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初めてのお留守番~佐藤といっしょ~【14】

   本当は礼二の頬を今、すぐにでも冷やした方が腫れも引くのだろうが、この状況で行為を中断するのはどうあがいても無理そうだった。  いきり立ったままで放置されていたそこがギチギチとさらに固くなり、今すぐにでも礼二の中へと入り、蟠るもの全てを吐き出したいと限界を訴えている。  佐藤はそう思いながら、張り詰めて苦しそうな下衣の前を開けて窮屈だったそこを開放した。  チャックを下ろして緩めると大分楽になったような気がした。    礼二を殴りつけて傷つけてしまった手前もあってか、礼二の身体を労わるように抱き寄せて腰を持ち上げる。 「今日のところは下の名前を覚えて呼んでくれただけで勘弁してあげます」 「あ……あ……」  礼二は佐藤のそんな台詞を聞きながら、腰を掴まれて抱き寄せられて身を固くした。  いつの間にか閉じていた足を開かれて、普段は日の光りさえあたらない部分を全てさらけだされてしまう。    恥ずかしいという感情はまったくない礼二だが今から自分が何をされるかわかって恐怖感からか肩や口元がかすかに震えていた。  ずっと中途半端で放置されて苦しかったものが解放されたがっている。  より強い快感を求めて、形を変えたまま桜色の先端からとろとろと蜜を溢れさせた。  欲しがっている体とは逆に翼以外の男に抱かれるという恐怖感で礼二の胸は翼への後ろめたさでいっぱいだった。  心は翼だけを求めているのにどうして自分自身の体がそれを裏切ってしまうのだろう。  心と体がバラバラで、できることなら体と心を切り離して、翼のことだけを思って生きられるように肉体という檻を捨てて抜け出してしまいたかった。  そんな思いからか礼二は今まで自分の身体を傷つける事になんの躊躇いもなかった。  けれど、たった今、人に傷つけられる事の痛みを知ったばかりだ。  肉体的な痛みよりも人に殴られたという事実が礼二を萎縮させる。  恐怖感で胸がいっぱいになって肩と指先の震えが止まらない。  それでも下肢は萎える事は無く、礼二の内心と裏腹に熱を持っている。  片足を再び肩に担ぎ上げられて横倒しで足を開かれ、双丘の狭間を伝い落ちる蜜を指先でなぞる様に掬い取られてヒクヒクと開け閉めを繰り返して喘いでいる入り口へと塗りつけられる。 「んっ……はぁ……」  息を吐く以外の音は無く静寂に包まれた部屋にくちゅくちゅとした水音が響いて、やけに耳に付く。   元々、羞恥心がない礼二はその事に対して恥ずかしいと言う感情はなかったが、耳障りに聞こえていた。  敏感な部分に指先で触れられる緩い快感に身震いした。 「今から、礼二様のここに僕のチンポが挿っていくのをちゃんと見ていてくださいね」  佐藤は自身の下着をズボンごと膝くらいまで引きずり下ろして、ずっといきり立って布を押し上げて張り詰めていたそこを開放した。  勢いよく飛び出してきた、佐藤のそれを見て、礼二は目を逸らしたくなった。  翼以外の男の性器をこんなにハッキリと明るい場所で目にしたのは初めてだった。  先端が赤黒くて所々、血管が浮き出たそれは翼のものとそう違いがないように見えるが、礼二の目にはまったく別のものに映っていた。  早朝に翼のものに愛しげに触れて奉仕した時の指先と掌の感触が今でも残っている。  口の中に含んで、その匂いと味を満遍なく味わおうと夢中になってむしゃぶりついて、少しでも多く翼の体から滲み出してくる液を飲み干そうとそれを吸いたてた。  佐藤のそれを見てもそんな事をしたいという気持ちはまったく湧いてこなかった。  翼以外の人間の体の一部はただ、醜悪で汚いもののようにしか見えない。  礼二は瞼を閉じてそれを視界に入らないようにしたかったが、佐藤にちゃんとそれを見ているようにと言われたばかりだ。    