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初めてのお留守番~佐藤といっしょ~【5】
眼前にある佐藤の姿や表情は涙で潤み、霞んで見えて、礼二の目にはぼんやりとしか映ってはいなかった。
いつの間にか深く眠り込んでいて、目が覚めたら翼がいなくて、彼を探してクマのぬいぐるみを抱いたままで部屋中を探してそれでもいなくて、来客を伝えるインターホンがずっと鳴り響いていて、翼が帰って来たのかもと思って玄関のドアを開けたら、そこに立っていたのは佐藤で……。
今、自分はリビングのソファーに服を全て脱がされ、生まれたままの姿にされて横たわっている。
翼がいない間に自分はこんなことをしていて、一体なにをやっているのだろうと思う。
フローリングの床に転がされたままのクマのぬいぐるみを横目でチラチラと気にして見ていた。
つばしゃんという名前を付けて可愛がると翼と約束したばかりなのに、床に転がされているクマが寂しげに見えた。
そんな自分の気持ちとは裏腹に佐藤の愛撫に過敏に反応して熱を帯びていく体とは逆に心は冷え切っていた。
こんなことははやく終わらせて、つばしゃんを拾い上げて、抱っこして翼を捜しにいきたい。
そう思っていた。
怪我をしていない右胸に佐藤は顔を埋める。
桜色の粒を舌先で突付くように舐めて、口に含んで吸われる刺激に、礼二の唇から甘さを含んだ声が零れた。
「ふああぁぁっあっ」
空いている方の手で怪我をしている傷口に触れないように、左側の乳首を摘み上げて、人差し指と親指で摘んで、引っ張ったりこね回したりしてやるとビクビクと腰が跳ね上り、反応が返ってくる。
「はぁ、あ、んんっ」
「礼二様、相変わらず乳首、感じやすいですね」
吸い付いていた右側の乳首から口を離して嬉しそうな声色でそんな事を言う佐藤を礼二は快楽の涙で潤んだ瞳で見返す。
涙の膜が張って佐藤の表情はよく見えないが声の調子が嬉しそうに聞こえる。
唾液に塗れた右側の乳首を指先で弾いて、薬に塗れた左側の乳首も同様に弄り始める。
腫れて固く立ち上がり芯を持った桜色の粒を人差し指の爪先でカリカリと愛撫されて、礼二の唇から堪え切れずに、いやらしい声が上がる。
「ふあっあっああんっ」
「ははっ! いやらしい声あげてよっぽど好きなんですね、こうやって乳首弄られるのが……」
赤く腫れた両胸の突起を指先で摘んで軽く引っ張りながらそんなことを言う。
機嫌が良さそうな楽しそうな佐藤の声が礼二には嘲笑っているかのように聞こえて視界が余計に涙で滲んだ。
自分で自分の体が思うようにならなくて、どんどん彼が遊びやすいように作り変えられていくような気がして怖い。
珍しいものでも見るような、お気に入りの玩具で遊んでいるような佐藤の嬉々とした声色や態度が礼二を怯えさせてどんどん萎縮させていく。
執拗にそこばかり集中して弄ったせいか礼二の乳首は赤く腫れ上がって乳輪までぷっくりと膨らんで少しばかり痛々しく見えた。
膨れ上がって敏感になりきった乳輪ごと口に含んで吸いたてると開きっぱなしの口端から零れて伝う唾液もそのままにより甲高い上ずった声で鳴く。
「ふあっ、は、ああぁぁっ!」
ぶるぶると全身を小刻みに震わせて足の間でピクピクと反応しているまだ幼さが残る性器から透明な蜜を泉のように溢れさせていた。
「はあっ、あっ、んはあぁ…っ」
頬を赤く染めて快楽で潤みきった目を細めて、息を荒げる礼二の頬に触れて指先で伝う涙をそっと拭ってやった。
指先に掬い上げた雫を舌で舐め取って足の間を隠すように、いつの間にか閉じている礼二の両足を掴んでぐっと開かせる。
呼吸に合わせて、白い胸を上下させながら、快楽にとろけ涙で潤んだ半開きの紅い瞳で、礼二は自分の足を抱えあげて開かせる佐藤を、不思議そうな顔をしてただ見ていた。
大切な玩具をすぐに壊してしまうのはもったいない。
体の弱い礼二を病み上がりの状態で乱暴に抱くつもりは今日のところは最初からなかった。
今回は快感だけをじわじわと与えてそれを植えつけて、教え込んでやるつもりだ。
