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【番外編】恋とは、まことに付き合いにくい感情であった。(43)
「僕、バリエーションが少ないんだよね。マンネリになる」
佐和は苦笑しながら俺に覆い被さり、顔中にキスの雨を降らせてくれる。さらには手櫛で髪をかきあげ、こめかみにもキスをひとつ。露わになった耳に甘い息を吹きかけ、舌先で形を辿る。その間にバスローブのベルトは解かれた。
「いつもと同じ手順で料理するから、いつもと同じ美味しさになるってこともあるだろう。マンネリこそ王道だし、安心感につながる」
「お袋の味みたいだね」
「明日は、佐和の好きなナスの揚げ煮をたくさん作っておくと言ってた」
「嬉しいな。周防のお母様のナスの揚げ煮は、茗荷がたっぷり入っていて美味しい……明日のことを考えたら、緊張してきちゃった」
潰れてきた佐和を抱き締め、俺は苦笑して佐和の頬へ音を立てたキスをした。
「仕切り直し。ベッドへ行こう」
ベッドサイドに立って抱き合い、キスを交わしながら互いのバスローブを手探りで脱がせあった。直接触れ合う身体はしなやかで弾力があり、互いの腹には相手の興奮が触れる。
俺は佐和の頬を両手で挟んで、真っ直ぐに目を見て告げた。
「愛してる」
佐和は頬を挟む俺の手に自分の手を重ね、目を閉じて、俺の言葉を全身にしっかり染み込ませてから目を開けた。
「僕も、愛してる」
俺は佐和を抱き締め、その言葉を自分の身体へ染み込ませた。
ベッドの端に腰掛け、互いの腰を抱きながら、キスを重ねて気持ちが盛り上がってくるのを待つ。
唇を触れさせるだけのキスは次第に湿り気を帯びて、互いの吐息を吸い、唇を食べ合うようになる。
やわらかなゼリーを啜るように舌を吸うと、佐和が甘い声を上げた。
「ん……」
官能的な声を合図にベッドに倒れ込む。
俺たちは見つめ合い、互いの髪を撫でながらキスを繰り返す。
佐和が微笑み、俺は蕩けるような気持ちになって佐和に食らいつく。
「愛してる……愛してる……佐和」
自分の気持ちを佐和の身体へねじりつけるように、全身に口づけた。
「ん……ああ、周防……っ」
火がついた佐和の身体は、どこもかしこも過敏になって、俺の唇が触れるたびに小さく震えた。
佐和の手は俺の頭を抱いていたが、息を吐く度に鼻にかかった声を出すようになった頃、誘導するように動いた。俺は素直に胸元へ移動し、佐和の顔を見上げて訊く。
「ここ?」
「ん……して」
火照った顔で熱い息を吐きながら見下ろされて、俺は全身が熱くなるのを感じながら、がっつくのをこらえて、ふうっと息を吹きかけ、唇で啄んで焦らした。
佐和は俺の髪をかき混ぜながら、小さく身体を揺らした。
「や。すおう。もっとして……もっと」
「もっと、どうしてほしい? 具体的に言って」
指先で粒を捏ね、つまんで揺らしながら佐和に言葉を促す。
「あ……っ、や……」
「言わなきゃわからないよ、佐和。言えないなら、やめようか?」
佐和は枕に後頭部を擦りつけて、頭を左右に振る。
「やだ。して、周防。く……口に含んで。舌で、飴玉みたいに転がして」
「よく言えました」
佐和は羞恥の余り両手で顔を覆い、俺は赤く尖った胸の粒を口に含んだ。
「はあっ、すおう……きもちいっ」
泣き声にも似た切なく甘い声がベッドの上に満ちる。反対側の胸の粒を口に含みながら、唾液に濡れた粒を指でつまむと、佐和は身体を震わせた。
「あ……や。いきたくなっちゃう……っ」
「どうぞ」
佐和の腰を抱き、膝で深く佐和の膝を割って、佐和の興奮を自分の太腿へ押しつけさせた。
「やだ。やだ……恥ずかしいっ」
俺の蕊を飲み込んで腰を振るのは平気なくせに、ひとりで揺れるのは恥ずかしがる。
胸に吸いついて舌先でなぶり、反対側の粒もつまんで捏ねて強引に快感を与えた。佐和は我慢できずに腰を振り、俺の太腿に擦りつける。
「はっ、ああ……きもち……い……っ。いきそうっ、いくっ」
佐和は全身を震わせ、のけぞって達した。
胸に耳をあて、どくどくと激しく動く心臓の音と、せわしなく繰り返される呼吸の音を聴く。
「来て、周防」
「もう? 平等に反対側でもいこう」
胸の粒をつまんだが、佐和は首を横に振った。
「欲しくて我慢できない。奥まで来て」
そのまま俺は押し倒され、油断して柔らかくなっていた蕊を口に含まれた。
「あっ、佐和……っ」
温かくて柔らかな粘膜に包まれて、血液が集中していくのがわかる。たった一点への刺激に全身が支配されて、身体の力が抜けていく。
「ああ、佐和。気持ちいい」
