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幽霊の嫉妬
「社長?」
「あ、ごめん。えっと、もう一度いいかな?」
心ここにあらず。
学校からの帰り、突然、現れた男にのっかられて精を搾り取られた。
今までのオレだったら、オメガというだけで萎えて使いものにならない。
唯一の例外は、運命の番の叶。
「ってことは、やっぱり、あいつが新たな運命の番……」
「はぁ? 社長、やっぱり聞いてなかったですね……」
秘書が目をつり上げる。
オレは、いくつか会社を経営している。
本業は、高校生だけれども腕試しでいくつか立ち上げたベンチャーは全て軌道にのり、上場した。
「ごめん。やっぱ、帰るわ」
ますます、目をつり上げる秘書を見ないフリ。
あっちでも、こっちでも怒られている。
そう、叶だ。
あのあと、前田に後をたくし、すがる男をその場に残し部屋に逃げ帰った。
だけど、部屋にはいるなり、すぐにバレた。
「幽霊の千里眼かよ……」
「ちがう! あんたがわかりやすいからだよっ!! もっと隠してよ」
「隠したらいいのか?」
「いいわけないっ!」
「オレだって、ショックうけてるんだ……心は叶だけなのに」
今も、オレの心は叶だけ。
だけど、心と裏腹に体は簡単に裏切った。
「消えたい。この部屋から出ていきたいのにでられない。あんたの帰りなんか待ちたくないのに……あんたの顔もみたくないのに……どうやったら、ここから出れるの……? こんなのイヤだ」
「消えるなっ! オレには叶が必要なんだからっ! 絶対に消えるな。顔を見たくないなら、オレが部屋から出るから……」
そうして、会社に顔を出したものの、さっぱり集中できない。
頭に浮かぶのは、叶のことばかり。
あいつ、泣いてた……。
「社長、お送りします。本宅でよいですか?」
「いや、マンションにして」
「はい、かしこまりました」
叶と出会ってから、ペースが乱れてばかり。
感情のジェットコースター。
コントロール不能で、上がったり下がったり忙しい。
自分でないみたい。
「社長って、うぶだったのですね」
「え?」
「恋愛を覚えてばかりの少年のようです」
だって、事実だから。
ついこの間、はじめて叶に恋をしたんだからさ。
オレの心は、叶だけ。
だけど、叶に関しては上手く振る舞えなくて傷つけてばかり。
「はぁっ。どうしたらいいのかな」
「ふふふ。プレーボーイでならした社長の言葉とも思えないですね」
「だって、本当にわかんないんだもん」
「では、秘策をお教えします。どんな人にもきく、秘策です」
何、それ??
オレは、ごくりと唾を飲み込んで秘書の言葉を待った。
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