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第9話
琥珀の喉元から、熱いため息と共につらそうな声が漏れる。俺はびっくりして、思わず琥珀を見た。
「ごめんなさい、大丈夫ですか?」
目が合うと、琥珀は上げた俺の頭を撫でる。
「大丈夫、気持ちいいよ。灰簾」
「気持ちいい? 本当ですか?」
「本当だよ。怖がらなくていい。おまえがいやじゃなければ、俺はおまえにそうやって触られるのが好きだよ」
それを聞いて、俺は思わず泣きそうになった。俺も、琥珀にこうやって触られるのが好きだった。琥珀はやさしく、ちょっと濡れてしまった俺の頬を撫でて、それからそこに口づけた。
琥珀の唇は温かくて、俺の心も温かくなった気がした。
「琥珀、俺はあなたに恋しています。俺はあなたが一番大切です!」
俺は気持ちがあふれて、横を向くと頬に触れていた琥珀の唇に、自分の唇を押しつけた。勢いで彼を寝台に押し倒してしまう。それでも我慢できなくて、俺はがむしゃらに唇を押しつけた。
塩味がした。俺はそんなに泣いているんだろうか?
「わかってる」
唇が離れた瞬間に琥珀がささやいた。でもすぐ再びくっついた唇の間に、言葉が消えてしまう。
「……ん、ぁ…」
琥珀の舌が俺の口の中に入ってきた。気持ちいい。気持ちがいいけど、ぞくぞくしてどうしていいかわからない。寒いときみたいな、でも体中熱いみたいな。
「あ……!」
俺の下着の中の一番熱くなっていたところに琥珀の手が触れて、俺は思わず声を上げた。
「いやじゃないか?」
琥珀はやさしく指先で先端を撫でながら、俺に尋ねる。いやじゃない。俺は首を振った。
「もっと、触ってほしいです」
「ん、」
やさしく丁寧な口づけとともに、琥珀の指も丁寧に俺の下半身を愛撫した。うっとりする。
「俺が、後ろを向くのは大丈夫?」
しばらく愛撫してから、琥珀は窺うように俺を見た。
「えっと、はい」
彼はするりと俺から離れると、体を回転させた。膝を曲げて、四つん這いのようになる。そうして、自分の指で隠されていた場所を俺に向けて押し開いてみせた。
「俺のここに擦ってみるか?」
「え……」
言われたことを理解して、俺はまた興奮した。思わず、彼を後ろから抱きしめる。示されたところに、俺の先端が触れた。俺は思わず、声を漏らしてしまう。
「灰簾。焦るなよ」
「はい……」
彼が体を揺らすのに合わせて、俺の体も揺れた。擦れた人肌が気持ちいい。
「ん……」
やがて、彼も甘い声を上げだした。何度かぶつかりあって、少しだけ、彼の奥に少し濡れだした俺の先端が滑り込んでしまう。
「あのっ、琥珀。もう少し、入れてもいいですか……?」
「いいよ……ゆっくり、な」
「はい…っ」
「ん……!」
琥珀が小さな悲鳴を上げた。
「大丈夫ですか?」
「ああ、……んッ」
俺の侵入に身をよじらせる琥珀の肉体は、奪われることにあまり慣れていないように見えた。初めてではないのだろうに。
まるで処女のような羞恥を見せながら、俺の動きに合わせ、夜に咲く月下美人のように、その蕾を少しずつひらいていく。
「かわいい。きれいだ。琥珀」
俺がささやくと、震えながら彼は恥ずかしそうにする。
「ねえ琥珀、もっと奥まで行っても?」
「ん、ああ…っ、焦らすな、灰簾……っ」
琥珀は今までの余裕を失っていた。まるで溺れたひとのように枕をつかみ、自らの衝動を必死に抑えているようだった。
「琥珀、こはく……っ」
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