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第5話

 僕が思考停止している間にも仲人や親同士の話は進み、定番の「後は若い人同士で」となり紅林と二人にされた。 「何でお前がここに居るの?」 「何でって、そりゃあ見合いだからだろ?」  もしかして紅林も相手が誰か知らずに来たとか……。 「真幸(おまえ)が俺との見合いを切望しているって聞いてきたんだけど、違うの?」  誰だ。そんな作り話したの! 「スパイク決める度に恨みがましそうに睨んでいたお前が、実は俺に惚れてたと聞いて胸キュンしたぜ」 「脳まで筋肉で出来た人は知らないのかもしれないけど、冗談は休み休み言うのか会話のルールだよ? あと、胸キュンとか止めてくれる。マジ、キモイから!」 「やっぱ誤情報かぁ」 「少し考えれば分かるでしょ」  剛大南は同じブロックの為、何度となく試合をしたライバル校だ。しかも、三年最後の全国行の切符を奪いやがった!  中でもキャプテンだった紅林のムカつき指数たるや群を抜いている。スパイクを決める度に忌々しく思い。ブロックを決められる度に邪魔に思い。  消したい。潰したい。排除したいと思っていた相手だ。殺意を覚える事はあっても好きとかあり得ないし!  今も余裕しゃくしゃくな笑みを見ているだけで目の前のお茶を叩き付けたくなる。  いやいや。ダメダメ。  ムカつく宿敵って前に紅城月家の人間なんだから、ここは丁重にお断りして帰ろう。 「帰る」  ムカつきの所為で丁重を忘れたけど、いいか。どうせ紅林だし。  立ち上がろうとするが感覚を失うほど痺れた足が言う事を聞かずによろけると透かさず紅林が支えた。 「勝手に触らないでくれる?」 「俺が支えなかったらこけていただろうが」 「お前に触られるよりかマシだし!」 「へぇ」 「へぇ、じゃなくてさ。さっさと離してくれる」  嫌悪感丸出しで訴えるが紅林は面白がって僕を引き寄せた。  そんな最悪なタイミングで襖が開けられ、要らぬ誤解を受けてしまった。 「あらあら。すっかり仲良しね」 「善史。今日のところはそれくらいにしなさい」 「若いと何事も早いですね」  ああ、止めて。  皆で外堀埋めていかないで!

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