茎の根を握り、唇を窄ませて頭を前後させる佐和の姿を見る。赤い唇が濡れてぬめぬめと光り、その卑猥な光景にさらなる欲が湧き上がる。
「佐和、逆さまになって」
ためらう佐和の腰を掴んで、自分の顔を跨がせる。色づいてひくつく秘所へローションを塗りつけ、そっと指を押し込んだ。
「あっ!」
熱くうごめく襞を撫で、指の腹で探り当てたしこりを撫でる。佐和は口を離した。
「ダメっ、ソコ……そんなにしないで。口で、できなくなっちゃう」
硬くなった俺の蕊に縋って、泣きそうな声を出した。
「しなくていい。そのままでいて」
尻の膨らみを掴み、揉みしだきながら、俺は佐和のウィークポイントを軽く押す。
「ああっ!」
佐和は容易く吐精して、全身を強張らせた。俺の腹の上に白濁した粘液が垂れて、温みを感じる。俺は指ですくって口に含んだ。
気づいた佐和が悲鳴を上げる。
「それ、やめろってば!」
「美味しい」
「美味しくないっ!」
佐和は俺の蕊を扱いて確かな形にすると、薄膜をかぶせて跨いだ。俺の上体を引き起こし、首に腕を絡めて抱きつき、いやらしく腰を揺らすくせに、意地悪を言う。
「僕の匂いがする口とキスするなんてイヤだからね。キスはしない」
「全部飲み込んだから、もう匂いはしない」
頬にキスしたら、佐和の頬は赤く火照っていた。
「嘘。するよ」
拗ねた声がして、照れ屋さんだなと愛おしくなる。ロマンチックなことが嫌いとか、人に賞賛されるのが苦手とか、一人で腰を振るのはイヤだとか、精液を舐められたくないとか、そういうのは全部、照れから来ている。
照れすぎて本当に苦手なのだろうから、逃げ道は残さなくてはいけないが、愛しあうふたりのあいだには、いくつか照れることがあってもいいと俺は思う。
「ごめんね、佐和。たぶんまた明日にでもやると思うけど、『もうしないって約束するから許して』って言うから、許して?」
「明日? 舌の根が乾かないにもほどがある。せめて三日坊主にして」
ゆるゆると腰を揺らしながら佐和は苦笑し、俺はまた佐和の頬へキスをした。
「わかった。約束する。約束するから、明日は俺の親に『さねおみをください』って言って?」
「モノじゃないんだから、くださいとは言いたくないけど。がんばります」
「俺の王子様。愛してる」
俺は佐和を抱き締め、突き上げた。
「ん、周防。大好き。愛してる。ずっと俺の王子様でいて」
佐和のロマンチックなセリフは、本当に本当に可愛い。このまま可愛いおじさんになって、可愛いおじいさんになってほしい!
凍てつくようにクールな佐和も、もちろん愛しいけど!
変わっても、変わらなくても、俺は生涯全力で佐和を愛する。
俺は佐和を抱き締めて、最奥まで突き上げた。
「ああっ、深いっ!」
伸び上がって逃げようとする佐和の肩を押し込み、強い快感を得る。
先端と壁を触れ合わせたまま、俺たちは腰を揺めかせた。
「あっ、佐和」
腰が蕩けるような快感を追って、夢中になって突き上げる。
「すおう……すおう……も、いっちゃう」
「いいよ、いこう。一緒にいこう」
一度味わったら、達するまで逃れられない快感に夢中になって、俺たちは抱き合い、めちゃくちゃにキスをしながら、腰を振った。
「はあんっ、すおう……いくっ!」
全身を硬直させる佐和の粘膜に絞られて、俺も身体を跳ね上げながら達した。
「佐和っ!」
いつまでも終わらない射精に軽い恐怖を覚えたが、佐和の腕の中だったから、安心して眉間に力を込め、だらしなく顎を落とし、放出の時間を過ごした。
「周防、いっぱい出たね」
「ああ。佐和は満足できた?」
「とっても」
身体から欲が抜けたあとは、もっとも優しい時間が訪れる。
身体を離したいと思うどころか、もっと頭を撫でたいし、キスをしたい。愛しさが溢れ出して俺は佐和の髪を撫で、佐和は俺を抱き締めてくれる。
「周防。愛してる。ずっとずっと、死ぬまで一緒にいられるように、僕は明日、きちんとご挨拶するから」
「ああ。100%承諾しかないから、安心して」
「サワはぼんやりしてるから心配って言われそう」
さすがにもうキキキリンのキ! とまでは言わなくなったが、最近まで軽自動車は軽油で走るから、軽自動車にカテゴライズされると信じていた。業務に支障がない分野の勘違いは、まだときどき面白い。
「スーツを着ていたら信頼感は3割増。大丈夫」
「1番いいスーツを着ていこう」
少し不安げな佐和を、笑顔でしっかり抱き締めて眠りについた。
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