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初めてのお留守番~佐藤といっしょ~【6】
ガキの頃から親の付き合いや行事で嫌というほど一緒に行動してるんだ。
いい加減、僕の顔なんて見飽きてるだろうに。
なにがそんなに嬉しいんだか。
特に僕は何の特徴もない、いわば普通の容姿をしたどこにでもいるような顔をしている量産型の人間だ。
同じような人間が集まって行き来している雑踏にまぎれてしまえばきっと誰も僕の存在には気が付かない。
いてもいなくてもいいような取るに足らない存在だ。
周囲の人間にもそういう扱いをされ続けてきたのだから身に染みるほどに自覚している。
G組に辿りつくと他のクラスとは違ってやけに騒がしく、思い思いの場所で大声や奇声を上げて盛り上がって話をする生徒や黒板に落書きをしている生徒、机の上に行儀悪く足を乗っけている生徒などまるで学級崩壊をした小学校のような状態だった。
問題児ばかりが集められたクラスなのか、初日から波乱の予感がした。
なのにどうしてだろう胸が高鳴り、これまでと違う何か新しい事が始まりそうな予感に胸を躍らせていた。
裕二と共にクラスへと入り自分の席についてしばらく大人しく座っていたが、背後の黒板前にいたほうきとちりとりでちゃんばらして遊んでいた生徒達に声をかけられる。
「ちょうどいいや、俺たち飽きたからこれかしてやる」
「お前もちゃんばらして遊べよ!」
「そして片付けておいてくれ」
「というかしなくても片付けておいてくれると俺たちが助かる」
と無理矢理手渡されたほうきとちりとりを眺めて目が点になった。
15年間、生きてきた中でこんな風に変わった形で話しかけられるのは初めてだった。
今まで付き合ってきた面白みに欠ける予想どうりの言葉しか返さない量産型の人間とその生徒達は一風も二風も違っていた。
個性的……というのだろうか。
ただ片づけが面倒くさくて押し付けてきただけの自己中共なだけだろうがその生徒らの発言や行動に真新しさを感じ、その存在がやけに新鮮に映った。
いつの間にか自分の前に立つ裕二が僕の手からちりとりを取り上げて構えた。
「せっかく貸してもらったんすから博文、俺とやるすか? ちゃんばら」
と言う幼なじみの見飽きた顔を見て頷いた。
教室の背後にある黒板前へと向かい、しばしほうきとちりとりで裕二と打ち合いをしてちゃんばらにいそしんだ。
こんな遊びをするのは初めてで結構、夢中になって遊んでいたのだが、そんな中、ものすごい耳を劈くような破壊音が鳴り響いた。
教室の前席に座っていた生徒が、窓ガラスを叩き割ったようだ。
その窓ガラスを叩き割った生徒――
それが牛山礼二。その人だった。
礼二は何の躊躇いも無く騒がしい生徒達を黙らせるためという理由だけで学校の備品の椅子をぶん投げて窓ガラスを叩き割った。
もちろんそんな破壊行為をするのは褒められたものではないし、場所を間違えば器物破損で訴えられたりいろいろと大変な事になる。
だから常人であればそれをするのは躊躇うのだ。
そんな常人ではありえない行動をした礼二が、普通でありきたりなかわり映えのしない日常に飽きて嫌気がさしていた佐藤の目にはその姿が誰より新鮮に映った。
――この人であればつまらないに日常をきっとぶち壊して面白く、そして充実したものへと変えてくれるかもしれない。
そんな期待感に胸を膨らませていた。
そして思いがけずその彼に背後から羽交い絞めにされて人気が無い場所にまで連れて行かれて部屋を変わるように高圧的に命令された。
礼二は翼と同室になるためにたまたま翼と同室で部屋が割り当てられていた佐藤を見かけて後を追いかけた。
佐藤を人気の無い場所にでも連れ込んで、拉致って脅して無理矢理にでも部屋を変わらせようとした。
ただそれだけのことだった。
佐藤は自分が興味をはじめて持った相手に人気の無い場所へと連れ込まれて、背中を蹴られて埃にまみれた床へと這い蹲らされたお返しで最初のうちはただほんの少しからかってやるつもりだった。
