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6.
「…藤堂」
「何だよ」
放課後の教室。六月に入り、梅雨の季節になった。
あれ以来何故だか色々と手伝ってくれる藤堂。
相変わらず不良は好きではない。けれど、僕の知っている不良とは何処か違う。
「どうして毎回お前まで残るんだよ。嫌がらせにしては手が込んでるな」
「…嫌がらせ、って」
きょとりと瞬いた彼が頭を掻く。作業の手を止めこちらに向き合う。
恩を感じているのも事実で、なるべく穏便に済ませたいとは思うが。そちらがその気なら争いも辞さない覚悟だった。
「正木は…委員長に向いてないだろ」
「……は?」
やはり喧嘩を売るつもりか。引き攣る顔面を自覚しながら食ってかかろうと口を開く。ところが、彼の瞳はもの言いたげで。
「…理由は」
気迫を削がれてため息をつく。どう返ってくるかと思案していた僕の耳に届いたのは、至極簡潔なひとこと。
「傍で見てれば分かる」
さあ―――…と響く雨音。窓枠を伝う雨粒を眺めたあと、口を開く。
「……中学で」
何故こいつに話そうとしているのか。自分でも分からない。けれど口火を切ってしまったからには、と静かに腹を括る。
「いじめ、られてた…んだ」
「…いじめ」
ぼそりと呟く藤堂を向いて、笑う。上手く話せないかもしれないけれど、出来るだけ悲壮感を漂わせないように。
「まあ、僕に落ち度があったんだよ。だから高校では同じ事にならないように、って……先手を打った、つもり」
例え雑用係であったとしても。必要とされれば、いじめの対象になってしまう確率は格段に減る。
黙って僕の話を聞いていた彼は、ややあってゆっくりと言葉を発した。
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