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花束を抱いて 2

 最初は順番に躰を洗ったり洗髪していたのに、先に湯船に浸かった宗吾さんが、男らしい低い声で囁いた。 「瑞樹も来い」  その声に甘く痺れた僕は、手を引かれるがままに素直に湯船に浸かった。  こういうモードの宗吾さんがかっこ良すぎる。 「んっ……」  そんな訳で……さっきからずっと彼の開いた足の間に、僕が体育座りで収まるという恥ずかしい姿勢を取らされている。  もう宗吾さんとは深い躰の関係を結び、もっと恥ずかしい姿だって見せているのに……それでもこれは羞恥に震えてしまう。しかも浴室内は普通のユニットバスだから照明も明るくて、躰の隅々まで丸見えになっている。 「あ、の……」 「なんだ?」 「そ、の……」 「あぁすまん」  あたっている──硬い宗吾さん猛るモノが、さっきからずっと僕の腰付近に。 「君を早く抱きしめたかった」  肩口に唇をあてられ、そのまま強く吸い上げられる。  ピリッとした軽い痛みに、痕を残されたことを知る。 「んっ」 「痛い?」 「いえ、もう逆上せそうです。お風呂は……さっと済ますと」 「そのつもりだったが、こうやってゆっくり風呂で抱けるのは滅多にないだろう。君はいつも芽生と入ってしまうから」 「あっ……確かに」 「だからじっくり味わってる」 「んっ」  腰に回された手がそのまま下腹部に降りてきて、薄い茂みを掻き分け、僕のモノに触れる。 「んんっ」 「ちゃんと反応しているな」 「それは……僕だって男ですから、こんなシチュエーションでは堪えられないです」  正直に答えたのに、宗吾さんは返事の代わりに僕の屹立を手のひらですっぽりと包んでしまった。 「可愛いサイズだな。それに……瑞樹らしく綺麗なカタチだ」 「うっ……」  宗吾さんみたいに立派でないのは認めるけれども、それは男としての矜持が揺らぐような。だが文句を言う前に輪っかにした指で巧みに扱かれて、声を堪えるのに必死な状況に追い込まれていた。 「気持ちいいか」  涙目でコクコクと頷くのが精一杯で、結局そのまま湯船の中で追い上げられ、もう息も絶え絶えだ。 「はぁ……あっ、うっ……んっ」  前を激しく扱かれ弄られ絶頂を迎えると、宗吾さんも同時に達したようでお互い汗びっしょりになっていた。 「ハァ……俺たち、若いな」 「……ふぅ」  一気に脱力して……宗吾さんの胸板にドサッともたれると、全速力で走り抜けたようなドクドクと脈打つ鼓動が聞こえた。 「続きはベッドでな」  何とかパジャマを着てベッドの上でぼんやりしていると、宗吾さんがペットボトルの水を持ってきてくれた。 「大丈夫か」 「もう……逆上せそうです」 「すまない。今様子を見てきたが、流石に芽衣はぐっすり眠っているよ」 「そうなんですね」  渡された水で喉の渇きは落ちついたはずなのに、まだ何か物足りないような…… 「瑞樹、ここで抱いても?」 「あっ……はい」  改めて聞かれるとやっぱり恥ずかしい。風呂場で一度出し合ったのに、まだお互いに飢えていた。   優しく布団に沈められ首筋を美味しそうにぺろりと舐められると、宗吾さんに食べらているような倒錯的な気分になる。 「あっ……」 「函館楽しかったな。ふたりの思い出が増えて嬉しかった」 「僕もです」 「去年はまだ出会って間もなかったから、誕生日のこと知らなかったし……今頃、君は何をしていた?」  去年の僕は……まだ一馬と過ごしたマンションにひとりで暮らしていた。  一馬が去って間もなかったので、慣れない一人寝に苦しんでいた。 「……ひとりでいましたよ。ひとりで眠って……ひとりで起きて……」 「ごめん、思い出させたか」 「いえ大丈夫です。僕は……今年は……宗吾さんに抱かれて迎えるのですね」  横を向くとサイドテーブルに置かれた目覚まし時計が見え、針は後10分で明日になろうとしていた。 「バレたか。君の中で迎えようかと」 「くすっ、なんだか、ソレ……また意味が違うようですが、宗吾さんらしいですね」 「可愛い文句だが、もう喋るな」  そのまま唇をぴったりと塞がれてしまった。 「……星空の下での続きをしよう」 「はい」  一度お互いに出していたからか、余裕がいつもよりあった。  だから……いつもよりずっと長く丁寧な愛撫を受け続けた。躰の隅々を辿るように確かめるように優しく撫でてもらい、淡い色の胸の尖りは、口に含まれ転がされ、芯を持つまで熱心に弄られた。どんどん僕の躰は過敏になっているので、宗吾さんの唇の動きに合わせ反応し出す。ダイレクトに下半身に響いておかしくなりそうだ。 「んっ、そこもう……やだ。変になります」 「感じてきたか」  過敏になった躰を、ふわりと宝物のように抱きしめられる。 「瑞樹……何だか細くて折れそうだな」 「……宗吾さん、僕は折れませんよ」 「あぁ君はしなやかだ」 「宗吾さんは逞しいです」  お互いの名前を何度も呼び合う。  太ももを辿ってきた手に奥を探られ、蕾の入り口を指先で擦られ、腰が揺れてしまう。たっぷりの潤滑油によって解された入り口が宗吾さんを待っている。なのになかなか挿れてもらえなくて、じれったくなってしまう。 「ん、もう……」 「欲しい?」 「……うっ」  ずるい、そんな風に聞くのは。  見上げると目が合った。 「誕生日プレゼントなんていりませんよ。宗吾さんがいてくれれば……」  そう告げると、宗吾さんが破顔した。 「はぁーもう瑞樹。それ反則。本当に可愛すぎるよ」 「あうっ!」  油断していたらいきなり挿れられ、奥を突かれたので、変な声が上がってしまった。 「あっ、あ……あっ」  彼を奥深く受け入れた僕の躰が震えている……欲しがっている。    なんだか浅ましい気もしたが、嬉しさの方が増す。  時計の針が進んだようで、カチっと歯車が合うような音がした。 「おっちょうど0時だ。誕生日おめでとう、瑞樹、27歳になったな」  躰の中に宗吾さんを受け留めたまま、唇を重ねられ、そのまままたすっぽりと抱きしめられた。上も下も……全部宗吾さんとくっついている。 「俺の花束みたいだ」 「えっ」 「いい匂いがする」 「宗吾さんと同じ匂いですよ、一緒のシャンプーだしボディソープも」 「あぁ洗濯の洗剤も柔軟剤も……歯磨き粉も一緒だ」 「日常が同じですね」 「いつもの花のような香りの瑞樹もいいが、俺の家の香りの瑞樹はもっといいな」 「宗吾さんの匂い……好きです。落ち着きます」  裸の胸に正面から深く抱かれ、肌と肌を擦り合わせる。  深く抱かれ、深く揺さぶられ……ぜんぶ委ねていく。  宗吾さんは、僕の家だ。 「瑞樹……何度でも言うよ。誕生日おめでとう。君が生まれてきてくれて良かった」      

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