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22.
「はあ!?インフルエンザ!?」
文化祭当日。陽が登って間もない教室に、落胆の声が満ちる。
「そう、だからどうしても来られないって…」
「マジかよ、よりによって…なあ?」
「うん……王子役、だもんね…」
王子役のクラスメイトがインフルエンザにかかってしまったらしい。端役ならまだしも、準主役となれば削るわけにもいかない為、どうしたものかと歯噛みする。
「悪い、遅れた」
「あ、藤堂くん!おはよう」
ガラリと扉をくぐってきた藤堂を目にとめ、近寄ろうとする。が、それよりも早く数人の女子が取り囲んだ。
そして口々に状況説明を始める姿を見ながら、チクリと胸を刺す痛みを逃そうと深呼吸する。
(…まだ、ちゃんと)
ちゃんとした言葉を、貰えていない。きっと気持ちは自分に向いているはず、だけれど、もしかすると勘違いなのでは…と、ふとした瞬間に疑念が首をもたげる。
今はこんなことを考えている場合ではないというのに。勢いよく首を振った。
「…っ、みんな!大変!衣装が――!!!」
駆け込んできた女子の悲鳴が響いたのは、その直後だった。
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