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箱庭の外 7

 パジャマを捲り上げられ、胸の尖りに口づけされた。 「ここに触れたかったよ」 「ん……そこ、最近……変なんです」 「そうなのか! いい感じだな。俺が開拓しているんだよ」 「か、開拓って?」 「ここだけで感じるようにさ」 「や……そんなことされたら……困りますっ!」  宗吾さんの口腔内に含まれた乳首が、刺激を受けて硬く尖り、恥ずかしくて溜まらない。  彼の手が遠慮なく下肢を辿り、僕の中心に触れてくる。 「もう、こんなになっているのか」 「言わないで下さいっ、恥ずかしいですから」 「だが今日は、君から求めてくれた」 「それはそうですが……あっ――んっ、んっ」  胸と下半身の高まり。  両方同時に煽られて、ひっきりなしに声が漏れてしまう。  隣室で芽生くんが眠っているので、大きな声は出せない。  その事がまた僕を煽るのか。  手の甲で口元を押さえながら、宗吾さんの逞しい躰に揺さぶられ続けている。  久しぶりに一馬の残像を見たせいなのか。  それとも見知らぬ夫婦の険悪な場面を見てしまったからなのか。  今日の僕の心は、少し乱れていた。 「瑞樹、君は今日、いろいろ考えちまったな」 「あ……はい」 「君は優しいし、人の心が分かり過ぎるから、その分疲れてしまわないか、心配になる」 「……」  両親を亡くしてから、人の顔色ばかり伺ってきた僕だから……時折、負の感情の渦に巻き込まれそうで怖くなる。  負の海に溺れたくなくて、思わず宗吾さんの逞しい躰にしがみついてしまった。 「宗吾さん──」 「大丈夫だ。君は溺れない。俺が支えてやる」 「……僕は……最近、弱くなった気がします」  ひとりで踏ん張ってきたのに甘えられる相手がいると……こうも違うのか。 「そんなことないよ。強くなっているさ」  強い? そんな風に言われた事ないのに…… 「強いだなんて……嘘です。僕は弱い、どこまでも……弱いのに」 「瑞樹は花のようだ。一見綺麗で弱そうにも見えるが、見る人を癒やし、ちょっとやそっとでは倒れないだろう。俺は今まで花を愛でる時間が勿体ないと思っていたが、今は真逆だ。君のような芯の強い花が好きだよ」  甘く囁かれ、深く一気に貫かれる。 「あっ……っ」  宗吾さんが強弱をつけて、波のように僕を抱く。    僕はそれに合わせて、海を泳ぐイルカのように、しなやかに跳ねる。  海のグラデーション、空のグラデーションが視界に開けていく。 「あ……ん……うっ――」 ****  あっという間に、宗吾さんが出張に行く日になってしまった。 「うーん、今日からニューヨークか。一週間も瑞樹に会えないなんて、マジ寂しい」 「あっ、えっ……ちょっと待って下さい。もう朝ですよっ?」 「駄目か」 「だ、駄目では……ないですが……」    昨夜、たっぷりと時間をかけて愛し合ったのに……  明け方、また宗吾さんがベッドで、僕を強請る。 「んっ……あぁっ」  仰向けにされ、彼を最奥まで迎え入れる躰が震えた。  僕の方だって……寂しくて、彼にしがみついてしまう。 「……痕をつけて下さい。僕が寂しくならないように」 「いいのか」 「はい……見えない所に沢山……」  宗吾さんに足を高く持ち上げられ、太股の内側の際どい部分に沢山散らしてもらう。  出張中は芽生くんを僕が毎日お風呂に入れるので……胸元ではなく見えない場所に強請った。 「あっ──」  柔らかい皮膚に吸い付かれ、腰が震える。  感じすぎて震える腰を押さえつけるように、再び強く抱かれる。 「ん……うっ……」 「瑞樹もつけてくれ」 「……は……い」  僕は宗吾さんの胸元に、一つの花をくっきりと咲かせた。 「気をつけて行ってきてくださいね。ちゃんと帰ってきてください」 「ありがとう。行ってくるよ」  これはお守りだ。  僕が宗吾さんを守る── **** 「お兄ちゃん、パパ行っちゃったね」 「今日から1週間ふたりきりだけど大丈夫かな。改めてよろしくね」 「うん! わーい! おにいちゃんをひとりじめできるんだ~」 「えっと……そうだね。くすっ」  宗吾さんが聞いたら、卒倒しそうな台詞だな。 「そうだ、今度の金曜日はどうしようか。やっぱりおばあちゃんの所に泊まる?」 「どうしようかなぁ。僕はおばあちゃんに会いたいけど、お兄ちゃん、ひとりでさみしくない?」 「……うーん、少し……寂しいかな」  しまった。6歳の芽生くん相手に、つい本音を漏らしてしまった。  でも……宗吾さんも芽生くんもいない3LDKの家は、広すぎるよ。    家族団欒に慣れてしまった僕には。 「じゃあ夜はお家にもどってくるね。だから、おにーちゃん、お迎えにきてね」 「分かった。必ず迎えにいくよ」 「おにいちゃんも、とまっていけばいいのに」 「いや、流石にそれは」  宗吾さんがいれば別だけど、僕ひとりでは流石に遠慮してしまう。 「そっか、うん、わかった」 「ごめんね……」  はじめて芽生くんとふたりで過ごす1週間だ。  少し緊張してしまうが、頑張ろう。 「おにいちゃん? いつもどおりでいいんだよ」 「え?」 「なんかカチンコチンしてるから」 「わ、恥ずかしいな。芽生くんの方が余裕だなんて」 「ふふ、おにーちゃん、だいすき!」 「じゃあ行こうか」 「はーい!」  芽生くんとしっかり手を繋いで家を出る。    朝日が眩しい。  幼稚園の夏休みまでカウントダウンの一週間は、宗吾さんのいない一週間。  いつもと違うけれども、宗吾さんから芽生くんを任されていることが嬉しくて……少し緊張し、同時にワクワクする朝だった。  頑張ろう!    僕に出来ることを、精一杯!

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