佐藤は自分自身の分身であるその肉茎の根元を掴んで赤黒い先端部分を礼二の赤く腫れた入り口へと押し当てた。  亀頭部分を柔らかく解かされた入り口に押し付けて、時折にゅるにゅると上下に滑らせて擦り付けて濡れた粘膜の感触を確かめるように動かした。 「ふあっ……あっ……」  赤く腫れた入り口を先端の膨らんだ部分で擦られて、そのじれったい快感に礼二の口から堪えきれない喘ぎが零れた。 「あっ……ん、んっ」 「礼二様、全身の力、抜いててくださいね、今からゆっくり挿入しますから」  そう言われて礼二は頷いて、体の力が抜けるように息を吐き出す。  翼以外の男のものを受け入れさせられる恐怖感を堪えて健気に佐藤の言う事を聞く。  ここまできてしまえばもう最後まで受け入れるしかないと覚悟を決めた。    佐藤の言う事を聞いているうちは翼にばれる事もないし彼に嫌われる事も無い。  そう佐藤の口から聞いた言葉を疑うことなく信じて鵜呑みにしていた。    約束はかならずしも守られるとは限らない――そう翼に教えられたばかりだったのに……  快楽と恐怖感に流されて、すっかりその事を忘れてしまっていた。  翼の事しか考えられなかった礼二の頭の中に確かに佐藤博文という存在がじわじわと侵蝕するように入り込んでいった。  体だけでなく心まで汚され、どんどん蝕まれていく。  礼二が息を吐いて体から力が抜けているのを確認してから横倒しのまま片足を抱え上げて、ずっと押し付けていた肉棒をじわじわと礼二の体内へと飲み込ませていく。   「く……ううっ」  苦しげな声が礼二の唇から零れて、抱え上げた足から震えが伝わってきた。  亀頭の張り出した部分を飲み込ませてしまえばあとは茎の部分をズルズルと簡単に飲み込ませる事ができた。  ゆっくりと根元まで飲み込ませて、しばらく動かずにそのままで礼二の様子を伺い見る。   「はあ……はあ……」  自分の体内へと侵入してきたそれの異物感に礼二は苦しそうに息を吐く。    初日に抱かれた時は一息に突き入れられて、なにがなんだかわからないままそれを受け入れさせられたが、今回は自分の目でそれがジワジワと進入してくる様をちゃんと見ながらゆっくりと受け入れさせられた。  ジワジワと少しずつ受け入れさせられる方が異物感がより酷かった。  それでも礼二のそこは挿ってきた肉棒に嬉しそうに絡みつき、きゅうきゅうとそれを締め付ける。  中途半端で放り出された身体は体内に蟠る熱を解放されたがっている。  心では受け入れたくないと思っているのに身体はまったく逆の反応をして、それが余計に礼二を苦しませていた。  翼以外の男に犯されて気持ちよくなって溺れてしまうのが怖い。  我を忘れて自分から求めてしまった後でとてつもない喪失感と絶望感で自分で自分を殺してしまいたくなる。  一緒に生きて欲しいと言ってくれた翼のその言葉があるから、誰よりも大好きな彼と約束したから、自分は生きて今、ここにいる。  翼はどこへいってしまったんだろう……もしかしたら、もう帰ってこないのかもしれない……そう考えたら余計に怖くなって、涙が溢れて視界が歪んで見えなくなった。 「礼二様、大丈夫ですか?」  苦しげに息を吐きながら眦に涙を浮かせている礼二を見下ろして佐藤がそんな事を聞いてきた。  礼二の息が落ち着くまでしばらくこのままで待っていてやろうと動かずに彼の様子を伺っていた。  翼以外の男の声を聞いて現実へと引き戻されて礼二はどうしようもない不安と絶望感で震えが止まらなくなった。  自分が誰に何をされているのかはっきりと認識する事を脳が拒否しているようだ。  大声で叫び出したいのを堪えてカタカタとなる奥歯を噛み締めて礼二は口を閉ざした。

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