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第11話

普段と違い、賑やかな声がする小さなキッチン。 伊織は覚悟を決めて中に入る。 「おはよう」 「いっちゃん、おは……」 伊織の顔を見て、美子は固まった。 「イオ」 「Oh ……」 美親とダニエルも、伊織を見て思わず言葉を詰まらせる。 「いっちゃん、大丈夫!!」 「へへ、やっぱり腫れちゃった!」 昨日泣き疲れたまま眠ったため、伊織の両目はしっかりと腫れ上がっていた。 「ちゃんと冷やせばよかったんだろうけど。まぁ、今日一日伊達メガネでもかけるよ」 伊織は、苦笑いをしながら椅子に座った。 「今日は休めば?みんな心配するよ?」 「大丈夫大丈夫!目が見えないわけじゃないし、今日は出なきやいけない講義もあるし。それに、大学に俺のこと心配するような人間はいないから」 心配そうな美親に対し、全く気にしていないような伊織は、"いただきます"と言って美子の作った朝食を食べ始めた。 「I know , ICCHAN !」 すると突然、笑顔で伊織を呼んだダニエル。 「What time do you get off today ?」 「Today ? Let me see … Maybe P.M 6:00」 何の脈略もなく、今日の終わりの時間を聞いてきたダニエルに、訝しげに答えた伊織。 「So … Are you free tomorrow ?」 「Ye , Yes … Dan , what's the matter ?」 「Then , wanna hang out tomorrow ?」 伊織の明日の予定がないことを聞いたダニエルは、一緒に出かけないかと伊織を誘った。 そんな気分ではない伊織に、屈託のない笑顔を向けるダニエル。 「……」 「……」 しばしの沈黙の後、 「O , okay」 根負けした伊織は、ダニエルの誘いに渋々了解した。

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