15 / 21

第15話

「マ、ジ、で、信じらんねーだろ!!」 ダンッとテーブルを両手で叩き、美親に訴える伊織に対し、 「What are you angry ?」 素知らぬ顔でカフェラテを飲むダニエル。 「Haaaaaa !?」 ダニエルの態度が伊織の怒りに油を注ぐ。 「落ち着いてイオ!ここお店!!And Dan, you zip」 美親は伊織をなだめながら、ダニエルを窘める。 渋々な表情の伊織と、肩を竦め"僕は悪くないよ"といった表情のダニエル。 二人を見て、美親は思わずため息をついた。 ズボンを着替えた美親が戻ると、ちょうど伊織とダニエルが店から出てきたところだった。 べったりくっ付いてるのに、不機嫌オーラを全面に出してる伊織。 それに対してダニエルは、ご機嫌すぎて鼻歌混じり。 美親は不審に思いながら二人に声をかけると、伊織が怒りに震えながら、 『テメぇの旦那はトンデモねーことしてくれた!』 と、おおよそその美しい顔に似つかわしくない言葉遣いで、美親を睨んできたのだ。 自分に全く関係のない怒りをぶつけたきた伊織に、困惑した美親はとりあえず話を聞こうと、二人を連れてコーヒーショップに入ったのだった。 「ごめんね、イオ。ダンが変なことして」 一部始終を聞いて、美親は伊織に謝った。 勢いでついカッとなった伊織だったが、何も悪くない美親に謝られバツが悪そうな顔をした。 「いや……、チカは悪くないのに、ごめん……」 伊織はそっぽ向いてだが、美親に謝った。 「ううん、いいよ。気にしないで。それより……Dan, why did you do that ?」 伊織に優しく微笑んだ美親だったが、ダニエル対しては厳しい顔をした。 すると、ダニエルは驚いた表情で、 「Why? That's obvious !! So, he still loves ICCHAN !!」 外国人特有のジェスチャーをした。 ダニエルの言葉に、伊織は呆れる。 「Dan, he has already a new partner. Do you have forgot ?」 「I don't have forgot. But I felt for him that !! 」 美親は、納得いってない二人の顔を交互に見て、"ハーッ"とため息をついた。 「埒があきそうにないのは分かった。で、イオはさっきトーゴを見てどう思ったの?」 「えっ?」 「確かに、ダンの行動はイオの気持ちを無視した行動だったけど、イオは今だにトーゴのことが好きなんでしょ?"諦めれない"って、一昨日言ったよね?」 「……」 美親の言葉に、伊織は目線を逸らし黙る。 「イオ。トーゴは、あの先輩(おとこ)じゃない」 美親は、コヒーを一口飲んで続けた。 「まして、イオのお母さんじゃない」 美親のひと言に、伊織が目線を上げた。 「イオが、"トーゴのこと好き"って言っても、どっかに行ったりしない。もうイオは小さな子どもじゃないんだよ。ちゃんと向き合えるでしょ。トーゴにも、自分の気持ちにも」 グッと力の入った表情で伊織を見る美親。 「ICCHAN, trust me. He loves absolutely you !」 ダニエルも、先ほどとは表情を一転させ伊織を勇気づける。 そんな真剣な二人を見て、伊織の瞳がじわりと潤う。 「……二人とも……」 ぐしゃりと笑う伊織。 「天邪鬼が……、俺が、本当のこと言っても信じてもらえるかな?」 「大丈夫、きっとトーゴは信じる!ダンが言ったでしょ!トーゴは絶対イオのこと好きって!!」 伊織がダニエルの方を見ると、親指を立てて笑っていた。 「……ありがと」 涙を隠すようにプイッと横を向いて言った伊織に、美親とダンは顔を見合わせ優しく笑った。

ともだちにシェアしよう!