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大騒ぎの教室を後にし、向かったのは屋上。続く階段に奴らは居た。 「……やっぱり。お前らか」 「お!真面目ちゃんにシフトチェンジした藤堂くんじゃ~ん、なになに、問題でも?」 先の演説で、食ってかかってきた反分子とその取り巻き。主格の男がニヤニヤと笑う。 恐らく――いや、十中八九の確率で騒動の原因。 「衣装、何処へやった」 「衣装?さあ…何のことだか……っ、!」 襟首を掴んで捻り上げれば、息が詰まったのか瞠目する。ああ、きっと今俺は凄い形相をしていると分かっていても止められなかった。 「…安心しろ。お前らの小狡い策略なんかで台無しになるようなクラスじゃねえよ」 そう、今の一組は。以前ならば確実に崩壊していただろう。鼻で笑って離れれば、舌打ちと共に「せいぜい頑張れよ」と捨て台詞が降ってくる。去りゆく背を睨みつけ、(きびす)を返した。 教室に近づくにつれ、何やら興奮した女子の声が途切れ途切れに聞こえてきた。耳をそばだて、扉に手をかける。 「――すごいよ、正木くん!」 「白雪姫も惚れちゃうね!」 おや、と思い扉を開いた先には。 髪をセットされ、眼鏡を外し、軽く化粧を施された正木が。「あ、藤堂」と笑うその相貌は、好意を抱いている身としては刺激が強すぎた。 ずんずんと近寄り、傍らの眼鏡を無理やり元の位置に戻す。目を白黒させる彼に 「……裸眼じゃ動けねえだろ」 と言い放てば、化粧後に眼鏡は掛けるつもりだったらしい。のんびりとした言葉が返ってくるものだから、自らの行動が急に恥ずかしく思えてきて。ふ、と浮かべた微笑みに見透かされているような追い討ちを受け、首を振った。 「やっぱり俺がやる。代役」 「え!?藤堂くんが!?」 「で、でもお前台本…覚えてないんじゃ…?」 「けど藤堂くんの王子様、見たいかも…」 ひそひそと交わされる声に、ひとつ頷く。 「ああいうタイプは実力で捩じ伏せるしかないんだ。認めさせれば衣装も戻ってくる」 「??」 「演劇のコンテストとかあったっけ…?」 推察するに、衣装を破壊する度胸は持ち合わせていない。おおかた隠しているだけなのだろう。 今から自分が完璧な代役となれば。圧倒的な力の強さ、優秀さを見せつけて――誇ってこその、安泰というものだ。 押し切った俺を王子にすべく動き出した教室で、正木だけが複雑な表情を浮かべていた。

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