11 / 21
第11話
普段と違い、賑やかな声がする小さなキッチン。
伊織は覚悟を決めて中に入る。
「おはよう」
「いっちゃん、おは……」
伊織の顔を見て、美子は固まった。
「イオ」
「Oh ……」
美親とダニエルも、伊織を見て思わず言葉を詰まらせる。
「いっちゃん、大丈夫!!」
「へへ、やっぱり腫れちゃった!」
昨日泣き疲れたまま眠ったため、伊織の両目はしっかりと腫れ上がっていた。
「ちゃんと冷やせばよかったんだろうけど。まぁ、今日一日伊達メガネでもかけるよ」
伊織は、苦笑いをしながら椅子に座った。
「今日は休めば?みんな心配するよ?」
「大丈夫大丈夫!目が見えないわけじゃないし、今日は出なきやいけない講義もあるし。それに、大学に俺のこと心配するような人間はいないから」
心配そうな美親に対し、全く気にしていないような伊織は、"いただきます"と言って美子の作った朝食を食べ始めた。
「I know , ICCHAN !」
すると突然、笑顔で伊織を呼んだダニエル。
「What time do you get off today ?」
「Today ? Let me see … Maybe P.M 6:00」
何の脈略もなく、今日の終わりの時間を聞いてきたダニエルに、訝しげに答えた伊織。
「So … Are you free tomorrow ?」
「Ye , Yes … Dan , what's the matter ?」
「Then , wanna hang out tomorrow ?」
伊織の明日の予定がないことを聞いたダニエルは、一緒に出かけないかと伊織を誘った。
そんな気分ではない伊織に、屈託のない笑顔を向けるダニエル。
「……」
「……」
しばしの沈黙の後、
「O , okay」
根負けした伊織は、ダニエルの誘いに渋々了解した。
ともだちにシェアしよう!