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ややあってこちらを向く藤堂。先ほどまでの飄々とした態度はなりを潜め、真摯な瞳を揺らしていた。 「俺も同じように思ったから。眼鏡かけさせたのもそうだけど、素顔のお前は知られたくなくて。王子、やれば…色んな奴の目に触れるだろ」 その真意を咀嚼し、僕はある結論に至った。 「もしかして…王子様やりたかったから代わったんじゃない、ってこと?」 恐る恐る尋ねれば、当たり前だと呆れ声が降ってきた。 「まぁ、あいつらを黙らせるっていう目的もあったし……でも、うん…一番は、それ…かな」 歯切れの悪い言葉に隣を見ると、俯く表情は窺えないものの、髪から覗く耳が僅かに染まっていた。夕陽のせいにしようと思うが、意識してしまえば急にこちらも気恥ずかしくなって。 「……かっこつけ」 うっせ、と噛み付く彼に笑って空を見上げた。格好つけたがり、といえば。 「みんなの前で泣いた時も隠してくれたし。不細工な顔が見えないように庇ってくれたのかなって」 「あー…だから、それも」 見せたくなかっただけ、だと小さい声で呟いた藤堂。まさか、泣き顔を?もう驚くやら可笑しいやらで笑いが止まらない僕に、ひどく恨めしげな視線を寄越してくる。 「っ、ふふ…まだ、あるんだけど」 「あ゛ーーーマジかよ…勘弁してくれ……」 耳を塞ぎつつ、赤子がむずがるように首を振った彼から目線を外す。ふう、と深呼吸をひとつ。これはきちんと確認したい。 「…みんなに協力してほしいって、教壇で伝えた時。もっと前から全員に話してくれてたんだって?」 女子から聞いたと続ければ、がしがしと後頭部を掻く藤堂。「黙ってたのに、あいつら…ったく」と独りごちてため息を吐く。 「……恥ずかしいだろ、そんな必死になって」 不貞腐れたように頬杖をつくその横顔が、ふと堪らなく愛おしいものに感じられた。だからきっと、今ばかりは少し素直になれる気がして。 「ありがとう。……すごく、嬉しかっ、た」 急な感謝の意に瞬いた藤堂は、それでも緩やかに笑ってくれる。 「ちゃんと自分の口で言ったからだろ。じゃなきゃ伝わらないさ」

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