68 / 90
光の王 第1話
昔々、この世界にまだ神がいたころ。
<楽園>にいた神は、空から<光の一族>を作った。
<光の一族>は神の半身であり、<王>となった。
神は、<王>に大地から作った<石の一族>を夫として与え、海から作った<水の一族>を妻として与え、炎から作った<火の一族>を愛人として与えた。
<王>は、夫の愛を受けたが、それは一度のみだった。<石の一族>は、<王>の心を満たすことができなかった。
次に<王>は、<火の一族>の<火焔>を受けた。<火の一族>は情熱的で、<王>はそれに夢中になったが、それも長くは続かなかった。<火の一族>の炎は、彼自身にも愛が制御できず、彼自身を燃やし尽くしてしまったからだ。彼らはあまりにも深く結びつき、<王>もまた、<火の一族>がいなければ生きられなくなった。
短い蜜月の間に、<王>はたくさんの夢を見た。<火の一族>は、<光の一族>と深く情を交わすとき、夢を孕ませる力を持つ。
<王>の夢はまた、たくさんの<夢の残骸>である<石>を生んだ。<石の一族>は、<王>の深くに種を植えつける力を持っており、<夢>は<夢の残骸>の苗床となっていた。
妻である<水の一族>だけが、<王>の苗床に潜り、それを刈り入れることができる力を持っていた。<王>の妻だけが、夢を泳ぐ力を持っていたからだ。しかし夢の中で泳ぐことには負担が多く、<水の一族>もまた、長くは生きなかった。
神は気まぐれだった。神は気まぐれに怒り、村や人を消した。それに心を痛めた<王>が神に<夢の残骸>を捧げると、神はその怒りを鎮めた。
<王>はひとりで長く生き、新たな夫や妻や愛人を迎え、<神>に<夢の残骸>を捧げ、<世界>を維持した。
だから、<王>に出会ったときは、最大限の感謝と敬意を示さなくてはいけない。<王>が<夢>を生むのをやめれば、この世界はすべて消えてしまうのだ……。
ともだちにシェアしよう!

