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※第10話

俺は、マジで勃起している。 こんな男に、囁かれただけでだ。 とりあえず、こんな部屋の前ではまずい。 ポケットから出しかけていた鍵を掴んで、部屋のノブに差し込みガチャガチャと回す。 どうにかして逃げないとヤバイ。 「大丈夫、外でなんかしないから」 何が大丈夫なんだっての。 中に入って、こいつを締め出さなければヤバイことになる。 「必死になっちゃって……ミカちゃん、可愛いね」 ガチャと扉が開いた瞬間に中に入るが、齋川を振り切ることができない。 「まだ、階段から下に飛び降りた方が逃げられたかもしれないのにね」 重心を崩した俺を抱きとめるようにして、齋川は後ろ手に部屋の鍵を締めた。 コイツはサイコパスなのか。 殺されるのか。 ベースケースを取られて、玄関のシューズラックにたてかけられる。 武器はとられたが、簡単に殴り倒せる相手なのに、力がまるで入らない。 股間が痛いくらいに勃起しているのも、訳がわからなくて恐怖しかない。 「た……たすけ、てくれ」 訳の分からないのは、畏怖でしかない。殴ったり蹴ったりできるようなものなら、怖くなんかねえのに。 「ミカちゃん、怯えなくていいよ。いつものように、気持ちよくなるだけだよ」 力が入らないまま、ガクッと膝が落ちるのを齋川は支えるように、俺の腰を抱いてリビングを抜けて寝室に連れ込む。 ここは、俺が女の子を連れ込む場所であって、断じて連れ込まれる場所ではない。 「や、齋川、やめて、くれ」 ベッドへと追い詰められて、俺は必死で首を横にする。 「違う、タカネでしょ。別に初めてじゃないんだから、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」 初めてじゃないとは、どういうことだ。 ベッドヘッドまで、ずりずりと臀で下がっていくが、齋川はぐいっと顔を寄せて、耳元で鼻歌を歌い出す。 低い抜けるような声。 俺の作った……あの、曲だ。 身体の力が抜けて、ズボンと下着をはぎとられる。 「怖くなくなるまで、歌ってあげる、ね」 腹の下からズキズキと熱がたまってくる。 頭の中に染み込んでいく低音が、俺の呼吸をおかしくさせる。 「ほら、びしょびしょに濡れてる。オレの声で、こんなにぐっちゃぐっちゃなの……。最初から、オレの声聴いてエロイ顔してたよね」 「……し、てな……い」 緩急とリズムをつけて、鼻歌に合わせて竿を扱かれる。 腰が浮いて脚が自然に広がっていく。 も、もう少し……。 速度と力をいれれば……。 「さ、さいか、……あ、あ、も、ッ」 「ダメ、イかせてあげない。ちゃんと名前呼んでよ」 キュッと指を回して先端を締め上げて、にっこりと齋川は俺を見下ろす。 「タカネ……ッ、や、たの、む」 「……ダメ、イクのはコッチでね」 長い人差し指を、脚の間の隙間にゆっくりと押し付けて、浅いところをこれ見よがしにヌプヌプと抜き差しする。 足の指先が反り、指の動きに腰が待っていたかのように揺り動く。 「……っ、さ、ッた、かあ……ねッっう、や、や、やめ」 ぐちょぐちょと濡れた音が響き、まざまざと犯されていることを自覚して、俺は必死に首を横に振る。 「本当にやめていいの?辛いのはミカちゃんだよ」 こくこくと首を縦に振る俺に、齋川は指を折り曲げるようにして、奥を突き回した後にぬるっと引き抜く。 「……っ、ひ、……くッ」 指先でつつかれた場所が熱をもって、身体の芯がズキズキしたままで、先端の締め上げも緩めないまま、齋川は俺の顔を覗き込む。 「イかないと、つらいのに。ミカちゃんさ、もしかして、マゾなのかなあ」 腰がへこへこ動いてしまい、指を抜かれた場所は切なく開閉してしまっている。 マゾなわけ……ねえだろ。 「……テメェ、っ、し、しねッ……はなせ、ぶ、ぶっ、ころす」 じわっと涙まで出てきてカッコつかないが、本気で殺意が芽生えている。 少しでも心を許していた自分が嫌になる。 「我慢しないでよ……。ほら、疼いて仕方ないでしょ?ちゃんと気持ちよくさせてあげるから」 「ふざ……けるなッ」 斎川の腹を思い切り蹴りあげ、俺は熱をもったままの自分の身体を壁際へと逃がした。 「けふっ、きょう、にかいめ」 腹を押さえて手を伸ばされ、俺は勢いよくそれを払った。 「ちか、よるな!」 こいつに歌われたら、力が抜けてしまう。 聴き惚れてるのは分かってる。 何でも言うことは聞くとも言ったが、貞操まではその範囲外だろう。 強姦魔と上手くやってく自信もない。 「出て行け!!」

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