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第14話

「……懐かしいな」 床に転がっている卒業アルバム。 手を伸ばして拾い上げる。丁度開かれたページには、双葉のクラスメイトの顔写真が並んでいた。 その中で一際目を引く、悠と双葉。 幼さが残る顔立ちの悠は、その表情からヤンチャさが滲み出ている。 小柄な双葉より林檎一個分くらい背が高いだけのチビ。しかし、これで結構女性にモテたりする。 可愛いと大人の女性からは可愛がられ。不良っぽい雰囲気やお洒落な所が格好いいと、同級生や下級生の女子からは好意を持たれ。 何度か……悠が告白される所を目撃したな。 その隣に写る、双葉。 ……悠がモテているのは知っていても、悠が一途なのを感じて、そういう不安は一切無かったんだろう。 幸せそうな良い笑顔をしている。 「整理してたら……出てきて……」 「……そういえば。 双葉を好きだった奴、……この中にいるんだよね」 双葉の言葉を遮り、独り言のように呟く。 浜田大輝。 ページを捲った先にある、俺の顔写真。 そこに視線を落とせば……つい『それ、俺の事』と口が滑ってしまいそうになる。 「……え」 少し動揺した声。 双葉を見れば、絵に描いたような困惑した表情に変わっている。 ……ま、当然か。 双葉にとっては悠が全てだったからな。 でも双葉…… 悠との未来は、諦めた方がいい。 例え悠がここに現れて、二人でやり直したいと迫られ、寄りを戻したとしても………誰にも祝福されない。 寧ろ、無くすものの方が多い。 悠の婚姻が破棄される可能性も低いしな。 もし駆け落ちしたとしても……いずれ連れ戻され、永遠に引き裂かれる。 ……かつての父と母のように。 アイツらが変わらない限り、どう足掻いても……双葉は不幸になる。 「要は、もう少し視野を広げなさいって事」 「………」 双葉の瞳が淋しそうに揺れ、そのまま伏せられた。 ……流石にこれは、余計な一言だったかな。 ひと眠りし、双葉のアパートを出る。 夜空に浮かぶ綺麗な丸い月が、淋しそうに俺を見下ろしていた。

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