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第4話

ソファーに座った斎川の近くの壁際にアコギと荷物を置いて、自分のベースを所定の位置に戻すと、着ていた上着を脱ぐ。 「メシ、カップラーメンでいいか。コンビニ寄り忘れたから、他にねえけど」 湯沸かし器に水を入れてスイッチを押すと、キッチンの棚から山積みのカップラーメンを取り出して、テーブルの上に置く。 「体に悪そう。文句はないけど、ミカちゃん自炊しないの?」 斎川は、キッチンの様子をちらちら見ると呆れたような表情で俺を見る。 「コンビニで買ってきた方が楽だし、そんなのやってる時間はねえな」 料理とかはやったことが無いので出来ない。実家にいたころは、母親が作ってくれたし、手伝うこともなかった。 電子レンジさえあればそれで困ることはあまりない。 「野菜とか食わないと、後からガタ来るよ」 「正論言われても作れないしな」 割り箸を出して、斎川の前に差し出し、湯沸かしケトルで自分と斎川のカップメンにお湯を注ぐ。 「バンドってさ、初めてなんだよね」 斎川はおもむろに口を開いて、俺の顔を覗きこむ。 女性的ではないのだが、綺麗な顔が少しだけ面白がるような笑みをたたえているのに気づく。 まあ、まったく興味なければ音合わせもしようと思わないだろう。 あれだけ歌えれば経験とかあるかと思っていたので、意外だった。 「道で歌ってて、勝手に楽器鳴らされてセッションしてくる人とかいたけどね.........。そろそろいいかな、いただきます」 両手を合わせて行儀よく食べ始めた斎川は、意外と育ちはいいようだ。 俺もつられていただきますと告げてラーメンを啜り始めた。 「曲は全部俺が書いてる」 「へえ。歌ってる時も思ったけど、おもしろいフレーズだよね。ありえないコード進行だし、聴いたことのないフレーズで面白くて歌いたいと思った」 斎川が本心で言っていることがわかり、売り言葉に買い言葉で応戦してしまったことが悔やまれた。 「それでも、オレが歌えば百倍カッコ良くなるなって直感したしね」 自信ありげに告げた言葉に、やはり生意気なのでシメたくなるなとふつふつと込み上げる元ヤン魂もある。 こいつに歌わせて欲しいと言わせてみたいというような、対抗心だ。 俺はカップメンを食べ終えると、ゴミ箱の中に投げ入れた。 「まあ、要が連れてきただけあって、オマエの歌はスゲエカッコ良かった.........」 「オマエじゃなくて、タカネ。何でも言いなりになるんだろ、ちゃんとタカネって呼んでよ」 ずいっと顔を近づけられて、俺はぐいっと奥歯を噛み締める。 他人の言いなりになるのは、好きじゃない。 よほど、自分より強い相手か尊敬できる相手でないと反抗心がムラムラと湧き上がる。 「わかった。タカネ。俺は明日仕事だからな。先に風呂に入るぜ」 下着と部屋着を出すと、斎川の分も1式ソファーの上に置いて、すぐ近くの浴室の扉を開いた。

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