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第14話

二人が入った店は、ファッション系のセレクトショップだった。 「Hey , Dan ! I think this one would suit Chika 」 伊織はアクセサリーがディスプレイされたショーケースを見ながら、ダニエルに声を掛けた。 身長のあるダニエルは、伊織の横で背中を丸め、覗き込むようにショーケースを見る。 「Yes ,it's lovely !!」 二人がショーケースのアクセサリーに夢中になっていると、 「いお、り?」 戸惑うように伊織を呼ぶ声が聞こえた。 その声に、伊織が顔を上げると、 「……伊織」 昨日のデジャヴかのように、二人の目の前に一人の青年が立っていた。 「ICCHAN ?」 ショーケースを見ていたダニエルも顔を上げる。 横を見ると、一点を見て、顔を強張らせている伊織が目に入る。 ダニエルはゆっくりと首を動かしその先を見ると、やはり顔を強張らせ伊織を見つめる青年がいた。 目を細め、(いぶか)しげにその青年を見たダニエルが声を発する。 「Are you "Togo" ?」 まさか伊織ではなく、隣りの外国人から自分の名前を呼ばれるとは思っていなかった青年は、驚いて伊織の隣りに目線を移す。 青年と目線が合ったダニエルは、目の前の青年が東吾であると確信した。 「ハジメマシテ!ワタシハ、ダニエル・テイラー、デス!」 ダニエルは片言の日本語で言うと、グッと伊織の肩を抱き、そのまま東吾の方へ周った。 伊織と東吾は、何がなんだかといった表情だ。 「トーゴ、アリガトゴザマス!」 東吾と対峙するように立ったダニエルは、満面の笑みを東吾に向ける。 逆に、東吾の表情は曇った。 「ワタシハ、イッチャンヲ、ラヴデス!」 「はぁっ!?」 驚いた伊織は、ダニエルの方に顔を向ける。 「トーゴノイナイ。ワタシハ、イッチャントステディ!」 ダニエルはにっこり笑い、伊織の頭にキスをする。 それを見た東吾は、目を見開いた。 「ちょ、ダ、ダン!?」 慌てる伊織に向かって、パチンとウインクしたダニエル。 そして、再び東吾の方に向き直ると、見据えるような笑顔で言い放つ。 「イッチャン、ゼンゼンスナオデハナイ。デモ、ソレガスキ。ソノイッチャンガスキ」 ハッとした表情になる東吾。 ダニエルはそんな東吾を無視して、伊織の肩を抱いたまま手を振り、 「ソラデハデス、トーゴ!」 と言って伊織を連れて店を出て行く。 「ちょ、ダン! What are you saying !!」 「I know , l know. You love me !!」 「What !?」 端から見ると、過度なスキンシップをとる外国人とシャイな日本人。 ただ、一人取り残された東吾には、仲睦ましいカップルにしか見えなかった。 そして東吾は、 「……そんなこと分かってる」 唇を噛み締め、ひとりごちた。

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