発情して疼いている身体を解放してくれる相手が誰であるかをわからせるために、優しく丁寧に抱いてあげようとそう思って佐藤は礼二の足の間へと顔を埋めてヒクヒクと震えながら頭をもたげていやらしい蜜に塗れているそれを舐め上げる。
「ひゃあぁっ!」
亀頭の割れ目に沿うように尖らせた舌先で桜色の先端を舐め上げられて礼二がビクリと腰を跳ね上げて悲鳴に近い声を上げて、大げさな反応を返してきた。
礼二にゆくゆくは口でさせることを覚えさせるつもりだったが、どこをどうすれば相手が気持ちよくなるか、実際に自分で経験してみるほうがきっとわかりやすくて飲み込みも早いと思う。
佐藤は女相手ですら口を使って奉仕する事をただ汚らしいとそんな風に思っていた。
自分だったら女に奉仕する事などせずに手と指先だけでさっさと濡らして解して突っ込んで終わりにする。
それが不思議な事に礼二相手であれば、自分にもついている同じものに口を付けることに抵抗がなく、なんの躊躇いも無くすることができる。
それも礼二が特別な存在であるというだけで彼以外の男のモノなど絶対に死んでも口に含んだりしたくは無いが。
ありきたりでつまらないと思っていた日常に現れた礼二の存在は佐藤にとってまさに青天の霹靂だった。
――四月一日
満開の桜が舞い散る中で新しく通う事になった若草学園へと到着して、バスから降り立ってそうそうに僕は深いため息を付いた。
「はあ……」
高校へと進学して、新しい学園での生活になんの期待もしていなかった。
隣に立つ背の高い幼なじみは見慣れた糸のように細い目を若干広げて僕の肩を叩いて心配そうな顔をした。
「ため息なんてついたりしてどうかしたんすか?」
「ん……ああ。なんでもない」
どうせ変わり映えのしない毎日がこの学園でも3年間ずっと続くのだろう。
長年、同じマンションで向かい合わせの家で暮らしているせいか親同士の仲が良く、幼稚園、小学校、中学と同じ学校に通っていた見飽きた顔の糸目の幼なじみと全寮制のこの学園を受験して受かり、また共に通うことになった。
たまたま進路の中にあったこの学園に二人して受かってしまった。
他の学校はほぼ全滅していた。
まあ、ギリギリになって勉強し始めた自分たちが悪いのであって、受かった高校があっただけまだマシだったといえる。
僕の幼なじみであるところのこいつ。
鈴木裕二。明るくて誰とでもすぐに打ち解けられるし、気さくだし、世話焼きで何かと便利でパシリにもなるし内面的な部分で言えば申し分ない。
ただ……至近距離でみるにはあまり綺麗な容姿をしているとはいいがたい。
いや、ぶっちゃけていえばまあ、ブサイクなんだが、人を容姿だけで判断してはいけないというまっとうな親の教えをちゃんと聞いて、僕はそれについては特に気にせずに幼い頃から彼と共に変わり映えのしない日々を送ってきた。
親同士の付き合いで連れてこられた子供同士がなんとなく共に遊んでいたというだけで特に親しい間柄だとは自分的には思っていない。
家が隣り合わせな事もあり、何かと行事や遊びで一緒になることが多く幼稚園の頃からの腐れ縁で長い付き合いだ。
長い付き合いで見飽きた顔をした幼なじみと降り立ったこの学園でまた退屈で面白みに欠ける学園生活が3年間も続くと思うと正直うんざりしていた。
無言で足を踏み出し、前進しだした僕の後ろをついてくる裕二を振り返ることなく、正門を抜けて広場を通り抜けて、一年の教室の組み分け表が張り出された掲示板の前に立ち自分の所属するクラスを確認して玄関へと向かう。
裕二と僕が所属するクラスはG組だった。
まさかの同じクラスだった。
A~Gクラスまであるこの学園で同じクラスに振り分けられる確立は低い。
同じクラスになるとは思っていなかった。
見飽きた顔とまた同じ学園の同じクラスか……と正直に言えばうんざりだったがそれは顔には出さずに自分が所属するクラスへと黙々と早足で向かった。
後ろを付いてくる裕二が若干嬉しそうなのが腹が立つ。
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