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初めてのお留守番~佐藤といっしょ~【4】
ありのまま自分を偽らずに生きられる礼二の純粋さと真っ直ぐさは自分を偽り仮面を被り続けて生きてきた佐藤にとっては羨ましく思える。
親や周囲の人間から普通だ普通だ言われ続けて、嫌悪しながらそれをぶち壊してまで自分をさらけ出す事など出来なかった。
゛目立たないけどいい人゛という自分の立ち位置。
長い事、そのぬるま湯に浸かりきってきた自分には今更、寒い外に裸で出て行く度胸も自信もありはしない。
きっとこれからも嫌悪しつつ、すっかり慣れきってしまったそのポジションを維持しながら、退屈でありきたりでつまらない日常を、ただ周りに流されるままに生きていくのだろう。
――だからこそ、礼二に惹かれているのかもしれない。
礼二と二人きりでいる時はこうやって自分の欲望に忠実に、自身を偽らずにありのままをさらけ出して接する事ができる。
誰も知らない自分の本性を礼二にならさらけ出しても構わないとさえ思う。
「礼二様があんまりみじめでかわいそうだから慰めてあげようと思ってこうやって来てあげたんですよ。 どうせ翼君には見向きもされないで疼く身体を持て余してるんでしょう?」
佐藤が優しげな口調で膝を付いている礼二の目線と同じ位置に身を屈めて耳元で囁くようにそんなことを言う。
礼二は佐藤のその言葉を聞いて身を固くした。
寝起きでパジャマ姿の礼二の上着のボタンに指をかけてひとつひとつ丁寧に外していく。
白くて細い首筋にまだ残っているキスマークを見つけて佐藤は意外そうな顔をした。
3日もすればキスマークなど殆どあとも残らずに消えるものだと思っていたが、まだ薄赤く残っている印に指先を這わせる。
礼二はアザが消えにくい体質なのだろうか?
そんな事を思いながら全てのボタンを外し終えて、礼二の上着をそっと脱がせて白い素肌を外気へとさらけ出した。
礼二は身を固くしたままで佐藤がしている行為をただ黙って見ていた。
佐藤の背後に放り捨てられて転がっているクマのぬいぐるみをチラチラと見て、そればかりに気を取られているようだ。
(下手なことをしたら佐藤を怒らせて、つばしゃんを壊されるかもしれない。
ちゃんと無事に返してもらえるまで我慢しないと……)
そう思って佐藤にされるがままになっていた。
礼二の上半身をさらけ出した佐藤は胸に新たに巻きつけられている包帯を見て驚いたような顔をしていた。
「礼二様……これ、この包帯。 どうしたんですか? また怪我でもしたんですか?」
抑揚のない声で包帯の上から胸を弄りながら聞いてきた。
「……うん」
礼二が短く返事をして頷くのを見て佐藤は苦笑した。
相変わらず、よく怪我ばかりする人だ。
なにがどうしてそんな怪我を負ったのか詳しい話は聞いていないから、どうして体中あちこちこんなに傷だらけなのかはわからない。
「また、綺麗に巻きなおしてあげますから、この包帯全て取ってしまっても構いませんよね?」
佐藤に聞かれて、礼二は少しだけ眉を動かしただけで表情は変えずに小さく頷いた。
「ん……」
「随分、丁寧に包帯が巻きつけられてるみたいですけど、この包帯下ろしたてで、まだ新しいですよね?
