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第3話
琥珀の腕にも入れ墨はあるが、場所も、柄も違う。
「ああ、坊やはこれも珍しいのか?」
彼は俺のぶしつけな態度にも怒らず、肩をすくめて言った。
<火の一族>は、入れ墨を入れているひとが多い。それは俺も知っていた。俺が気になったのは、そうではなくて、夢で琥珀をあんなふうにしていたのは、このひとなのではないかということだった。でも、それを説明できる方法はなかった。
「入れ墨って、入っているひとと、いないひとがいますね。場所や、柄も違うし」
俺は、とりあえず、頭に浮かんだことを言う。メルーは俺が興味を持ったと思ったのだろう。袖を肩までめくりあげて見せてきた。
「成人の試練に参加する子供だけが、その前に心臓に入れ墨を入れるんだ。そのあとは、階級によって増やしたりする。ちょうど来週から祭りが始まる。興味があれば、坊やも試練に参加すればいい」
「俺も、入れてもらえるんですか?」
俺はびっくりして聞いた。だって、俺は<火の一族>じゃないと思っていたから。そんな、大事な試練に参加できるとは思っていなかった。
「誰でも参加すれば仲間さ」
彼は俺にむかってウインクする。
「そうなんですか」
彼の言葉は俺の胸をときめかせた。だって俺は、今までいつも琥珀と同じじゃないことがいやだった。それが、試練に参加すれば<火の一族>に入れてもらえるなんて。
「メルー、余計なことを言うな」
たしなめるような琥珀の声がして、俺は彼を振り返る。
琥珀は明らかに不機嫌そうだ。
「琥珀、怒ってますか?」
「怒ってはいない。でも灰簾、おまえが試練に参加したいと言うなら、俺は反対するよ」
「どうして? よそ者はいやですか?」
琥珀が答える前に、メルーが口を挟んだ。
「エトナ、せっかくの人材だ。こいつはおまえになついていて、見た目は<石>のやつらに似てる。こっちにつけた方が、役に立つだろ?」
「こいつは、そういうんじゃない」
メルーは驚いたような、でも楽しんでいるような声を上げた。
「エトナ! おまえは本当に、随分この坊やがお気に入りなんだな!」
琥珀は何かを言いかけて、口ごもってしまう。何を気にしているのだろう?
メルーはそんな琥珀の態度に苛立ったように、琥珀の肩を抱いて自分の方に引きよせると、琥珀にささやいた。俺はまた、そんな親しげなふたりが気になる。
「おい。本当に、そいつで足元を掬われないようにしろよ?」
「そんなことはない」
「どうだかな」
琥珀は結局、それについてはもう何も言わず、はぐらかすように俺たちを食事に誘った。
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