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学園生活11

そんな俺達を見て、鷹宮さんが不思議そうな顔をして首を傾げた。 「2人とも知り合い?」 「…あ、いえ…。鷹宮会長こそ、彼とお知り合いなんですか?」 「あぁ、深君は僕の恋人になる運命の人で、」 「いやならないからっ」 鷹宮さんの言葉に目を見開いたアジアンビューティー君を尻目に、思わず素でツッコミを入れてしまった。 危ない…、本当に危ない…。この人に関わったら、話のネタにされたあげく誤解が雪ダルマ式に大きくなっていく気がする。それだけは、なんとしてでも避けたい。 焦る俺とは裏腹に、当の本人は変わらぬマイペースさで優雅に落ち込んでいる。。 「そんな即答しなくても…」 「事実は正しく伝えないとね。鷹宮さん」 「深君が冷たい…。黒崎なんかと一緒にいるからだよ」 「いや、それは関係ない」 なんかもう『ボケとツッコミ』みたいになってきたけど、細かい事は気にしていられない。 この前の秋の時のように、アジアン君がまた睨むような目付きでこっちを見ているのが視界の端に映る。 これって絶対に何か誤解されてるよな。俺自身は何もしてないはずなのに、ここまで嫌われる要素が思いつかない。 とりあえず悪意のある視線から逃げたい。鷹宮さんの相手はアジアン君に任せて、とにかくさっさと帰ろう。そうしよう。 「飲みたい物がなかったので俺は部屋に戻ります。それじゃ」 早口で言い放ち、隙を与えぬ素早さでクルリと方向転換して足早にロビーを出た。 後ろから鷹宮さんの声がしたような気がするけど、何も聞こえない何も聞こえない…。 自分に暗示をかけながら、部屋に向かってひたすら足を進めた。 side鷹宮 「鷹宮会長、…今の方とずいぶん仲が良いんですね」 「ん?…あぁ、彼は僕の未来のお嫁さん候補だからね、仲良くないと困るよ。そういう君は?面識があるみたいだけど」 「………」 俯き加減に黙る小柄な相手を見て、密かに笑みを浮かべる。 その笑みは、いつも人に見せる優しいものではなく、何かの含みをもたせた冷たい笑み。 …どうせ黒崎絡みで得た情報の中に、深君の情報が入っていたのだろう。 探るように目を細めて相手を眺めるも、その相手が顔を上げた瞬間にはいつも通りの優しい笑みに切りかえる。 「嘘だよ。深君は単なる顔見知り。僕が愛するのはこの学園の生徒全員だから」 嫉妬や妬みで深君に嫌がらせがいくのは本意ではない。 先程の発言は冗談だと口にした瞬間、目の前の相手から力が抜けたのがわかった。 わかりやすいな。 もともと悪い子でないはずだけど、妬心は何をどう変えてしまうかわからない。 「北原君も買いにきたの?もしそうなら奢るよ」 すでにお金が投入されてランプの点いているボタンを指し示して言うと、とんでもないとばかりに手を振られた。 「そんな!会長に奢ってもらうなんて出来ないですよ!ただ通りすがっただけですので、僕は大丈夫です」 いいと言うのなら無理強いする必要もないだろう。 それなら…と、自分の分だけコーヒーを購入した。 出てきた缶を手に取って背後を振り向くと、相手の顔に期待の色が浮かんでいるのが見てとれる。 …しょうがないね…。 「部屋に帰るんだよね?途中まで一緒に行こうか」 「はいっ!」 期待通りだろう言葉を放った途端、想像した通りの反応。 裏がなければこれはこれで可愛いけど、この子達が陰でどういう動きをしているのかを知っている立場としては、純粋な好意として見る事はできない。 いつの間にか自分の中で当たり前になっている、人の裏を探る癖。 いつからだろう…、もう小学生になった時には、周りの自分に対する好意を純粋に受け取る事が出来なくなっていた。 僕の外見、背後にあるもの。まるでブランド品のような扱いに憤りを覚えていたのはもう何年も前。 今ではそれを逆手にとって上手く人を動かせるようになった。けれど、それと引き換えに何か大切なものを失った気がする。 それが何なのかわからないけれど、彼と話すとそれが満たされるような不思議な感情が湧き起こる。 脳裏に思い出す、さっきまでここにいた後輩の姿。 「…何故かな…」 「え?今、何か言いました?」 無意識に出てしまった言葉に、横を歩く北原が反応する。 そんな自分に苦笑いを浮かべ、「なんでもないよ」と優しく言葉を返してロビーを後にした。 side鷹宮end

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