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初めてのお留守番~佐藤といっしょ~【12】
自分はただ翼の傍にいたいだけなのにそれすら翼にとってはただの重荷になっているというのならそんな自分はいなくなったほうがいい。
だけど、翼の隣にいられない自分は生きている意味を見い出せない。
翼自身の口からいらないと言われればその場で彼の前からいなくなる覚悟はとうに出来ている。
佐藤が言う事だけが真実とは限らない。
「だから、礼二様も割り切った方がいい」
「…………」
佐藤が言う割り切った方がいいという言葉の意味がわからない。
なにをどんな風に割り切ればいいというのだろうか?
「ただ気持ちよくなれればそれだけでいいじゃないですか」
佐藤が言った単純明快なその言葉を聞いて礼二は首を左右に緩く振ってそれを否定した。
翼以外の男の手で気持ちよくなるような、翼への想いを裏切るような自分の体が一番嫌だった。
全てが終わった後で押し潰されそうな罪悪感と喪失感で自分を見失いそうになる。
前に佐藤に強要されて寝た後で目が覚めた後しばらくして意識がハッキリしてくると胸の奥がキリキリと締め付けられるように痛くて苦しかった。
さっきより幾分か落ち着きを取り戻して涙を掌で拭ってこちらを見返してくる礼二を見下ろして佐藤は深いため息を付いた。
翼以外の男にこんな風にされて気持ちよくなることを礼二はまだ受け入れられないのだろう。
体が快楽を求め、欲しがっていても、心は翼以外の男に抱かれる事を拒絶する。
「何も考えずにただ快楽に身を委ねればいい」
「つばさ…つばさじゃっ…なぃ…」
泣きすぎて苦しそうな息の合間に礼二はそんな事を言い返す。
カッと頭に血が上りそうになった。
自分は確かに美空翼とは別人だ。
翼以外の人間をちゃんと見ようとしない礼二に苛立ちを感じた。
礼二はずっと翼以外の人間全ての存在をこうやって否定して認めずに翼の事だけ考えて彼の事だけを見続けて生きてきたのだろう。
それを壊してやりたいと思った。
「礼二様。自分が誰に抱かれても感じるような淫乱だって事を認めてしまえば楽になれますよ」
佐藤が口にした残酷な言葉が礼二の胸に鋭いナイフのように突き刺さる。
翼以外の誰かにこんな事をされている自分を認めたくなくて礼二はただ泣きながら首を弱々しく左右に振る事しかできなかった。
「僕と礼二様、二人だけの秘密にしておけばいい。黙っていれば翼君にはバレないし、彼に嫌われる事もない」
その言葉を聞いて、礼二は涙を手で拭いながら、しゃくりあげて小さくコクンと頷いた。
無言で頷いた礼二を見て佐藤は口端を吊り上げて笑みを浮かべた。
礼二に少しずつでもいい、自分の存在を認めさせたい。
翼以外の人間にまったく興味を持たない礼二を振り向かせるのは困難だが、幸い彼の身体は快楽に弱くて愛撫すれば素直に反応を返してくる。
簡単に快楽に溺れさせる事ができる。
感じすぎて何も考えられなくなって喘ぐ礼二の蕩けきった表情を思い出して下肢が疼いた。
初日に礼二を抱いた時の感触を思い出して今も、自分の分身であるそれが完全に形を変えて下衣の前をギチギチと押し上げている。
礼二の下肢へと指を滑らせて双丘の狭間で息づいている赤く腫れた入り口を指の腹で擦って感触を確かめる。
礼二自身の先走りでぐっしょりと濡れたそこはくちゅくちゅといやらしい水音を立てて佐藤の指を奥へと誘い込もうとヒクヒクと開け閉めを繰り返していた。
「ほら、礼二様のここは欲しがってる。わかりますか? 礼二様のいやらしい穴がヒクついて僕の指に吸い付いているのが」
「ふや、あ、あ、あっ」