翼君に巻いてもらったんですか?」
「うん……」
詳しい事情を聞きだすのは困難だとわかっているからこれ以上は何も詮索する気はない。
それよりも数日間触れることが出来なかった礼二の素肌に早く直に触れてその感触と体温を確かめたかった。
佐藤ははやる気持ちを抑えて平静を装いながら、礼二の胸に巻かれた包帯をゆっくりと全て解き、左胸の上に貼り付けられたガーゼを剥がして、床へと放り捨てた。
礼二の胸が露になって佐藤の眼前へと晒された。
白い肌に浮き立つように薄く色付いた桜色の粒が、外気に晒されて芯を持ちはじめる。
左胸には爪か何かで抉られたような痛々しい傷口がまるで花のように円を描いて付いていた。
傷口には触れないように白いクリーム状の軟膏に塗れた左胸の乳首に指先でそっと触れる。
途端に礼二の唇から甘さを含む声が息とともに吐き出された。
「ふぁ…っんん…」
固く立ち上がった乳首を人差し指と親指で摘んで絞るように押し潰して捏ね回してやる。
ぬめりを帯びた薬を塗りつけるように佐藤に乳首を指先で愛撫されて息が上がり、熱くなる自分の身体を抑えられずに、礼二は感じながらも、悔しげに眉根を寄せてあられもない声を上げてしまいそうになるのを堪えて下唇を噛んだ。
初日に佐藤に抱かれた時に言われた言葉が今でも礼二の胸に突き刺さり棘となって残りジクジクとした痛みを与え続けている。
翼以外の男に抱かれても感じるようなだらしのない淫乱だと蔑み笑っていた佐藤の表情と今、目の前にいるおかしな位に穏やかで優しげな表情をして壊れ物でも扱うように優しく触れて愛撫してくる佐藤とのギャップに戸惑いを隠せないでいた。
「ふっ…く…んんっ」
「礼二様、少しくらいなら声我慢しなくてもいいですよ。
余程の大声でもない限り、ここの寮の壁はそう簡単に音が漏れるような作りじゃないみたいですから」
佐藤にそんな事を言われ声が出ないように噛んでいた下唇を離すように口付けで促された。
「礼二様、ちょっとだけ口開けてください」
「はっ…あふ…」
小さく頷いておずおずとほんの少し開かれた唇を割って佐藤の舌が礼二の咥内へと入ってきた。
奥の方で縮こまっている礼二の舌を探り出して、執拗に絡めとり、吸い立てて、時折、温かく滑った粘膜の感触を確かめるように佐藤の舌が礼二の咥内で縦横無尽に動き回る。
「ん、んうっ…」
礼二は佐藤に口付けられて時折、くぐもった喘ぎを漏らしながら、両足をもぞもぞと落ち着き無く動かしていた。
佐藤に深く口付けられながら、意外なほどに穏やかで優しい手つきで左右の乳首を指先で摘み上げられて愛撫され、礼二の下肢が熱を持ちだんだんと固くなって疼き始める。
翼以外の相手にこんなことをされるのは嫌なはずなのにそんな気持ちを裏切るように身体は佐藤が施す愛撫に敏感に反応してしまう。
「ふあっあっ…んはぁ…」
キスの合間に零れる礼二の甘さを含んだ声を聞きながら、胸を弄っていた指先を下肢へと滑らせて半立ちになったそれに掌で触れる。
芯を持ち始めて形を変えだしたそれを確かめるように服の布地の上から掌全体で擦るように撫で上げる。
「このままだと下着がびしょびしょになっちゃいそうですから全部脱がせますよ? いいですよね礼二様」
「うぅっ……うん」
一旦、唇を離してそんな事を聞いてくる佐藤に礼二は小さく頷いて短く返事をした。
クマのぬいぐるみを無事に返してもらうまでどうせ佐藤に逆らうことは出来ない。
であれば結局は佐藤が言う事を素直に聞くしかない。
翼以外の男にこうやって愛撫されて感じてしまう自分の体が何より翼を好きだという気持ちを裏切っているような気がして胸が苦しい。
「板間で膝立ちのままだと疲れますから、ソファーに移動しましょうか?」
礼二の細い腰を掴んで抱き上げて佐藤はソファーへと礼二を横たわらせてズボンと下着に手をかけた。
最後に残されたズボンと下着が纏めて脱がされてゆく様を礼二はぼんやりとした表情で眺めていた。
生まれたままの姿にされてソファーへと横たわる礼二の上に覆いかぶさるように佐藤が足の間を割って入ってきた。
首筋に残っているキスマークをなぞる様に指先で触れて確かめる。
桜の花弁のようなそれがまだ色濃く残っているとは思っていなかった。
首筋だけだと思っていたが、胸、腹、足の間に至るまで、まるで昨日、一昨日付けられたかのように残っている薄赤い印が礼二が自分のものであるという事を証明しているような気がしてなんとなく嬉しかった。
アザが残りやすい体質なだけかもしれないが、礼二を崇拝してる奴らを出し抜いてやったと言う優越感も少しだけ感じる。
礼二に興味を抱いている男は自分も含めてG組にいる大半の生徒や他クラス、上級生を含めてかなりの数に及ぶ。
そいつら全員を出し抜いてやったという優越感も少しだけあって気分が高揚していた。
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