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第6話
当人以外が盛り上がる中で食事しているけど、全然味が分からない。
取り合えず今日をやり過ごしたら後日、紅林本人に電話で断ろう。
それがベターだ。
皿を空ければ全てが終わると信じ、黙々と食べ続ける。
親同士が勝手に次の約束を交わしているが聞こえない。聞かない。無視。
食事を終え、両家共に車を待っていると紅林が近寄って来た。
「これ」
名刺を差し出され、作り笑顔で受け取る。
紅林の連絡先とか知りたくないけど、断りの電話入れるのに必要だからね。
「お前、S大行ってんだろ? バレー部強いところだよな。見合いとか関係なく練習試合しようぜ」
紅林の言葉に作り笑顔が一瞬引き攣りそうになるが、流石は僕。そのままの笑顔をキープ。
「悪いけど、バレー部入ってないんだ」
「え? 何で?」
何で? だと。
それこそ少し考えれば分かる事だろ。無い脳みそで考えろ!
答えない事で漸く理由に思い当たったのか紅林が何か言いかけるが、車が着いたと母さんが呼びに来たので僕は軽く手を振ってその場を後にした。
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