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第45話*

 帰ったらセックスしたいな。そんな期待と欲を持ちながらの帰り道は照れくさい。  僕はテイラー・スウィフトやアリアナ・グランデやジャスティン・ビーバーなどのポップスをランダムに掛けて、窓の外を見続けた。 「景色ばかり見て。俺の顔は見てくれないの?」  赤信号でサイドブレーキをかける音がした。振り返ったら周防はまるで、その玉子焼きひとつちょうだい、みたいな自然な仕草で唇を突き出していて、僕は素直に唇を触れ合わせる。キスする瞬間はいいけれど、離れて互いの視線が合うと照れくさい。 「ただのバカップルだ」 「付き合い始めのときしか味わえない甘さだ。しっかり味わっておきたい」  周防はキスを奪うだけ奪って、タイミングよく青に変わった信号に合わせてサイドブレーキを解除して、ハンドルを操作すればいいけれど、僕はやることがなくてまた窓の外を見続ける。  同時に帰宅したのに、玄関で「ただいま」と「おかえり」を交互に言いあってキスをして、風呂の中でも髪や身体を洗いあっては「ありがとう」、「どういたしまして」とキスをした。  周防の脚のあいだに座って、透き通った湯で身体を温めている時間も、僕と周防はキスを繰り返した。 「僕たち、キスの回数が多すぎない?」 「今まで我慢していたぶんを取り返してるだけ」 「そっか。それなら仕方ない」  僕は周防と向かいあい、首に腕を絡めて、出会った日から今日までのことを思い出しながら、自分の唇を周防の唇に押しつけた。 「周防の唇、めちゃくちゃ柔らかい」 「徹底的に力を抜くのがコツ。佐和もしてみて」  唇の力が抜けるのと一緒に身体の力まで抜けて、周防の腕に支えられながらキスの練習をした。 「佐和の唇、柔らかくて気持ちがいい」 周防が褒めてくれる頃には、ふたりの身体は熱くなっていた。  ベッドへ倒れ込み、周防は月色の間接照明を真珠色に光らせて、三日月のクッションは壁際の椅子の上に移動させられてしまった。 「慣れてたから、ちょっと心許ない」 「俺を抱き締めればいい」  仰向けになった僕の身体へ周防が覆い被さってきて、耳に口をつけた。 「愛してる」 何のノイズも聞こえなくて、僕は安堵して目を閉じる。 「佐和、『愛してる』は?」 「ん……愛してる」  金属音に邪魔されることもなく、僕たちはたくさん『愛してる』と互いの耳へ囁き合った。     囁きあいながら、手は互いの肌を撫で回す。僕は周防の胸の粒を探り当て、指の腹で捏ねて、周防も僕の胸の粒を探り当ててつまんだ。 「ああっ、気持ちいい……」  僕は素直に陥落し、周防もときどき目を細めていた。 「周防も気持ちいい?」 「ああ」  そう言って口許に笑みを浮かべる。周防は男らしくかっこつけようとして、ちょっと我慢しているように見えた。 「僕は、男だって気持ちよかったら、たくさん声が出るって知ってる。もっと一緒にエッチなことをして、恥ずかしくて気持ちよくなろう?」  僕は逆さまの横向きに寝て、周防の胸の粒にキスをした。 「うっ」 「言っておくけど、僕は本当はとてもエッチだからね。恥ずかしいのを乗り越えたら、次の日、周防が仕事中に思い出すだけでいっちゃうくらい、エッチだから」  ハッタリをかまして、僕は周防の胸に吸いついた。舌でなぶるとぷつんと硬くなって、小さな粒の感触が舌先にころころ触れて楽しい。 「ん……っ、佐和」  僕は唾液を啜って音を立てながら、周防の乳首をしゃぶった。周防も顔の前にある僕の乳首を指で撫で、乳暈ごと口に含む。きゅっと吸い出されて乳首が尖り、そのままねろりと舌が這って、僕の胸の粒はころがされた。 「はあっ、周防……」 お互いの胸の粒を撫でたりつまんだり、舐めたり吸ったりしながら過ごして、気持ちよさといやらしさで、下腹部に血液が集まってくる。  胸に受ける刺激に喘ぎ、下腹部の茎が痛いほど張り詰めて、僕は顔を上げた。周防の興奮も赤黒く脈打って、先端が少し濡れて光っていた。  僕は泳いで浮上するように周防の下腹部まで移動し、力強い茎を握って口に含む。 「う……っ、ん。ああっ」 周防は身体を震わせて声を上げ、僕は嬉しくなって喉まで周防の分身を含み、唾液をたっぷり絡めて舐め回した。