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17.
それから数日。職員室から帰る道すがら、色落ちが酷く染め直したばかりの黒髪をがしがしと掻きつつひとり思案に暮れること数分。
(……おかしい)
今まで学校行事とは縁がなかった自分でも分かる。
明らかに、仕事量が少ない。
本来であれば。委員長はクラスメイトと協力し、教室内の飾り付けや練習を指導する。そして副委員は、練習室の予約や諸注意、当日までの流れなど、主に学校サイドとの連携が割り当てられているのだという。
ところがどうだ。会議、ミーティング、集会。行く先々で我らが一組の打ち合わせは済んでいると追い返されるばかり。
(アイツ……)
考えられる人物の顔を思い浮かべてため息をつく。全くこの歳からワーカーホリックの気 があるとは、さすが日本人というべきか。
問い詰めようと辿り着いた放課後の教室。
「おい正木――」
「あ、藤堂くん」
残る数人の女子が一斉にこちらを向く。見渡せど目当ての人物は影も形もなくて。
「委員長なら先に帰ったよ」
「え?」
いつもは一番遅くまで残るというのに。珍しいこともあると訝しむ俺に、眉を下げた別の女子が続ける。
「ちょっと体調悪いって言ってたから…心配だよね」
「やっぱり衣装のこととか、ほら…」
ひそひそと紡がれる内容に違和感を覚え、無言で先を促す。目配せし合った彼女達が切り出したのは、これまた頭を抱えたくなる内容だった。
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