21 / 22
第21話
マンションまで相庭の手を引きながら帰り、玄関の扉を閉めた途端、椎名はその背中を勢いよく抱きしめた。項に鼻先を擦りつけながら、後ろ手に鍵をかける。久しぶりに吸い込んだ相庭の匂いは簡単に劣情を煽った。ここにくるまで彼を抱くことしか考えてなかったのだから、当然と言えば当然か。
そのままベッドに連れ込んで事に及ぼうとすると、慌てた相庭がシャワーを浴びさせて欲しいと懇願した。その様子があまりに必死だったので、必要ないとは思いつつも無理強いできず、大人しく待つことにした。
待っても待ってもなかなか出てくる気配がない相庭に痺れを切らし、何度浴室に足を向けようとしたかわからない。もしかして「やっぱりやだ」なんて言い出すんじゃないかとヒヤヒヤしていたが、服を着ることなく、バスタオルを腰に巻いた状態で出てきた姿を見て、思いすごしだったことを悟る。
ベッドの上で寝そべっている椎名に覆い被さるようにして抱きついた相庭が、一枚だけ纏っていたバスタオルを取り払い、伸び上がってキスをした。それだけのことで異常に気分が高揚し、今までとは比べ物にならないほどドキドキした。
体勢を入れ替えて上になり、軽く触れるだけのキスを繰り返す。柔らかな唇を啄んだり、食んだりしているだけで、相庭の表情がとろりと蕩けた。足りない、もっと、と訴えるように顎が浮いて、無意識に椎名の唇を追いかける相庭が、めちゃくちゃに可愛がってやりたいくらい愛おしい。
「……椎名、ちゃんとキスしたい……」
恥ずかしげに消え入るような声で言われると、好きなだけ与えてやりたくなる。ゆっくりと唇の隙間から舌を差し込み、敏感な粘膜をあちこち舐め回した。呼吸が乱れ、口の端から唾液がこぼれても、構わず舌を絡め合う。呼吸に混じる相庭の掠れた声が下肢をダイレクトに刺激した。
「椎名、俺こんなになってるけど、本当に大丈夫……?」
濡れた声で囁くように自己申告して、相庭が立ち上がった自分の熱を椎名の掌に押しつける。硬くなったそれをそっと握り、ゆるく扱きながら、椎名も反応している部分を相庭の太ももに擦りつけた。
「俺のことちゃんと信じて。興奮してもうこんなだ」
男だとか女だとかそんなことを気にしているのは相庭だけで、椎名は精神的にも肉体的にも男でしかない相庭を求めているのだと、その目で知って欲しかった。見せつけるようにズボンのジッパーを下ろし、下着ごと脱ぎ捨てて相庭に覆いかぶさる。
一糸まとわぬ状態で互いの屹立が擦れ合うように腰を揺らすと、相庭が途端に顔を真っ赤に染めて、掌で覆い隠した。
「こら、隠すな」
「やだ、無理」
「ふうん。顔見せてくれないのか。……いいよ、そんな余裕なくしてやる」
頑なに椎名の言葉を突っぱねようとする相庭が憎たらしくて、敏感な両胸の突起をきゅっと摘まみ上げる。その弾みで甲高い嬌声が飛び出し、相庭は悔しそうに歯を食いしばった。捏ねたり引っ掻いたりしながら刺激を与えると、我慢しきれず甘い吐息を漏らす恋人の姿に気を良くし、椎名は立ち上がった小さな粒に吸いついた。
「んんっ、やっ……」
「いや? ほんとに?」
どんなに口では嫌と言っていても、そうではないことを知っている。反応を見ながら舌で嬲ると、それを証明するかのように甘やかな声がこぼれ、相庭は身悶えながら快感を受け止めている。前にここを責めた時より、更に敏感になっているように見えた。
「あっ、んっ、んっ……」
「はは……相庭、やっぱりここ好きだな」
「ああっ……」
わざとらしくちゅうっと音を立てて吸い、反対側の粒を指先で弾くと、相庭は顔を隠しているのもしんどくなり、荒い呼吸を繰り返しながら両手でシーツを握った。露わになったのは、泣き出しそうなほど潤んだ瞳を細め、羞恥に耐えている艶やかな表情だった。
相庭は小さく啼きながら自分の指を口に含み、唾液で湿らせた中指を後ろの窄まりにあてがった。死角になっているせいで見ることはできないが、椎名を迎えるための場所を自ら解している姿に恐ろしいほど煽られた。
「はあ、んんっ、椎名……っ。もう、欲しい……」
申し訳程度に慣らした状態ですぐ求められ、戸惑いと心配が交差する。
「え、でもまだ……」
「さっき、お風呂でいっぱい解してきたから……頼む、もう……っ」
余裕のない表情でとんでもないことを言ってのけた相庭に、椎名は息を飲んだ。その一瞬の間を悪い方に受け取ったのか、「……やっぱ、無理……?」と不安げに問われ、そんなわけないだろと慌てて返す。本音を言えば全部自分がやりたかった。恥ずかしがる相庭を好きなだけ弄りまわし、これでもかというくらい焦らして泣かせてやりたかった。
「今度から俺にやらせてね……」
次の機会には主導権を握らせてもらいます、と心の中で宣言して、相庭の膝裏を掬った。後口に硬くなった屹立を押し当てると、抵抗なく迎え入れられる。こんなになるまで解してくれていたなら、シャワーに時間がかかってしまったのも無理はない。おねだりをされて椎名のテンションは正直なところ一瞬でゲージを振り切ってしまった。
ともだちにシェアしよう!