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学園生活42

†  †  †  † 夏休みも間近に迫ってきた日の夜。 いつもの如く真藤達と夕食を食べてから部屋に戻り、苦しくなったお腹を宥めながらリビングのソファでゴロゴロとくつろいでいた。 でも、くつろいでいる割には眉間に深い皺が寄っている自覚がある。 ここ最近の秋の事を考えると、自然とそんな顔になってしまうんだから仕方がない。 …秋がおかしい…。 おかしいって言っても、頭がおかしいとかそういう事じゃなくて、…なんだろう…、フェロモン系? 何故か最近、秋に対して妙な気恥ずかしさを感じる事が増えてきた。 風呂から出てきた今も、濃灰色のシャツの前を全開にした状態で濡れた髪を拭いている姿を直視する事ができない。 俺がここに来た最初の頃は、もう少しキッチリとしていたように思ったけど、今となってはどうだったのか思い出せない。 秋ってこんな感じだったか?…いや、肌の露出はこんなにしてなかったはずだ…。もしかして俺との生活に慣れてきて素が出てきただけ? それに、距離感も近くなったような気がする。 つい先日なんて、こうやって前を開けた状態で後ろから覗き込んできたりして。 そこに意図的なものを感じるのは自意識過剰なんだろうか…。 クッションを抱えてソファに埋もれながら渋い顔で唸っていると、そんな俺がおかしかったのか、秋が笑いを滲ませながら話しかけてきた。 「なに1人で百面相してるの?変だよ」 「変って…。悪かったな」 いったい誰のせいだと。 理由を知らないのだから仕方がないとはいえ、まるで他人事のような秋を睨んでも、本人は「ん?」と首を傾げるだけ。 どうしてやろうかと反撃方法を考えながら、抱きしめたクッションに口元を埋めてムスッとしていると、突然そのクッションを取り上げられた。 引っ張られたクッションにつられて横へ倒れそうになったところを、暖かな何かに支えられて横転を免れる。 シャンプーの香りと、お風呂に入った後のせいか高い体温。 さっきまで立っていたはずの秋が、奪い取ったクッションを片手にソファに身を乗り出してきていた。 咄嗟に体が動いたのか、俺を片腕で抱きかかえながら片膝をソファに着くという不安定な体勢だったのを、座る事で落ち着ける。そこで「ふぅ…」と安堵の息を吐き出した秋が、申し訳なさそうに笑みを浮かべた。 「ごめん、大丈夫?まさかクッションに引きずられて深まで倒れるとは思わなかった」 そう言いながら、俺を支えていた片手が肩に回されて抱きよせられる。 思わずビクッと固まってしまったけど、それより何より焦ったのは、強めに抱き寄せられたことで体が傾き、いまだに前を開けたままにしている秋の首筋に俺の顔が直接当たった事だ。 小さく笑う声の振動が、直接肌を通して伝わってくる。 「だ…いじょうぶも何も、ここで倒れたって怪我なんてしないから」 これ以上くっついていたら頭が爆発しそうで、思いっきり秋の体を突き放した。その拍子に肩に回された腕も離れたけど、秋の強い視線が俺の事を見たままなのは感じられる。 「…なんだよ」 「深の顔が赤いのは気のせいかどうか考えてる」 「それは間違いなく気のせいだ!」 「そうかな?鏡、見てみる?」 言いきるって事は、俺の顔が赤いってハッキリわかって言ってるよな!? ムスーッと睨みながらも、なんで秋に対してこんなに動揺しているのか自分で自分がわからなくて戸惑う。 「……無意識にこういう事するのやめろよ」 ハッキリ言わないと今後に支障をきたしそうで、いまだに熱い頬を片手で擦りながら文句を言った。もちろん未だに睨んだまま。 きっと『なんのこと?』とか言われるんだろうな…。

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