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9 秘密の悩み2
その言葉を口にするには、かなりの勇気が必要だった。
「俺、ラグレイドとキスしたり、いちゃいちゃしたりしていたら、」
恥ずかしいのを我慢して口を開く。
「お漏らしをしそうになっちゃうんだよ」
俺は最近調子が悪い。
ラグレイドとえっちなキスをしていたり、ベッドでくっついて触りっこなんかをしてると変になる。そのことを凄く悩んでいる。
「お漏らしを、」
ラグレイドが真面目な思案顔で俺の言葉を繰り返したので、俺は急速に自分の頬が熱くなるのを感じた。
「ほ、本当に誰にも言ったら駄目だからな! 絶対絶対駄目だから!」
羞恥紛れにそう言うと、ラグレイドは紳士然として頷く。
「もちろん口外などしない」
そうして、
「それは、どちらがそうなるのだろう?」
と聞いてきた。
「どちら?」
「つまり、どっちが漏れそうになるのかと思って」
聞かれた意図が一瞬わからなかったのだが、要は、漏れるのは前か後ろか、ということを確認したいらしい。
うしろだよ。
俺は観念して、目を逸らしたまま小声で答えた。
別にお腹が痛いわけでも緩いわけでもない。なのに、なんだかおしりの穴が変なんだ。本当に失禁しちゃうわけではないけれど、なんというか。
こんな悩み、子どもみたいでおかしいことは分かっている。
「シオ」
いつの間にか、ラグレイドの腕にやさしく抱き締められていた。
「ひとりで悩んで不安だったろう」
ラグレイドの分厚い胸に包み込まれるとほっとする。
悩みなどすべて他愛もないことのように思えてくるから不思議だ。ラグレイドと一緒にいれば問題などきっと消えてなくなる。不調も治って上手くいく、そんな気がしてくる。
「もう大丈夫だから、」
ほら、優しい声。大好きなぬくもり。本当に大丈夫なのかもしれない。
「見せてごらん」
「え?」
「なにかの病気だったら大変だろう? 俺が一度確認しよう」
「えっ、」
黒豹獣人の青年はこれ以上ないほどに優しげなスマイルを向けて言う。
「さあ、俺におしりを見せてごらん」
ベッドの上で、俺は非常に後悔していた。
やっぱり言うんじゃなかった。
だってこんなシチュエーション、ちょっと正気では耐えられそうにない。
「......シオ、どうだ? そろそろ漏れそうか......?」
獣人は艶めく瞳で上目使いに俺を見上げる。
その肉厚な舌先は俺の乳首とのあいだに唾液の糸を引いている。俺の首元から胸にかけては、ラグレイドに舐められ擦られ、所々赤くぬらぬらに濡れていた。
お漏らしの状態を見るには、まずはえっちなイチャイチャをしなくてはならない。ということで、俺はシャワーを浴び、素肌にガウンを羽織っただけの姿となって、ベッドの上で獣人に思うさま舐め弄られていた。
「んんーっ、もう漏れちゃう、漏れちゃうようっ」
俺はさっきから「漏れるから」「濡れちゃうから」と何度も訴えているのに、なかなか放してくれなかったのはラグレイドのほうなのだ。
ようやくラグレイドが身を起こしてくれて、俺はやっと執拗な舌と腕から解放された。
やはりおしりが不安だった。一度トイレへ行っておきたい。
そう思ってベッドからそろりと抜け出そうとしたのだけれど、
「シオ、」
俺の手首を黒豹獣人の大きな手ががっちりと掴んだ。
見上げると、艶やかな色を帯びた金色の瞳が、真っ直ぐにじっと俺のことを捉えていた。そうして俺と視線が絡まると、瞳はすっと細められた。
ゆるり、と容の良い唇の口角が上がる。
「ほら、シオ、怖くないから」
鼓膜に響く低い声が、もの凄く甘くやさしく囁やいてくる。
「ここで四つん這いになってごらん」
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