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14.
ところ変わって、教室。ホームルームを任された僕はひとつ咳払いをした。
「じゃあ、文化祭の実行委員を決めます」
ぐるりと見渡せば、嫌でも視界に入る藤堂。金髪が目を引くことはなくなれど、その容姿は変わらない。まるで興味がなさそうに窓の外を眺めている。
「やりたい人?」
申し訳なさそうに俯く女子、目線を合わせまいと必死な男子。気づかれぬように小さくため息を吐いて、[委員長]の文字の下に[正木 司乃]を書き込む。やや遅れて起こるまばらな拍手。ここまでは予想済みだ。
「副委員は―――…」
想定外。その一言に尽きる。
募る言葉を発しながら振り返れば。すっと伸ばされた手を辿って、見間違いかと瞬いた。
「あ……ええと、質問?」
これまでの工程に疑問があったのかと、そう思ってしまうほどには躊躇いがない様子で。それでいて不機嫌そうな表情の主、藤堂が口を開いた。
「…何。役不足?」
「いや……」
ほら見ろ。鳩が豆鉄砲を食らった顔をしてる周りの人間を。
口から出かかった言葉を飲み込んで、異論が無いか確認する。
「他に候補が居なければ…」
[委員長] 正木 司乃
[副委員] 藤堂 悠真
こうして、文化祭の準備が幕を開けた。
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