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深まる秋・深まる恋 13
「さぁ夕食だよ。この寺の台所は俺に一任されている。だから君たちのために心を込めて作ったよ。特に今日一番奮闘した瑞樹くんに栄養のあるものを食べてもらいたくてな」
「そんな……本当に何から何までありがとうございます」
その日の夕食は『ほうとう鍋』が用意されていた。色とりどりの野菜とホクホクのカボチャ、見るからに栄養満点だ。味噌と出汁の美味しそうな匂いが部屋中に漂っている。
モクモクと湯気の上がる大きな土鍋を前に、月影寺のメンバーと俺たちの総勢8名が並んでいるのは圧巻だった。男ばかりなのに最高に華やかな光景。そんな中、俺の瑞樹はひと際可愛いよなと、ついにやけてしまう。
丈さんの恋人の洋くんは絶世の美男子だし、この家の長でもある翠さんはたおやかな京風
な美男だ。なんともレベルが高い集団だ。だがそんな美形を前にしても、俺の眼は瑞樹から離れることはなかった。もう釘付けた。
はぁ……それにしてもさっきの瑞樹のあそこの感触が忘れられないよ。小振りだったが俺の愛撫で確かに高ぶってくれたのには、心からしみじみと感動した。まだ彼とは躰の関係を持っていないが、あそこに触れることを許してくれるまで、瑞樹が俺に心を許してくれているという事実に興奮してしまった。
「パパ? そのおててどうかしたの?」
「ん?」
「さっきからなにかにぎっているみたい。えっとぉ……」
芽生に聞かれて初めて気がついた。いつの間にか……無意識に瑞樹のあそこをイメージして空気をムギュムギュと握っていた。この位か……いやもう少し小さ目だったか。あぁこれはもう恥ずべき大人の行動だな。
「パパーそれクイズ?」
「あ? あぁ……そうだよ」
「えっとぉ……なにをにぎっているかだね?」
「おぉ……そうだな」
決まり悪くて適当に答えると、暫く考えた後、芽生が突然大声で叫んだ!
「あっわかった!それっバナナのおおきさでしょう?」
「えっ!」
「でも、ちょっと小さめかな~」
過敏に反応したのは瑞樹の方だ。すぐさま俺の手元を見てギョッとした表情になった。
「くくっく……芽生くん正解だぜ!」
流が肩を大きく揺らし笑っていた。
瑞樹……悪い……そして我が息子よ。先が恐ろしいな、全く勘が良すぎだぜ。
瑞樹は顔を更に真っ赤に染めていた。俺と芽生の会話の内容を察したのだろう。
それにしても瑞樹は様々な表情をするようになったな。いつも当たり障りなく清楚にそつなくこなしている瑞樹を崩すのは、瑞樹の様々な一面を見れている証拠だ。恥ずかしがる顔もソソラレル。
「お前、のろけすぎー! 少しは反省しろ! 」
流に小突かれる。彼とは既に古い友人のような関係だ。随分と気が合うな。軽快なテンポが楽しいぜ!
「……あの、宗吾さんは、あまり反省していませんね」
「そっそうかな」
瑞樹がジドっとした眼で俺を睨んでくる。うーんその視線は新鮮だ。ゾクゾクする。どんな瑞樹でも俺にとっては愛しい存在に変わりないのだなと、しみじみと思うよ。
「さぁ食べようぜ! 」
「わーい! お兄ちゃん、おやさいさんがたくさんだね」
「あっうん、これは『ほうとう鍋』だよ、ちょっと待ってね。まだ熱いから」
瑞樹も気を取り直して、芽生のために器によそった具材が冷めるようにフーフーと息を吹きかけてくれている。面倒見がいいのは弟がいたからなのか。さぞかし優しい兄だったのだろう。亡くなった弟さんのことを想うと切ない気持ちになる。
「沢山食べるといい。瑞樹くんもこれなら食べられそうかな」
翠さんが優しく促してくれる。瑞樹にとっても俺にとっても……身体も温まるし元気が出る鍋を、皆で楽しく食べる。これ以上の贅沢はない。瑞樹は特に平日は一人暮らしのせいで、ちゃんと食べているのか心配だからな。思いがけずこんなにも温かい一時を、月影寺の彼らと過ごすことが出来てよかった。
「しかし平均年齢が、今日は随分下がったなー」
流さんの一声に皆が顔を見合わせ、そのあと皆が瑞樹のことを一斉に見た。瑞樹はまた居たたまれない表情を浮かべる。
「いや……そんな、僕はもう26歳ですから」
「嘘! そんなにいってるの? 全然見えない」
一番驚いたのは薙くんだった。
「それは……そっその、君の服を着ているからだよ」
翠さんの息子さんはイマドキの中学生らしさも存分にあって、瑞樹の魔性の若さ(勝手に俺が命名)興味津々のようだ。
「オレとサイズ一緒って……なぁ」
「うっ……」
いやいや、あそこのサイズは流石にもう少し大きいだろう……と叫びたい。(ダメだろ)
「パパ~また鼻の下がのびてる~なんかオサルさんみたいだね」
「わははっ!」
「くくくっ」
「……」
流の大爆笑と丈さんの失笑。
翠さんと洋くんの気の毒そうな視線。
「瑞樹くんは苦労するね。どうやら君も僕たちの仲間のようだ」
「はぁ……すみません。こんな僕達で……」
「とんでもないよ。とても楽しい気分だよ」
洋くんは心底嬉しそうに微笑む。まるで花のような笑顔だ。
「そうだ! 父さんいいこと思いついたよ。せっかくお客さんが泊まるならあれしようよ!」
「あれって? 薙、何をするつもり?」
「小さなお客様にとって、この時期のお楽しみといえばハロウィンに決まっているよ」
「お寺でハロウィン?」
住職でもある翠さんが、少々困った顔をした。
だが俺は感心していた。流石イマドキの高校生は考えることが斬新だ! 広告代理店勤務としては、その自由で大胆な発想に胸がワクワクするぜ!
「そもそもハロウィンって何だろう?」
翠さんが不思議そうに呟いた。
「あぁそれなら……ハロウィンの10月31日は発祥の地では1年の終わりで、夜に亡くなった人の魂がこの世に戻って来ると信じられていたから、悪霊や魔女に憑りつかれないように仮面を被ったり、魔除けに火を焚いていたと言われているんだよ」
この手のイベントの由来には、俺はよく通じている。だから弁が立つのさ。
「翠さん、だからハロウィンのもともとの由来は一種の宗教行事なんですよ。だから捉えようによっては日本のお盆と同じようなもので、我々はお盆になると俺たちは先祖供養のために墓参りをしたり、迎え火や送り火を焚き先祖の霊があの世とこの世の行き来を間違わないようにしますよね。それと似ているので、お寺でやっても構わないのでは?」
「ふむ……お寺でハロウィンか。それも面白いね。内輪でやってみようか」
「そう来なくては!」
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