗しているんじゃないか? そのために強くなりたいんだろう?」
「……そうだよ! けど、今はまだ腕力じゃてんでかないやしないんだからしょうがないだろ!」
龍之介は自分が思っていることを包み隠さずきかれればたいていのことには正直に答えてしまう。
それが自分を追い込む事になる台詞だとかそういう事は考えずに発言していつも痛い目を見る。
反省はするらしいが、同じ過ちを繰り返してばかりいるところを見ると学習能力は相変わらず皆無といってもいいかもしれない。
「だったら、いいじゃないか。今はまだ、僕に言われた通りにするしかないんだろう?」
真澄に冷たく鋭い声色でそう言われて龍之介は俯いて押し黙る。
「…………」
俯いている龍之介の髪を掴んで上向かせる。
髪を乱暴に掴まれて上向かせられた龍之介は金色の大きな瞳をさらに見開いて真澄を見上げている。
「昨日の今日で下の口にまた突っ込まれるのはさすがにキツイだろう?」
真澄にそう聞かれて、龍之介は目を見開いたままで首を縦に振って恐る恐る頷きそれを肯定した。
確かに昨夜は慣らしもせずに、後孔へと真澄の女の腕程の太さがある、男根を突き入れられたせいで、龍之介のあらぬところは今でもジクジクとした鈍い痛みを訴えている。
「だったら何をどうすればいいのかわかってるだろう? しゃぶれよ。
うまくできたら今日のところはそれだけで許してやる」
真澄にそう言われて、龍之介はしぶしぶながら頷き、彼のズボンのベルトを解きに掛かる。
散々仕込まれてきたからなにをどうすればいいのかは分かっている。
後孔で真澄の女の腕ほどもある凶悪すぎる男根を受け入れさせられるのは、肉体的にも精神的にもかなり疲弊を伴う。
いくらなんでも毎日するにはそうとうにキツイし無理がある。
龍之介がいくら人よりも回復力が高く、タフであったとしても身が持たない。
フェラで済ませられるならそれに越したことはない。
龍之介はそんなことを考えながら、真澄のベルトを抜いて、芝生へと無造作に投げ捨てて、スラックスの留め金を外してチャックを引きずりおろして前を開けた。
下着を少しだけずらして、まだ力なく横たわっている柔らかいそれをずるりと引きずり出した。
まだなんの反応も示していないそれは、それでも常人が勃起したときと大差ないくらいの太さと長さがあった。
全く湿り気を帯びていないそれを濡らすために、咥内に溜め込んだ唾液をたらして先端と幹へと吐きつける。
自身の唾液をたっぷりと塗りつけて、湿らせたそれを両手で捧げ持つように掴んでぐにぐにと強弱をつけて揉む。
舌を伸ばして先端の割れ目に沿って這わせて、亀頭を嘗め回して鈴口を口に含んでちゅぱちゅぱと水音を響かせながらすするように吸いたてる。
その間も両手で掴んだ幹を揉んで、刺激して、根元から先端へと引き絞るようにゆるゆると扱き始める。
「んふ……んぷ…ふぅ、んぐっ、んっ、ふっ…んむぅ……」
口を精一杯開いて先端を飲み込み、先走りの液がほんの少し滲み出した穴に尖らせた舌先を差し込んで、上下に動かしてかき回すように刺激して、舌技を匠に使いながら、口を窄めて強く吸い、先端のみにバキュームフェラを施して懸命に奉仕する。
勃起状態でなくても全てを飲み込むことはほぼ不可能だ。
飲み込みきれない幹の部分は手を使って握りこんで、親指で裏スジを刺激しながらごしゅごしゅと扱きたてる。
「はぁ……んっ……いいよ……さすがに最初のころに比べれば大分うまくなったな」
真澄はそう少しだけ満足げに目を細めていいながら、龍之介の小さな頭の頭蓋骨の形を確かめるように手を置いて掴んで、奔放に跳ねた汗で湿ってほんの少しだけ重くなっている髪をかき乱して撫でた。
単純で根が素直である龍之介は真澄に上手くなったと褒められて、当然のように悪い気はしない。
「んふ…ふぁっ…はぁ、はぁ……」
龍之介の口の中でだんだんと膨張し出して含みきれなくなったそれから一旦、口を離してはあはあと酸素を取り込んで呼吸をして休んでから、根元へと舌先を滑らせて脈打っている二つの袋を片方ずつ口へと含んで中にあるしこりの形を確かめるようにぐるりと舐めまわして転がして愛撫を施す。
片方の袋を手で揉みながらもう片方を口に含んで吸い、空いている方の手で、幹を握りごしごしと扱きたてる。
「あむぅ…んふ、ふっ…んむっふ、んぐ、うむ、んっ……」
真澄のペニスは大きすぎて根元まで口に含んで飲むことは出来ないため、陰嚢まで舐めて口に含んで転がして奉仕するように教えられた。
