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学園生活27

それを見た真藤は、俺の気分を和らげようとでも思ったのか、張りつめた表情を少しだけ緩めて続きを話し始めた。 「後輩いわく、『真藤先輩って天原って人と仲良いんですよね?あの人、北原先輩に嫌われてるみたいだから関わらない方がいいですよ』…って」 「…な…ッ…」 思わぬ内容に絶句していると、困惑気味に嘆息した真藤に頭をグシャッと撫でられた。 「北原は一見大人しそうに見えても、本性はかなり腹黒い。もしかしたらアイツが何かやらかそうとしているのかもしれないが…、とりあえず後輩にはおかしな事を触れ回るなとクギを刺しておいた。何もなければそのうち噂なんて消える、気にするな」 「…うん…」 気にならない、と言えばそれは嘘になる。それでも、真藤の心遣いが嬉しくて小さく頷いた。 ただ、俺の中ではいつの間にか、北原の言葉=秋の言葉という図式が出来上がっていて、北原が俺のことを嫌っているというなら、秋も俺のことを嫌っているのかもしれない…なんて考えてしまう。 あの時、屋上からおりてきた先で北原に言われた言葉と、この前の秋の突き放した言葉が相当心にダメージを残しているみたいだ。気持ちが沈む。 その時不意に、真藤の腕が伸びてきた。 なんだ?と思ったのも束の間、そのまま首筋に回されてグッと引き寄せられる。 頬に当たる真藤の制服の肩と、触れる体温。 突然の事に慌てて離れようとしても、その腕は解けない。 「ちょ…っ…、真藤」 「大丈夫だ。お前には俺達がついてる」 「………真藤……」 耳元で呟かれたシンプルだけど心にジワリと染み渡る言葉に、抗うのも忘れて全身から力が抜けた。 あ~ヤバイ…、優しさに甘えて抱きつきそう…。 こんな事を簡単にしない真藤だからこそ、今のこの優しさがわかる。 もう少し甘えさせてほしいと思いながらも、そんなわけにもいかず、暫くした後に真藤の腕をポンポンっと軽く叩いた。 もう大丈夫。そんな意味を込めて。 その気持ちはしっかりと伝わったらしく、肩を抱くように回されていた真藤の腕が静かに離れていった。 改めて向き直るとなんだか非常に恥ずかしくなって、真藤の背中を力任せにバシバシと叩く。 途端に不機嫌そうになった真藤を見て、仕返しが来るか!?と身構えたけれど、予想に反して何もされなかった。 それどころか、俺が照れている事がバレてしまったらしく、フッと笑われる始末。 そういう態度の方が余計に恥ずかしいんだけど! ジワジワと熱くなる顔を隠すように真藤を放置して歩き出し、足早に教室へ戻った。 俺とは違って平然としている真藤もすぐに教室へ戻り、何事もなかったように授業の準備を始めている。 相変わらず泰然としてるなーなんて感心していると、なんの前振りもなく突然薫が振り向いてきた。 その顔を見て気がつく。 薫を放置していた事に…。 ヤバイ…、自分だけ仲間外れだとか言って怒るか?闘いが始まるのか? 咄嗟に身構えたけれど、薫から放たれたのは意外な言葉だった。 「フフフ。真藤君ってば、しっかりと深君のお父さん役だよね~」 まるで俺と真藤のやりとりに気がついているかのようなセリフに、思いっきり脱力してしまった。 でも、いくらなんでもお父さんはないだろ、お父さんは。 チラリと盗み見た隣では、こちらの会話が聞こえていたのか、お父さんと言われた当の本人がイヤそうに顔を顰めている。 笑っちゃいけないと思いつつも、込み上げてくるものはどうにもならない。 「笑うなよ、息子」 「…誰が息子だよオイ…」 お父さんと言われるのと息子と言われるのでは、どちらが最悪なんだろう…。 そして、微妙な顔で見つめ合う俺達を見て大笑いする薫。 俺と真藤の額にピキッと青筋が出たのは言うまでもない。 でも気が付けば、昨日から持ちつづけていた暗い気持ちが、いつの間にかすっかり消えている。 二人のおかげ、だな。 自然と顔が緩んでしまった。

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