6 / 13

第6話

 時々俺の生活を手伝いに来てくれる楔の話によると、屋敷には俺たちみたいな少年が五人ほどいるらしい。俺が彼に一番年が近くて、人数は増えたり減ったりするらしいが。他の少年は部屋に監禁されていて、屋敷内を自由に移動できるのは楔だけのようだ。目が見えないから、逃げないと思われているのかもしれない。  玉髄が他のやつのところに行っている間は俺はお役御免で気楽なものだった。最初はそれなりにショックだったが、慣れてしまえば、それほど悪い仕事でもなかった。  あいつは確かに楔が言うように、気まぐれで残酷になることがあった。それでも、事前に出される茶になにか薬が混ぜられていて、それがあればあとで傷が痛んでも最中は痛みを感じなかったし、最中は馬鹿みたいに気持ちよかった。  でも、あまりあれは飲まない方がいいんじゃないかと俺は思った。<王国>で皆が噛んでいたカーファと同じだ。しばらく飲んでいないとイライラするし、気持ちが落ち込む。  回数を減らしてみようと思って目が見えない楔の前で一度飲んだふりをして茶を捨ててみたが、そのときの仕事は最悪だった。あいつに少し触られただけで吐き気がして、いつもと同じふりをするのにめちゃくちゃ苦労した。  このままの生活でいいのだろうか……。  俺は、ここに来た次の日の夜のことを思い出した。<王国>から俺を連れ出したあの金髪の男が、部屋の窓の外に来たのだ。  部屋の窓の位置は高くて鉄格子がはまっていて、彼の髪の上しか見えなかったが、声に聞き覚えがあった。 「小僧、おまえは生きたいか」  おまえは何者なんだと聞きたかったがひそめられた彼の声は緊迫感に満ちていて、俺は余計なことを喋ってはいけないと思った。 「生きたい」  それは、俺にとってはいつも自明の問いだった。俺は生きたい。生きて親に会って、自分が何者なのかを見つけ出したい。 「じゃあおまえの力で生き延びろ」  窓の鉄格子の隙間から、折りたたんだ薄いナイフが投げ込まれた。 「俺はこの屋敷の向かいの、緑の屋根の家に寝泊りしている。それであいつを殺してここを出られたら、誰にも見られずに俺のところに来い。そうしたら逃亡を手伝ってやる」  俺は慌てて、ナイフを拾って寝台の下に隠した。色々尋ねたかったが、彼の頭はもう見えなくなっていた。  俺は、隠したナイフを取り出して、そっと指先に押し当てた。血の玉ができて、指を滑り落ちる。切れ味は悪くない。  <王国>は出たかった。今はそこを出て、一応生活の心配はなくなった。屋根のあるところで寝られるし、食事も与えられるし、変だけど服もある。でもこれは違う。これは新しいところに囚われただけだ。俺はどこにもとらわれたくない。このまま、あの薬を混ぜられた茶を飲み続けていたら俺はなにも考えられない人間になってしまう。<王国>でカーファを噛み続けていたやつらと同じだ。偽りの幸福に溺れて、現実を見なくなる。  俺は外に出るんだ。

ともだちにシェアしよう!