真澄に実際にしてもらいながら教えられた為それがどれくらい気持ちいいかは龍之介も知っている。
潔癖であるはずの真澄は龍之介の性器であればなんの躊躇もなく、口に含んで嘗め回すことすらいとわない。
それは龍之介を愛しているからこそであって、ほかの人間のものであればそんなことはせずに、もし強要されたとしても一切の躊躇いなく歯で思いっきり噛んで、食いちぎって吐き出している。
龍之介以外の者の身体など口に含むことなど吐き気を催すだけで、まったくしたいとも思わない。
こんなにも龍之介の事を愛しているのに、幼い頃からずっと想い続けているのにその気持ちが受け入れられない胸の痛みを伴いながら龍之介に奉仕されて、だんだんと息が上がってくる。
龍之介は真澄のことが好きだから奉仕をしているわけではなく強要されてしているだけだ。
それでも、真澄が男であるという象徴であるそれを扱かれ刺激されればじわじわとした熱がわだかまり息が上がってくる。
心が伴わない肉体だけの快楽を追う行為でも上り詰めることが出来る。
空しい行為だと分かっていながら、それを繰り返さずにはいられない。
心が離れているからこそ身体だけでも繋いでいなければ、龍之介の中に入る自分の存在が、どんどん小さくなっていきしまいにはきっと綺麗サッパリ消えてなくなってしまうのではないかと思えば思うほどに、身体だけでも繋ぎとめておかなければ、なんの繋がりもなくなってしまう。
――その身体だけでさえ一体いつまで繋ぎ止めていられるだろうか?
愛しているのは自分だけでも、その愛が一方的なものだとわかっていても、龍之介が誰かのものになり、その相手と幸せそうに笑っている姿など想像しただけで、底知れぬ憎悪と殺意の衝動に駆られて、気が狂いそうになり何をしてしまうか分からない。
真澄はそんなことを考えながら、懸命に奉仕し続けている龍之介の息苦しさからほんの少し紅潮した表情を目を細めて見下ろす。
真澄自身の手でいろいろと仕込まれてここまで出来るようになった彼だが、一体どのような気持ちで同じ男のものに奉仕しているのだろうかとふいに考えたことがある。
昔から龍之介は同性愛者ではなく普通に女の子が好きな少年で、男同士でする行為に関する知識もほとんど無いに等しかった。
けれど、真澄の手でいろいろと教え込まれて身体は愛撫されれば素直に反応を返し、後ろで同じ男のものを受け入れるという行為も何回か繰り返しているうちに憶えていいところに当たるように自ら腰を使うようにもなった。
感じすぎてきついときは逆に性感帯にあたり過ぎないように腰を使い快楽を調節して真澄が満足するまで持つようにする術も習得したようだ。
性的なことに無知で疎かった龍之介だが意外とこういうことに関しての飲み込みは速く、受け入れることに対しての違和感や苦痛を快楽へとすりかえることすら出来るようになっていた。
男に興味がある無しとは関係なく、元々そういう素質が強くあったのだろう。
たった今も美しくて線が細い容姿と体躯をした真澄には不釣合いな太くて長い凶悪なモノに奉仕しながら、自身も昂ぶらせて熱い雫をぽたぽたと芝生の上へと零して土へと染み込ませていた。
シャツの上から弄られた後でずっと放置されていた乳首は外気に曝されたままで弄って欲しそうに痛々しく勃起しきったままだ。
同じ男のものに奉仕しながら自身を昂ぶらせて感じている生まれたままの姿の龍之介を見て、真澄は口端が釣り上がり意地の悪い笑みを浮かべる。
男に抱かれていいようにされて感じるような身体をしているのだと散々、言い聞かせてきたのに彼はそれを認めようとはしなかった。
好きでそうなったわけじゃないと言い張って真澄の言い分を突っぱねるのだ。
「ふうっ…ぅうんっ…んぐ…ふっ…んむう…んん、んぐっ」
いきり立つ肉棒を片手で握りこんで扱きながら、根元から裏スジに沿ってねっとりと舌を這わせて、舐め上げて先端へとたどり着くと再びすっぽりと限界にまで開けた口の中へと迎え入れて口を窄めてじゅるじゅると水音を立てながら吸いたてる。
先走りの液を搾り取って飲み干そうとするかのように無心に吸い立てて奉仕する。
自分が真澄にそれをされた時のことを無意識に思い出しているのだろう、それをしながら龍之介のそこは半透明の濁った蜜をとろりと溢れさせて、完全に固くなり、形を変え、ビクビクと震えて脈打っていた。
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