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8.
あれから期末試験を受け、夏休み。梅雨も明けて本格的な暑さがすぐそこまで近づいていた。
この時期はクラスの仕事をすることも少なく、そうなると必然的に藤堂と関わる時間もないまま。
連絡先は知っているのだから、自分からメッセージを送れば…とも考えたが、いざ文章を打とうとすると、彼との接点の希薄さを改めて確認させられる結果に終わった。
放課後の、あの時間だけ。雑用を手伝う以外、藤堂は関わろうとしない。まるでそれだけが理由だとも言わんばかりの態度に、胸がざわつき始めたのはいつからだろう。
部屋でだらだらとアイスを口にしていた時。ピコンとメッセージアプリが通知を告げた。
『今週の土曜、空けとけよ』
トークルームの名前は、藤堂。見慣れないアイコンを眺めて、理由を聞こうと指をスライドさせる。
と、
『夏祭り。付き合え』
続けて表示される誘い。はあ?と声に出すのを押しとどめることは出来なかった。
『なんで』
わざわざ自分を誘わなくたって良さそうなものを。心なしか逸る気持ちを抑え、三文字を送った。
『雑用、散々手伝ったんだから来いよな』
返信を眺める。落胆は、隠しようがない。
自分は彼に何と答えてほしかったのか。
『19時に神社の前で』
続けて届いた待ち合わせの約束には、返事をしなかった。
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