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第13話

土曜日のショッピングモール。 学生グループやカップル、親子連れや老夫婦、様々な人々で賑わっていた。 「イオ、それ似合う!!」 「Ohhh!! You should buy it !!」 雑貨屋の店頭にあった妙な帽子を被らされた伊織。 そんな伊織を見て、美親とダニエルがケラケラと笑う。 「……人で遊ぶな」 ぶすくれる伊織だが、内心、二人に感謝していた。 二人のおかげで、滅入った気持ちが幾分か紛れていた。 昨日の東吾との出来事もあり、伊織は出掛けることにあまり乗り気ではなかった。 そんな伊織を二人は、 「散々泣いたんだから、今度はとことん笑おう!」 と、強制的に外へと連れ出した。 二人とも普段より多少陽気だが、何事もなかったように伊織に接していた。 それが伊織には有難かった。 ひと笑いした三人がモール内を歩いていると、横から小さな子どもが飛び出してきた。 「あっ!!」 と思ったときには遅く、美親とその小さな子どもがぶつかっていた。 「ぼく、大丈夫?」 美親が倒れることはなかったが、子どもの方は、ぶつかった衝撃で尻もちをついた。 「す、スミマセン!!ほら、祐樹(ゆうき)も、ごめんしなさい!」 子どもの母親と(おぼ)しき人物が、慌てて子どもを立ち上がらせ、美親に謝る。 「あ、ズボンが!!」」 見ると、美親のズボンに、子どもが持っていたジュースがバッチリかかっていた。 「本当にすみません!!すみません!!どうしましょう!!」 完全に気が動転している母親。 「私は全然大丈夫ですよ」 そんな母親に、優しく笑いかける美親。 「でも、ズボンが…クリーニング代だけでも」 「いいですいいです!!これぐらい大丈夫ですから。それにちょうど、新しいの買ったんで!」 美親は笑顔のまま、ショップの袋を上げて見せる。 「でも…」 「その代わりに、"ぼく"に新しいジュース買ってあげて下さい」 美親はスッと(かが)んで、ぐっと口を縛って泣くのを我慢していた子どもに目線を合わせる。 「ごめんね、ぼく。お尻、痛かったでしょ?このジュースはダメになっちゃたけど、ママに新しいの買ってもらって。ね?」 すると、子どもが、 「ご、ごめん…さい」 じわっと泣きながら、美親に謝った。 「えらい、えらい」 美親は嬉しそうに、子どもの頭を撫でて立ち上がる。 「じゃあ、お母さん!きちんと謝ってくれたこの子に、新しいジュース買ってくださいね」 にっこり笑って、お母さんの方を見る美親。 「本当に、すみません!ありがとうございます」 親子は再度頭を下げ、ジュースが売っていた方へ歩いていった。 親子が見えなくなると、伊織とダニエルは、すかさず美親の手を握った。 「チカ、ホント、君はできた人間だー!」 「I came to love you more !!」 感激の眼差しを向ける二人。 「もー、大袈裟だよ、二人とも」 美親は、"ハハハッ"と恥ずかしそうに笑い、 「じゃあ、ちょっと着替えてくるから、二人ともその辺の店でも見てて」 と言って、トイレへ向かった。 そして、残された二人は顔を見合わせる。 「So..take a look in this shop ?」 「Yeah !」 近くの店を指差した伊織に、ダニエルは頷き、二人は店内に入っていった。

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