冗談半分で始めた行為がいつのまにか本気になり、最後まで礼二を抱いて自分のものにしたいと言う気持ちが湧き上がってきて衝動の赴くままに彼を抱いた。
身体を繋いで、礼二の体内の熱さと粘膜のぬめり、そして締め付けに夢中になって彼を犯していた。
感じている時の礼二の蕩け切った声と表情を知っているのは自分だけだろうという独占欲も満たされた。
礼二は男相手どころか女相手にすら肉体関係を持った事がないだろう。
弟の翼以外の人間に興味が無いのだから男女間の行為ですらどういう風にするものなのかちゃんと知っていたかすら危うい。
礼二と翼の関係がどこまで進んでいるのかは知らないが翼の言動や行動に変化が無いところを見るとまったく相手にされていないのではないかと思う。
礼二がどんなに翼の事を想っていても、結局報われない。
翼はただ世話の焼ける手がかかる兄としてしか礼二を見ていないかもしれない。
礼二を初日に抱いてからというもの、次はいつ体を重ねられるだろうと気が付けば常に考えている自分がいた。
自分自身も男はおろか女とでさえ性的な行為をした事はなかった。
あまり興味がなく、そういう関係になってもいいと思えるような相手に今まで一度も出会ったこともなかった。
だから、自分にとって礼二は特別な存在なのだろう。
佐藤はそんなことを考えながら礼二の足の間に顔を埋める。
根元から上へと向かい裏筋へと沿うように舌を這わせて、次から次へと溢れてくる蜜を舐め取って桜色の先端へと口を付ける。
先っぽの穴に尖らせた舌をねじり込んで蜜を掻き出す様に動かしてやると礼二の腰がビクビクと跳ね上がり、切羽詰まった声で鳴いた。
「ひあああっ! やっ…そこ…あああっ!」
「ココ、こうすると気持ちいいでしょう?」
先端の割れ目にゆっくりと舌を這わせながら佐藤に聞かれて礼二は息も切れ切れになって真っ赤な顔をして涙目のまま頷いた。
「はあぁ…んんっ…う、んっ」
「舐めとっても舐めとってもキリが無いくらいにぐっしょり濡れてますよ礼二様のちんこ」
「うっ…うあ…ううっ」
「気持ちいいですよね、こうやって僕にちんこ舐められて、扱かれて感じてるからこんなにだらしなく溢れさせてるんですよね?」
「ふえ…うぅっ!」
眦に浮かべた涙を弾けさせながら礼二が力なく首を左右に振って佐藤の言葉を拒絶する。
体の反応を見れば佐藤に触れられ手と口で愛撫されて感じているのは明らかなのにそれを認めようとしない。
信じたくない思いのほうが強いのかもしれない。
翼以外の男にいやらしいことをされて感じてしまう自分の身体をまだ素直に受け入れられないのだろう。
「乳首弄られただけで、ほら、ココ。この穴からお漏らししたみたい溢れさせてこんなに濡れてるじゃないですか?」
「ひゃ、ああっ!」
礼二の茎を指先で揉む様にして扱きたてながら蜜をとめどなく溢れさせている先端の穴に尖らせた舌を差し込んでくりくりと刺激してやると礼二の唇から甲高い甘さを含んだいやらしい声が零れた。
「ははっ! 舐めとっても舐めとってもキリが無いですよ本当に」
「くぅ…んんっ…ひっ…うぁ、ううっ」
礼二が乱れた息を吐きながら短い喘ぎを漏らして小刻みに肩を震わせている。
真っ赤にした顔を歪めて悔しそうに涙を零して、ぐずり出して本格的に泣き出してしまった。
翼以外の男にこんなことをされて感じてしまう自分の体が忌々しくて、そして許せなかった。
翼の事だけが大好きで彼以外の人間なんてみんないなくなればいいとさえ思っているのに、どうしてこんなにも心と体がバラバラなのだろう。
礼二はそう考えて自分の身体を切り刻んでしまいたい衝動に駆られた。
翼への気持ちを裏切るような自分の思いどうりにならない自身の体への苛立ちを覚えて再び唇を噛み締めた。
悔しさと苦しさで壊れてしまいそうな自我をなんとか繋ぎとめようとして必死だった。
自分の身体を傷つけるような事はしないと翼とした約束を破るわけにはいかない。
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