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21.
…と、まあ。流れで正木を抱きしめてしまった翌日。
俺達の何が変わったかといえば――特に何も。それどころか。
「正木くん、ここってどうやって縫ったら良いかな?」
「委員長ー!この台詞ってさー」
クラスメイトと、本当の意味で打ち解けられた彼は幸せそうな顔でその中心に居る。
自分がけしかけてそうしたとは言え、まざまざと見せつけられてしまうとやはり面白くない。
(あー……ちゃんとするか、告白)
そう。勘違いでなければ、きっとアイツも俺のことが好きで。ほぼ両想いだというのに、動けないのは。きちんとした言葉が無いからなのではないか。
しかしながら告白をすることに縁が無いまま過ごしてきたせいで、さっぱり分からない。せめて文化祭が終わるまでにどうにかしなければ…と考えながら作業に戻った。
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