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冬休み3
必死になって食い下がる自分に、ようやく気付いた本当の気持ち。
こんな事になって初めて気付いた自分の気持ちに、今更ながらに胸が苦しくなる。
この気持ちを咲哉に知られたくなくて、気付かれたくなくて、俯いて深く息を吸い込んだ。
咲哉の言う『条件』がなんなのか…。厳しくても絶対にクリアしてやる。
新たに意気込んで顔を上げた。と同時に、その条件が宣告された。
それは……、俺の、思いもしなかった内容で…。
「…な…んだよ…、それ…」
「聞こえなかったのならもう一度言おう。部屋を変更しない代わりに、お前が完全に俺のものになると…、それを誓うというのが条件だ」
絡んだ視線すらも逃がすことが出来ないほど強い力を放つ咲哉の双眸。
さっきまで咲哉の腕を掴んでいた俺の手首が、いつの間にか逆に握りこまれている。
…たったいま、秋が好きだと気付いたばかりなのに…、どうしてそんな…。
条件を飲まなければ秋と離れ離れになる。
でも、条件を飲んでしまえば、…俺は咲哉のモノになるしかない…。
思考能力が完全に麻痺した。今度こそ本当に頭の中が真っ白になる。
茫然とする中、手首にギリッとした鈍い痛みが走って我に返ると、咲哉に掴まれている手首が更に強く握りしめられていた。
さすがに顔を顰める。
「咲哉、手…痛いから離せよ」
「お前が答えを出すまでは離さない」
「…っ…そんなすぐに答えを出せるわけないだろ!」
どうにもできない苛立ちに声を荒げて、咲哉の顔を睨みあげた。…瞬間…、目の前のその顔に、冷たいような…熱いような…何かギリギリのものを堪えたような表情が浮かんでいる事に気付く。
…そして…。
「答えが出せないなら、俺が選んでやる」
「なっ…に言って…、…っ」
視界が反転した。
背中を柔らかいものに包まれた感触…、咄嗟に閉じてしまった瞼を開けると、視界に映ったのは俺を見下ろす咲哉の顔と白い天井。
……押し倒された…?
「なんで…」
間近に迫る端正な顔を凝視しながら茫然と呟く。
すると不意にその表情が緩んだ。まるで、「冗談だよ」とでも言いそうな優しい笑み。
でも、実際に咲哉の唇から放たれたのは、更に俺を追い詰める言葉だった。
「見守るだけの立場に甘んじる気はない。今日限りで、お前の心も体も、全て俺がもらう」
「さ…くや…!!」
悲鳴の混じる自分の声が遠くから聞こえるような、変な感覚。
…嘘…だろ…?
こんな事しても、いつもみたいに途中で止めて、動揺している俺を鼻で笑って、それで解放してくれるんだよな…?
声にならない言葉を眼差しに込めて訴える。
けれど、咲哉の顔には冗談も揶揄の色も何もなくて…、今度ばかりは本気だと…、そう…その表情が言っていた…。
焦燥に逸る気持ちとは裏腹に、体は凍ってしまったみたいに動かない。
それでも、なんとか腕を上げて目の前の体を押しのけようと力を込めたのに、それすらも掴まれ、顔の両脇に縫いとめられる。
「俺の本気を、お前は冗談だと思っていたな。でも、これでわかっただろ?俺はお前が欲しい。…もう何年も前から」
「だって、俺たち従兄弟なのに…、そんな事、絶対に…ダメだ…っ…!それに…俺は…!」
…秋が……好きなんだ…。
その一言をグッと飲み込む。今それを言ってはダメだと思った。
「お前が決められないなら俺が決めるまでだ。…そして、もう後戻りをするつもりはない」
「咲…!、っ…ン…ぅ…」
抗議の言葉は、咲哉の熱を帯びた唇に強引に奪われた。
顔を横に背けようと思っても、何度も角度を変えて貪られるように奪われるその激しさに、抵抗が意味をなさない。
ベッドのきしむ音と、お互いの荒い呼吸音。そればかりが異常に耳につく。
その内に、めくられたシャツの裾から咲哉の男らしい大きな手が直に素肌を撫でた。
それが本当に生々しくて、一瞬ビクッと腰が跳ね浮く。
「…ゃ…めッ、…ン…ぅッ!」
ようやく唇が解放され、「やめろ!」と言うはずが、そのまま横に逸れた咲哉の舌に首筋を舐められた瞬間、背筋を這い上がったゾクッとした感覚に不本意な声が零れた。
どれだけもがいても、体格の良い咲哉の体に押さえつけられてしまっては、逃れる術が見つからない。
「素直に快楽を追えばいい。…溺れさせてやる」
「い…やだ…っ!」
欲望に掠れた咲哉の声が本気を伝えてくる。
無理矢理蹴り上げようと足を動かしたのに、やすやすと押さえ込まれてしまった。
それどころか、履いていたジーンズのボタンも外されて前が開かれ、下着越しに咲哉の手が触れてくる。
思わずあげてしまいそうになる声を噛み殺し、ギュッと目を閉じてその感覚に耐える事しかできない。
そして、首筋を辿っていた咲哉の舌が、はだけられたシャツの隙間から胸まで下りてきた。
わざと聞こえるように水音を立てて胸の突起を舐められた瞬間、
「んっぁ…あッ」
背を反らし、堪えきれなかった喘ぎ声が唇からこぼれおちた。
その声を聞いた咲哉が吐息だけで笑ったのを感じて、一気に顔が熱くなる。
「も…、ヤメ…っ!」
容赦なく与えられる下半身への刺激に、恥も外聞もなく泣きたくなってくる。
同じ男だからか、咲哉の触り方は確実にポイントをついていて、その手が動くたびに意に反して体がビクビク反応してしまう。
すると、突然咲哉の動きが止まった。そして聞こえる衣擦れの音。
閉じていた瞼をゆっくり開けると、咲哉が上半身に着ていた服を脱いだところだった。
鍛えられた逞しく厚い胸板が視界に入りこみ、鼓動の早さが更に増す。艶めく生々しい空気に、心臓が破裂しそうになった。
「…本気…なの?」
「最初から本気だと言ってる」
熱を帯びた双眸。また俺に覆いかぶさってくる体温の高い体。
シャツが肌蹴られた俺の上半身に咲哉の体が重なり、直接触れる熱さに息が上がった。
体の下にあるシーツは、俺が暴れるせいでもうグチャグチャだ。
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