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深まる秋・深まる恋 12

「宗吾さん、あの……」 「何だ?」 「そろそろ皆さんの所に行った方が」 「まだ大丈夫だろう。せっかく配慮してもらったのだから、ゆっくりしないとな」 「えっあっ!」  起き上がろうとすると再び布団に押し倒され、両手を耳の横で押さえつけられてしまった。 「何だか、こんなに若々しい姿の瑞樹を見下ろすと、高校生にイケナイことをしている気分になるな、ヤバイ! 」 「はぁ……宗吾さんって……」 「んっ何だい?」 「……結構な変態かも」 「えぇ! 参ったな。瑞樹と付き合う前は、こんなキャラではなかったのだが」  宗吾さんが快活に笑う。確かにそうだったろう。最初に公園で会った時もカッコいい人だと思ったが二度目のスーツ姿は溜まらなかった。電車の中で向かい合わせに立った時、いよいよドキドキと胸が高鳴って大変だった。  最初は都会的でクールな印象だったけれども……どこで間違えてこうなったのか。 「瑞樹に触れると、俺のは高校生みたいにビンビンになるよ」 「ちょっ、びっビンビンって……それちょっと卑猥な言葉過ぎやしませんか。あぁやっぱり立派な変態です……」 「言ったな! ははっ! じゃあ罰として瑞樹も道連れだ!」  次の瞬間、宗吾さんの手が驚いたことに僕の股間を布越しに撫でてきた。 「あっ! なっ何を……」  既に何度もキスはしている。胸も一度目的をもって触れられたことがある。しかし……そこは初めてだ。彼の大きな手でやわやわと揉み込まれてしまうと、布の摩擦も相まって想像以上に気持ち良くなってしまい動揺した。戸惑った。 「だっ駄目ですって!」 「瑞樹もビンビンにしてやるからな。っていうか、もう少し反応しているみたいだぞ」 「うっ……また芽生くんが来ますよ」 「うーん残念だが、今日はその線は薄いな」 「あっ……んんっ」  宗吾さんは僕の耳元で喋りながら、股間を休みなく撫でてくる。気持ちがどんどん持って行かれてしまう。駄目だ……快楽に溺れ、こんな場所で粗相してしまう。このズボンは薙くんのだし……まずいって! 「瑞樹のここ綺麗な形だろうな。直に見たいよ」  芽生くんパパを止めて! と願う反面、気持ち良さに負けてしまいそうだ。耳を澄ますと庭から芽生くんの楽しそうな笑い声が聞こえてきたので、「その線は薄い」と断言した理由が分かった。 「瑞樹……とても苦しそうだ。よしっ一度出すか」 「だ……駄目です。ここは人の家だし……そんなの無理」 「汚すのが嫌ならズボン、脱いでみるか」 「えっ……」  宗吾さんの指先がズボンのボタンを外しだした。  えっ……どこまで? 何をするつもりだ?  あぁもう……いよいよ頭の中が爆発しそうだ!  その時、襖がガラっと開く音がした。  えっ誰?   芽生くんの声はまだ外からしているから違う誰かだ。 「布団持ってきたぞーって、あっ何だよ。お前らイケナイコトしてるのか」 「わっ!」 「わー!!」  布団を抱えた流さんが遠慮なくドカドカ入って来たので、僕は宗吾さんを押しのけ飛びのいてしまった。  ああああ……危なかった。  壁にもたれつつ……明らかに勃起し出しているのを隠したくて体育座りになって俯いた。だが、もうバレバレか…… 「お邪魔……だったよな」 「流ーお前なぁ、確実に狙っただろう?」 「ははっ、まぁな。瑞樹くんが困っているようだったからさ」 「はぁーどうしてこうも毎回毎回邪魔が入るのだか。一向に先に進めないぞ。瑞樹は無事か」 「もう……宗吾さんのせいですよ。これ……はぁ……」  流さんはそんな僕達を横目に、まるで旅館の仲居さんのように手際よく働いて、あっという間に布団を三枚並べて敷いてくれた。しかも僕と宗吾さんの間の布団は芽生くん用の小さくて可愛いサイズのものだった。 「これ可愛いだろう? 昔、薙のために兄さんが買ったが、結局使う機会がなくてさ……それにしても川の字っていいよな。ずっとこういう光景が兄さんの憧れだった」 「あの……翠さんも……もしかして、お子さんが小さい時に離婚したとか」 「そうだ。あれは薙がまだ五歳の時だったよ、だからかな……君たちが芽生くんを挟んで仲良く幸せそうな姿を見るのがとても好きなようだ。今日だって何日も前からそわそわとしていたぜ」    僕達の幸せが、全く違う第三者の幸せになる?  そんなことは思いもしなかったので、驚いてしまった。 「あぁ分かるな。幸せは連鎖すると俺は思っているから」  宗吾さんが僕の隣で深く頷いていた。 「だから俺は瑞樹を笑わせたり、気持ち良くさせてやりたいんだよ。もっともっと」 「分かる。俺もいつもある人のためにそう願って生きているから」  人は誰しも幸せになりたいと思っている。  こんな僕だって……この世で幸せを掴みたいと心の奥底で思っていた。その反面、僕だけ生き残ってしまい、僕だけ幸せになるのは申し訳ないとも。  だから今の話は目から鱗だ。  僕だけの幸せと思い込んで躊躇していたが、実はそうではないのか。  僕が笑えば……宗吾さんも嬉しい気持ちになって、僕と宗吾さんと芽生くんが仲良くすれば、翠さんや流さんが幸せな気持ちになるのか。    それってすごい……宗吾さんと付き合いだしてから、どんどん僕は違う世界を見せてもらっている!

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