広げた舌を裏筋にあて、唇の輪で扱いて、周防の快感を誘い出す。 「ああ……佐和……」  うっとりした声を上げた周防は、僕の茎に指を絡めて遊び始めた。先端に口づけ、舌先で舐めて、それだけでも僕は暴発しそうになる。負けないように口淫していたら、周防が仰向けになった。促されて僕は周防の顔を跨ぎ、前も後ろも恥ずかしい場所を全部周防に見せながら口淫を続けた。  周防の指が、僕の興奮した茎をゆるゆる扱き、同時に双丘を反対の手で撫で回してから、すうっと谷間を辿って蕾に触れる。ローションが塗りつけられて、ゆっくりと撫でられた。 「ん……すおう……」 僕の口からは甘い声が洩れる。充分すぎるほど撫でてから、周防の指先が入り込んだ。 「柔らかい。絡みついてきて、奥へ奥へ飲み込まれる」  周防はすぐに2本目の指も差し込んで、僕の腹腔内を優しく探った。 「あっ!」 「ここ、気持ちいい?」  クルミ大の膨らみをそっとそっと突き上げるように押して、それだけで僕の茎の先端からは透明な液が垂れて、茎の先端と周防の胸をつないだ。 「あんまりしないで。出ちゃう」 「出ちゃだめか? 気持ちいいのは嫌い?」 「僕だけいっちゃう……」 「いっていいよ。佐和のことは何度でもいかせてあげたい。俺が明日仕事中に思い出していくくらいエッチになってくれるんだろう」 「周防は気持ちよくない」 「俺は最後にちゃんといく。佐和の中で気持ちよくなるから。……ほら、いって」  すうっと優しく撫でられただけに思えた。それなのに僕の身体からは快感が押し出された。 「ああっ!」 周防の胸にだらりと白濁をこぼし、残滓をさらに下腹部へ潜り込んだ周防の口に吸われて、僕の腰は跳ねた。  周防は起き上がり、胸にこぼした白濁も指ですくって舐めた。呆れて見ている僕にウィンクした。 「ロマンチスト!」 「佐和と一緒にいる限り治らない」  僕の身体をそっと横たえ、周防はそっと覆い被さってきた。 「愛してる。ずっと一緒にいたい」 「ん……僕も。周防とずっと一緒にいたい。愛してる」 抱き合って互いの頬にキスをして、さらに唇同士も触れ合わせてから、周防は僕の脚を開いて、さらにローションを塗り足し、薄膜で覆った己にも塗りつけて、ゆっくり侵入してきた。根元まで収め、馴染むを待ってから、抽挿を始める。周防の腰つきは生唾を飲むほどいやらしく波打った。 「ああ、気持ちいい……」  周防は目を閉じて僕の身体を楽しむ。僕も周防との摩擦を楽しみ、湧きあがる快感を目を閉じて味わった。 「んっ、んっ、んっ……周防……すおう……」  身体がふわふわして、このまま集中したらいっちゃうかも、と眉間に力をこめたとき、そっと抱え起こされた。  あぐらをかいて座る周防と向かい合って座り、視線を絡めてキスを交わす。キスは次第に深くなり、互いの舌を絡めながら、僕たちは腰を揺らして、気持ちのいい場所を擦りつけあった。  もやもやしていた快感は、鋼鉄のトゲのように強く鋭く僕たちを貫き始め、キスの合間に息継ぎをしては、快感に耐えるためにまた口を合わせた。 「あっ、やあっ、周防っ!」  周防は僕の脇腹に両手を差し込み、親指の腹で乳首を捏ね始めて、僕はあまりの気持ちよさにたくさん腰を振った。 「あ、もぉ、やっ、いく……いっちゃう……」  泣きそうになりながら訴えたら、周防が僕の顔にたくさんキスをした。 「苦しい? いくか、そろそろ」  僕は頷き、周防は僕を抱き締めて自分の腰へ押しつけ、最奥をゴツゴツと力強く突き上げてきた。 「あっ、あぁっ、いく、いく。すおう、いく……っ」 言葉を紡ぐこともできなくなって、僕はひたすら遂げることを望んで、何度も息を詰めて集中した。 「佐和、ああ、愛してる。愛してる、佐和。俺もいく。あぁ……佐和っ!」 「はあんっ! 周防!」  がつんっと突き上げられた衝撃で、僕は全身から炭酸水を噴き上げるように絶頂した。  雲の中を漂うようにふんわりしていたら、汗ばんだ周防の身体にしっかりと抱き締められて、僕たちは最後まで余すところなく快感の余韻を楽しんだ。 「佐和、愛してる」 「僕も。周防のことを愛してる」  一生、こんなことをしながら周防と生きていくなんて、僕はとてもいい人生を選んだと思う。

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