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【1】ファーストコール……③

「俺のチンコにピアスがある。それを……外さないでほしい……」  聞き捨てならない言葉に惣太の眉根が寄った。  ――チンコにピアス?  CTの撮影では金属があるとそれを中心とした放射状の異常な像ができるため、正常な診断がつかなくなる。患者の体に問題が起きるわけではないが、傷病の状態が見えないのであれば検査の意味はない。惣太は心の中で舌打ちした。 「クーパー頂戴」  傍にいた看護師に指示を出す。受け取って男の下着をザクザクと切り刻んだ。サイドを切り込んで布を抜き取ると男の下半身が露わになった。 「わあ、凄いですね」  看護師が声を上げている。  確かに男のモノは大きかった。萌していない状態なのに制汗スプレーの缶ほどの太さと長さがある。下生えも濃く堂々としたものだ。  ――さすが、ヤクザのチンコだ。フォルムにまで凄味があるな。  いや違う。そんなことじゃなくて、ピアスだ。  見た感じ、金属はなかった。男のモノをむんずとつかんで裏向ける。するとピアスの列が現れた。あまりの細かさと数の多さにゾクリとする。隣にいた看護師が、植木鉢を退けて虫が見えた時のような悲鳴を上げた。 「天使の梯子ってこのピアスのことか。くそが。全部外すぞ」  惣太は自分の口が悪くなっていることに気づかなかった。それほど奇妙で気味の悪いピアスだった。牛の鼻につけるような輪っか状の金属が陰茎の裏筋に、それこそ梯子のようにずらりと並んでいる。外し方が分からず苦心していると救急部の技師が声を掛けてきた。 「それってサーキュラーバーベルですよ。丸い球の部分がネジ状になっているので、回すと外れると思います。僕も手伝いますよ」  技師が言うようにU字になっている輪の両端に球状のものがついていて、それを回すと先端がぽろりと取れた。ぐずぐずしていられない。驚く間もなくどんどん外していく。 「全身刺青の上にピアスまで……参りましたね」 「和彫りのせいでMRIに入れられないのは当然だが、こんなもんCTに入れたらインシデントだ。その報告書を書くのも俺だぞ。くそが」  時間がない。惣太はピアスを外しながら次々と指示を出した。 「中央手術部にコールしてバイオクリーンルームを確保して。麻酔科医もだ。器械出しは水名(みずな)さんがいい。彼女は整形外科(オルト)のオペに慣れてる。前立ちは林田でお願いする。第二助手は研修医でも構わない」 「分かりました。すぐに手配します」  ヤクザの男はまだ何か呟いていたが惣太は無視した。

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