佐藤がくちゅくちゅと指先を双丘の狭間に滑らせて入り口を擦るたびに甘さを含んだ礼二の声が唇から零れる。
「誰の何が欲しいか言ってください。礼二様のその口で……」
「ふうっ、あっ、ああぁ…やらあぁっ……」
「こんなになってるのにまだそんな事を言ってるんですか?」
入り口を擦って撫で付けていた指を3本ぐちゅりと奥まで差し入れて中でぐるりと動かして中の粘膜をこね回しながら、礼二が自分から求めてくるように仕向ける。
「僕の名前、教えたばかりでしょう? 憶えてますよね?」
「ひゃ、ううっ!」
中をぐるぐると掻き回されながら佐藤に聞かれて礼二は喘ぎながら首を左右に振りたくった。
つい、さっき教えたばかりの自分の名前を忘れられているのが気に食わなくて中に差し入れたままの指先で奥にある礼二の一番感じる場所に軽く爪を立てて押し上げた。
「ひああぁっ!」
前立腺をカリカリと爪先で引っかかれて礼二が悲鳴に近い声を上げて咽び泣いた。
「ひろふみ。博文ですよ。憶えてください僕の名前」
「ひゃああぁっ!」
「喘いでばかりいないでほら、ちゃんと口に出して呼んでください」
快楽のしこりを押し上げていた指の動きを止めて、礼二の呼吸の乱れが落ち着いてきた頃合を見計らって「僕の名前を呼んでください」と再び礼二を見下ろしながら促した。
「は、はぁ……ひ……ひろ……ふ、み……」
苦しそうな呼吸の合間にやっとの思いで礼二が佐藤の下の名前を口にする。
「誰の何が欲しいかちゃんと言ってください。そうすればもっと気持ちよくなれますよ、ほら」
礼二が眉を八の字に寄せて悩ましげな表情で佐藤を見上げている。
桜色の唇を開こうとして、下唇を軽く噛み締めて閉じたり、また開いたりを繰り返す。
言おうか言うまいか礼二の中で葛藤があり、迷っているのだろう。
「はあ…はあ…」
「指くわえ込んでる穴が今もホラ、ぎゅうぎゅう締め付けてきて離したくないって言ってる」
「ふやっ、あっ、ああぁっ」
「いい加減に意地を張るのは止めにして素直になったらどうですか?」
「うっ、ううっ!」
「早く、ここからいっぱい出して楽になりたいでしょう?」
指を離すまいときゅうきゅうと締め付けてくる壁を掻き分けて指を引き抜いて、先走りの液に塗れて固くそそり立って震えている礼二の肉茎を掌に包んでぎゅっと引き絞るように握りこんでゆっくりと上下に扱き始める。
「ふあっあっああっ」
礼二の肉茎の裏筋を親指の腹で押しながら根元から先端へと向かって掌を滑らせる。
先走りの液でぐっしょりと濡れている肉茎は掌がすべり上下に行き来するたびにぐちゅぐちゅといやらしい水音を響かせる。
肉茎をダイレクトに刺激されれば男なら誰でも簡単に気持ちよくなれる。
肉茎を愛撫しながら下肢を見やると礼二の双丘の狭間で中途半端で放り出されたソコがヒクヒクと開け閉めを繰り返している。
閉じきらない穴から先走りと腸液が混ざり合った液がとろとろと狭間を伝い零れてソファーを汚していた。
「礼二様のいやらしい穴がさっきからちんこ扱く度にヒクヒクしてる」
「ふあああぁっ」
「スケベ穴に指より太いものはやく咥え込みたくてうずうずしてるんでしょう」
「うっ、ひっ、いや、ああっ」
「喘いでばかりいないではやく、言ってくださいよ。
いやらしい穴に博文のチンポ入れてくださいって」
「や、あ、うあああっ!
つばさ、つばさああっ!」
礼二が掠れた声でそう泣き叫んで翼の名前を呼んだ瞬間、頭に血が上って目の前が真っ暗になり気が付いた時には礼二の頬を思いっきり掌で叩いていた。
乾いた音を響かせてビンタされた礼二の頬は見る見るうちに赤く腫れて膨れあがった。
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