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(何なんだ……) 訳が分からない。 放課後、引き受ける羽目になった雑用をこなしていると。現れたのは藤堂。 お互い嫌い合っているはずのアイツがなぜ此処に。 「…まぁ、ありがとう」 特段喧嘩をする訳でもなく、ただ単純に手伝ってもらう形になった。妙な気持ちだが礼を伝える。 並んで靴を履き替える下駄箱。隣の長身を見上げれば黙って頷くだけ。 訪れた静寂を破るように背を向けた。 「じゃあ…」 「家は」 「…家?」 簡潔な問いに首を傾げると、追いついた藤堂が隣に並ぶ。 「送る」 送る―――? 「は、はあ?そん…そんな、女子じゃあるまいし…」 衝撃で吃る僕を見つめた彼は、ふと笑う。初めて目にする柔らかい微笑みに益々調子を狂わされて。 「…嫌か」 僕だけが動揺しているこの状況が気に入らない。苛立ちを露わに校門をくぐる。 「そんな髪色で家まで来られたら迷惑だ」 主に僕の母親が驚いて卒倒しそうな。ふん、と息を吐いて振り向く。 「あー…分かった」 拍子抜けするほどあっさり引き下がった藤堂。しかし端正な相貌は僅かに歪められ、垂れた尻尾が見えるようだ。 そのまま踵を返す姿を引き止めてしまったのは、そう、動物好きな性格のせい。決して彼個人がどうこうという訳ではない。 「…僕の家はそっちじゃないぞ」 振り返る藤堂が浮かべた笑みは、こうなることを予想していたと言わんばかりの物で。まんまと嵌められたような気がしなくもないが、ため息と共に着いてくるよう促す。 「近所までだからな」 そしてこの日を境に距離が縮まるとは、まさか予想もしていなかった。

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