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12.
「……藤堂くんのことが、好きです。私とお付き合いしてくれませんか?」
投げかけられた言葉は僕の予想通りだった。そうくるだろうな、と思っていても何故か胸がズキズキと痛みを訴える。
認めたくない。この痛みを認めてしまったら、それは―――
唇を噛む僕の耳に届いた返事。
「悪いけど、好きな奴が居る」
微かに聞こえていた喧騒も、鳥の鳴き声も。全てが遠くなる。すぐそこに立っている藤堂が、知らない誰かのように感じて。黒髪も相まって、さながら別人だ。
「……そっ、か…友達、にはなってくれる…?」
「ん…まあ」
よろしくね、と痛みを堪えた顔で笑って女子生徒は去って行った。
友達。
自分と藤堂は、果たして友達なのだろうか。
スタートラインにも立てていない状況に、抱くのは焦燥感。
(…スタートライン?)
何の?
目を瞑ると、浮かぶのはこれまでの日々。確かめるように、ひとつずつ。いつしか大切な存在になっていたその宝物は―――…
パチンと泡が弾ける。
(………すき、だ)
嫌いで仕方が無いと思い込まなければいけないほど、惹かれていた。いつの間にか好きになっていた。
抜けるような青空を見上げて自覚した、生まれたばかりの初恋は―――行き場をなくして萎むしかなかった。
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