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【2】セカンドコール……②

「先生に一つお願いがある」 「……なんでしょうか?」 「チンコのピアスを先生に嵌め直してほしいんだ」  男は真面目な顔でそう言った。  ――は?  チンコのピアスを嵌め直せだと? 「性器ピアスは取った瞬間から塞がり始める。もう、嵌められないかもしれない」  男は物憂げな様子で俯くと、すっと瞼を閉じた。その横顔に憂いと哀愁が滲み、背後に美しい花々が見えた。タイトルをつけるならシチリア島の午後だ。  ――なんだこれは? わざとか、この野郎。  一瞬、殴ってやろうかと思った。こっちはぐちゃぐちゃに挫滅した脚を練乳だけのエネルギーで治したんだぞ。そのくそみたいなピアスを外して。 「いいですか。あのピアスはERが責任を持って処分しました。どうか諦めて下さい」 「諦める……」 「タトゥーやピアスといった文化を否定するわけではありませんが、医師として言わせて頂くなら、性器のピアスは不衛生な上に感染のリスクがあり、非常に危険です。装着時もそうですし、性行為中もピアスでお互いの粘膜に傷がつくため、性感染症のリスクが高まります。これを機会にやめることをお勧めします。もちろん伊武さんの体のことを考えてのアドバイスです」 「…………」 「あくまで個人の趣向なので強制ではありませんが、あのようなピアスは審美的に美しいとは思いません。それに、美しさの主張や性行為というのは持って生まれたもので勝負するべきです。ありのままであることが一番大事です」  ヤクザはすぐに性器を加工したがる。亀頭に真珠やシリコンを入れたり、竿に非吸収性の注入剤を入れて嵩を増やしたりもする。全く馬鹿馬鹿しい。 「ありのまま……」 「そうです」 「そうか……。まさか、ピアスで怒られるとは思ってもみなかったが……先生は優しいな。それに、しっかりと自分の意見を持っている」 「いえ。ありきたりで常識的な意見です。それに伊武さんのペニスは立派だったので特に盛る必要はないと思いますよ」  ――ペニスが立派?  何を言っているんだ、自分は。言葉が耳に入って我に返った。  頬がカッと熱くなる。 「先生に褒めてもらえるとは光栄だ。それに、あの優しい指の感触は先生だったんだな。ああ、思い出した……そうだ、そうだった」  伊武はなぜかうっとりした顔をしている。 「と、とにかく、ピアスはこのまま装着せずに穴が塞がるのを待ちましょう。それより、脚の回復に努めて下さい。しばらくの間は安静ですよ」 「分かった。先生の意見に従おう。チンコの穴が塞がったら問題がないかどうか、先生がそれを確認してくれ」 「……分かりました」  どうせ尿カテを抜去する際にこの男のチンコをもう一度、握らないといけないのだ。  ――なんか生温かいナマコみたいだったな……。  遠い目をする。  惣太は適当に返事をして伊武の病室を出た。

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